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プログラム、データと法律用語あれこれ入門〜その2〜

前回に引き続き、プログラムやデータについて法律用語との関連性を整理してみます。

これまでの復習と再整理

前回は、一般法である民法における電磁的記録の概念と、著作権法における「プログラム」の定義を若干検討しました。

著作権法におけるプログラムの定義は、以下のとおりでした。

プログラムとは、電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

著作権法におけるプログラムでは、一般的なプログラムの構成要素に加えて、「表現したもの」という創作性の要件が要求されます。そして、ありふれた表現は創作性の要件を満たさない、ということで、誰が記述しても同じ処理フローになるようなプログラムは創作性がなく、著作権として保護されないと考えます。

創作性のある表現とはならないプログラム3つ

著作権法では、プログラムとして保護されないものとして確認的な規定が置かれています(著作権法10条3項)。それはプログラム言語、規約、解法です。それぞれ著作権法に以下のとおり規定されています。

【プログラム言語】
プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。

【規約】
特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。

【解法】
プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

プログラム言語とは?

プログラム言語はの具体例はJava、Python、PHPなどです。エンジニアはプログラミング言語を使ってプログラムを書きますが、プログラミング言語は、プログラムを作成するための手段ですから、プログラミング言語は著作権で保護されません。油絵を書くときの絵の具が道具(手段)にすぎないことと発想は同じですね。

たとえば、PythonをインストールするとPython標準ライブラリというたくさんのモジュールがパソコンに保存されますが、ライブラリを構成する各プログラムは著作権の対象です。

Pythonというプログラミング言語がプログラムを表現する手段として著作権の対象にならないだけであって、Pythonをインストールすることは、標準ライブラリという他人の著作物の利用許諾を受けていることになります。

規約とは?

Pythonであっても他のプログラム言語でも、書き方にはそれぞれルールがあります。ルール通りに記述しないとインタプリタにうまく解釈してもらえず、エラーが出ます。このときの記法もやはり表現するための手段にすぎないので著作権法の保護が及ばないことになっています。

解法とは?

解法はアルゴリズムのことを法律用語でそのように表してます(植松宏嘉「コンピュータプログラム著作権Q&A」50頁(きんざい、改訂新版、2004年4月))。

プログラムに関するアルゴリズムとしては、整列アルゴリズムである単純ソート、バブルソートや探索アルゴリズムである線形探索、二分探索などがあります。

アルゴリズムを著作権上の保護を与えると、アルゴリズムを使用するには許諾を得なければならないことになりますから、それは良くないだろうということなんだと思います。世の中の生じうる問題についてアルゴリズムを使って解決できなくなります。

また、アルゴリズムが解明されるまで過程が思想(アイデア)そのものであり、著作権法は、表現を保護するが、思想(アイデア)は保護しないと説明されることがあります。

アルゴリズムは数学の分野と考えられますが、参考になる判例として、平成6年2月25日大阪高等裁判所判決があります。

【平成6年2月25日大阪高等裁判所判決より】
数学に関する著作物の著作権者は、そこで提示した命題の解明過程及びこれを説明するために使用した方程式については、著作権法上の保護を受けることができないものと解するのが相当である。

一般に、科学についての出版の目的は、それに含まれる実用的知見を一般に伝達し、他の学者等をして、これを更に展開する機会を与えるところにあるが、この展開が著作権侵害となるとすれば、右の目的は達せられないことになり、科学に属する学問分野である数学に関しても、その著作物に表現された、方程式の展開を含む命題の解明過程などを前提にして、更にそれを発展させることができないことになる。

このような解明過程は、その著作物の思想(アイデア)そのものであると考えられ、命題の解明過程の表現形式に創作性が認められる場合に、そこに著作権法上の権利を主張することは別としても、解明過程そのものは著作権法上の著作物に該当しないものと解される。

データは著作権法で保護されるか?

一般用語でのデータは、事実や資料を指しますから、著作権法上、創作性のある表現とは言えません。したがって、何らかのデータそのものが著作権法の対象にはならないと考えられています。

ちなみに、プログラムとデータはそれぞれ一般的な用語でも意味が区別されていますが、ときどき区別しにくいときがありませんか?

たとえば、Java言語で記述されたプログラムがあるとします。実行するときはコンパイルして、コンピュータが読める形式に変換してプログラムを実行します。コンパイラもプログラムですが、コンパイラにとってはJavaで記述されたプログラムはデータ(=事実、資料で解析する対象)のような存在です。

混乱してしまったときは、一度、プログラムの定義に戻って考えるとよいでしょう。

データベースは著作権法で保護されるか?

データは著作権法では保護されませんが、データベースは保護されています。次回、データベースについて著作権法における法律用語を整理してみたいと思います。

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