被害を与えて正体を隠し続ける
書籍『良心をもたない人たち』の著者によれば、サイコパス、即ち良心をもたない人たちは「最後は敗者」になると言う。そうは言ってもサイコパスの犠牲になった人たちからすると、人を犠牲にしておきながら、加害者がのうのうと生活している状況、まして加害者がその後も高く評価されていたりした場合、その現実と向き合うのはかなり辛い。実際にサイコパスが敗者となれば、苦しい思いから解放されるだろうが、その時が1年後なのか、それとも10年後なのかは分からない。
書籍にあったドリーンのケースでは、ジャッキーを貶めてからもドリーンは6年間病院にとどまることができた。サイコパスはうまく人を惑わし、その正体を隠す事が得意だという。ドリーンのケースもそうだった。
そんなドリーンが病院から追い出されたのは、外部から告発された事がきっかけだった。それは、病院内の同僚や上司たちは、ドリーンの正体に6年以上にわたって気づかなかった、ということも意味する。
ドリーンが敗者となった経緯は、テレビに出演することのあった患者の家族の運動家が、ドリーンの診療に疑問を抱き、それをテレビで暴露すると騒いだことに端を発する。ドリーンはその運動家が嘘を言っているのだ、と息巻いたものの、テレビで院内の問題が暴露されることは病院にとって不利益を被ることになる。それで最終的に病院側はドリーンを解雇した。これ以上、ドリーンは院内で嘘をついて身を守ることができなくなったという訳だ。
私のケースでは、私はA氏(私を貶めたサイコパスと思われる人物)の言っていることで、どう考えてもおかしいし、辻褄が合わないことがあったので、A氏の広めている私に関する噂と関連している外部の関係者(B氏)に事実関係を確認した。するとB氏はA氏が広めている噂にびっくりして、「それは心外だ。あり得ない。抗議の申し入れをしたい」とまで言ってきた。
ドリーンのケースのように、外部からの告発によってA氏の正体が暴かれる可能性もあった。B氏が噂が間違っている事を私の上役に伝え、上役がそれを信じるなどすればだ。しかし、当時の状況はB氏が真実を伝えたとしても、それを上役が信じるかどうかは分からない。むしろA氏が、私が外部の関係者まで巻き込んで、保身ばかりを考えていると、更に私を窮地に追い込む可能性もあった。
実際にはB氏の強い要望があり、間接的ではあるものの、真実が上役たちに伝わったそうだ。それを聞いて上役たちの中で、私の言っている事が正しかつたのか、と思ってくれる人もいたが、B氏の話など信用できないと、相手にしなかった人もいたようだ。
こうしてA氏は私を貶めることに成功した。噂のみならず立場においてもだ。それは私を暗い気持ちに落とし込んだ。ただ分析してみると、彼を評価した人たちは、ほぼ部署の業務の専門外の人たちである。そして、疑わしいものの某大企業で勤務していたという彼の職歴に魅力を感じてのことからだ。
A氏の今の状況はいつまで続くのか。そのうちドリーンの身に起きたようなことがA氏にも起こるのか。私は、失った名誉を今後、回復することはできるのか。サイコパスは最後に敗者になるとはいうものの、それがいつかは分からない。
時間がある程度解決するだろうとはいえ、彼の策略によって貶められた私の気持ちはなかなか晴れることがなかった。時には強いストレスを感じることもあった。
そんな思いから解放される大きなきっかけは、『良心をもたない人たち』を読んで、A氏がどうやらサイコパスのようだと分かったからだ。加害者がサイコパスかもしれないと知るだけで心は随分軽くなるものだ。自分の身に起きたことの理由、原因がさっぱり分からなかった。これが結構苦しみを与えるものだ。起きたことの理由がわかる、原因を知る。それだけでも辛い思いから解放される。