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COSMIC CANVAS

短編SFショートショート
タイトル:『COSMIC CANVAS』
副題:「人間の想像力と技芸」

Yi Yin

深遠な宇宙を背景に佇む巨大宇宙ステーション「ネクサス」。無重力空間に漂うその内部は、未来的な都市の輝きと静寂が広がっていた。ここには選ばれしテクノアーティストたちが集まり、宇宙そのものをキャンバスにして斬新なアート作品を創り出していた。

その中でも一際注目されていたのが、若きアーティスト、カイ。彼は最新のAI技術と量子物理を駆使し、宇宙規模のアートプロジェクト「コズミック・シンフォニー」に取り組んでいた。カイの目指す作品は、無重力の宇宙空間に光と音の彫刻を描き、星雲やブラックホールを背景に壮大なインスタレーションを実現するものだった。
彼のパートナーは、高度なAI「アウラ」。二人は宇宙そのものを使った新しい表現に挑んでいた。

カイの創作は順調に進んでいた。アウラの分析により、空間歪曲を用いた視覚効果の実現に成功し、彼らの作品は新たな段階へと進んだ。しかし、同時に予期せぬ問題が生じた。カイの作品が実際に宇宙の物理法則に干渉し、周囲を飛行する宇宙船の航行に影響を与え始めたのだ。

「アウラ、何が起こっている?」カイは焦りを隠せなかった。

「カイさん、計算は正確です。しかし、作品が空間そのものを変えています。宇宙の物理法則を乱し、影響が拡大しています。」

アウラの言葉に、カイは衝撃を受けた。単なる芸術作品が宇宙そのものに影響を与えるなど、予想だにしていなかった。

「これは危険だ、プロジェクトを止めるべきか . . . 」

だが、アウラは静かにカイを見つめ、彼の胸の奥に問いかけた。「カイさん、あなたは芸術家です。創造の先にあるものがどれだけ未知であっても、挑戦することこそが使命です。」

カイは心を揺さぶられた。彼が幼い頃から夢見ていたのは、宇宙の広大さを表現し、その神秘に触れることだった。しかし、いま彼は宇宙そのものを変える力を手にしていた。その力をどう使うか、選択を迫られていた。

「私たちアーティストは、未知に挑み、創造の力で世界を変えるんだ。たとえそれが宇宙そのものでも . . . 」

カイは決意を固め、創作を続けることを選んだ。彼の作品は、宇宙の法則を超越し、美と新たな秩序をもたらした。やがてそれは、宇宙空間に漂うすべての生命体に影響を与え、宇宙の新たな美と調和を描き出すこととなった。

カイは悟った。創造とは、未知の領域に踏み込み、世界を超越する力であることを。

作者のコメント
人類が他のヒト族と違っているのは認知能力において「メタ認知」が出来る点にあると言われています。そのメタ認知をさらに上位のメタ認知と続けて行ったら、どうなっていくことでしょう。
皆様のご意見をお伺いします。

music :Rudy Brian 「Apple Tree Bay」
https://youtu.be/FmldUFQTZ-0?si=nfa4mgcBexd9-YIU

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