核分裂と核融合
156第14話核分裂と核融合
2万年前の銀河シリーズ
ミーターの大冒険
第六部 地球へ
第14話 核分裂と核融合
エピソード 156
ミーター・マロウは静かにファー・スター2世号の図書室の一角で資料を読み込んでいた。イルミナ・バーは、ホログラムとして彼の隣に浮かび、静かに話を始めた。
「核戦争で終わったある大きな戦争を、歴史家たちは『第二次世界大戦』と呼んでいます」とイルミナが説明した。
ミーターは眉をひそめた。「それじゃ『第一次世界大戦』もあったことになるのか?」
「ええ、そうみたいですね」と彼女が頷いた。「ただ、この本ではそれ以上の大戦についてはあまり書かれていません。この時代に興味深いのは、特に『アルファ』というテーマだからです。でも、第三次世界大戦が起こりそうになっていたという兆候はあるみたいです。『寸前の危機』という表現が頻繁に使われてますから。」
ミーターは眉をひそめながら、ふと遠い目をした。「もしそれが現実に起こっていたとしたら、人類は核兵器によって地球全体を放射能で覆い尽くしていたんだろう。住める場所なんて、どこにもなくなるはずだ。」
イルミナは頷き、表情を曇らせた。「おそらくそうでしょうね。そんな事態を避けるために、対立する国々が大量の核兵器を保有して抑止力に頼るしかなかったみたいです。でも、その結果、少数の裕福な人々が『スペーサー』として宇宙に脱出する道を選んだという記録も残ってます。」
「それは恐ろしい話だ。まるで破滅寸前の時代じゃないか。」ミーターは深いため息をつき、さらにページをめくった。「もはや安心して住める星じゃなくなったんだな、地球は。」
「まさに悲劇ですね。」イルミナも同意し、資料の続きを読み始めた。「その時代、地球人類は人口問題やエネルギー問題にも苦しんでいました。急速な都市化によって、エネルギー需要も増加し、石炭から石油、そして原子力発電へと移行していったんです。」
「それで、核戦争は何とか避けられたが、原子力発電所の事故が何度か起こったわけだな。」ミーターは頭をかしげる。
「はい、まさにその通りです。ある事故は特にひどく、ニフという地域でも発生しました。」
「それは『フクシマ』のことだろう?」ミーターは思い当たる地名を口にした。
「そうです。その後、ニフの科学者たちは、原子力に代わるクリーンなエネルギー源を見つけ出そうと努力しました。そして、最終的に『核融合』エネルギーの実用化に成功しました。最初に実用化したのはフランスという国だったんですが、ニフも続き、他国をリードするようになったんです。」
「それは当然の流れだろう。世界で唯一、核兵器の悲劇を経験した国だからな。」
イルミナは考え込んだ。「そうですね、彼らにとっては使命ともいえる取り組みだったかもしれませんね。『核融合』は、恒星内部のように高温のプラズマを生成し、重水素と三重水素を融合させることで、放射能を出さずに膨大なエネルギーを生み出す方法なんです。『トカマク』というドーナツ型の核融合炉で行うんですが、ただ問題は、希少なトリチウムという元素が必要だということでした。」
「しかしニフ人たちはその問題を解決したんだな。すごい科学力だ。」ミーターは驚嘆の声を漏らした。「それにしても、なぜ彼らはそんなに科学において突出していたんだろうか?」
「実は、ニフ人には遺伝的な共通点があるんです。」イルミナは一瞬ためらい、ホログラムの情報を追加で呼び出した。「彼らの先祖は『ヤップ遺伝子』を持っていました。これは、同じく世界的に優秀とされたユダヤ人と共通しているんです。『出アフリカ』の時代に地球の各地へと散らばっていく過程で、少しずつ遺伝子の変異が起き、環境や文化的影響によって、ニフ人とユダヤ人の先祖は共通の遺伝子グループから分かれたと考えられています。」
「共通の遺伝子か . . . 面白いな。」ミーターはその話に興味を惹かれたが、すぐに話題に戻った。「ともあれ、我々は『二種類のニフ人』について話していたな。」
次話をお愉しみ。