オールトの雲
オールトの雲
galaxy20,000yearslaterseries
第2弾
ミーターの大冒険
第七部 太陽系
第4話 オールトの雲
エピソード 166
ミーターは艦橋のスクリーンに映る光景をじっと見つめていた。イルミナが艦内通信を通じて状況を報告する。
「太陽系に入りました。」イルミナの冷静な声が響いた。「アルファ三連星の引力圏を離脱し、これからオールトの雲に突入します。」
「オールトの雲か。」ミーターは感慨深げに呟いた。「ホウキ星の揺りかご、とも呼ばれる場所だよね。」
「その通りです。彗星が生じる場所として知られています。恒星、つまり太陽に近づくと、彗星は長い尾を放つようになるんです。そして、太陽系の内側、地球近くまで来ると、尾がさらに鮮やかに広がり、その光景は息を呑む美しさです。」
「地球では、彗星の尾を見ることができるんだな。流星群の母体でもあるって聞いたことがあるよ。」
「はい、流星や流星群の母体とも言われています。でも、ミーターさん。」イルミナは一瞬間を置き、少し声を落とした。「もし地球に大気がなかったら、彗星由来の物質が直接地表に降り注いでしまいます。その場合、綺麗だなんて言ってる場合じゃありませんよ。」
ミーターは目を細めて頷いた。「そうだな。それよりも、地球にどれだけ大気が残っているのかが問題だ。」
ふと、ミーターは何かを思い出したように顔を上げた。「そういえば、アルファ三連星で出会ったモノリーが教えてくれた、アルファの気候コントロール技術。あれにはバイオテクノロジーが応用されていたよな?」
「ええ、確かに。」イルミナは即座に応じた。「アルファではキノコの菌糸を活用しているとか。」
「その通りだ。」ミーターはスクリーンから視線を外し、イルミナの仮想ホログラムの姿を見つめた。「カビレ山頂からキノコの菌糸を放出し、それを大気中に広げることで気候を調整しているらしい。」
「驚きですね。」イルミナの声が少し高くなった。「まるで菌糸の流星化みたいです。」
「そうだ、まさしくその通り。」ミーターは勢い込んで椅子から立ち上がった。「もしかすると、その技術を地球の大気蘇生に応用できるかもしれないぞ。」
「でも、ミーターさん。」イルミナは少し慎重な口調で言った。「そのキノコ、どこで栽培して、どうやって調達するんですか?」
ミーターは一瞬言葉を飲み込み、思案するように口元に手を当てた。「それが次の課題だな。だが、それは可能性の扉が開かれたということでもある。」
艦内の静寂が二人の会話の余韻に包まれる中、スクリーンにはオールトの雲のかすかな輝きが映し出されていた。
次話へ続く . . .