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旅たぬ記 分福茶釜之巻(巻之伍)

昨日、2月22日は私の高校受驗の終わった日にちとしてよく憶えております。思えば中學時代、都立高校入試の日でございました。
この日の前日は學校も午前中で終わり、午后は文字通り最後の追い込みと云ったところでございましたが、どういう訳か帰宅するなり1時間程昼寝をしました。
これは實に不思議な事でありますが妙な落ち着きがあった様でした。
まるでナメック星に到着寸前の悟空の様な心境でしょうか。
嗚呼、懐かしい日々は帰らず。素晴らしいあの頃、學生時代。


さて、それよりも随分時が經った昨年夏の懐かしき日の追憶の續きを致しましょう。

前回、分福茶釜の舞台となった茂林寺周辺の低湿地を散策して參りました。
茂林寺前驛迄戻ってきたところから始まります。

前面展望

やって來た普通電車に乗り込みます。
眞っ直ぐな線路をひた走り2驛。降り立ったのは羽生驛でございます。

「はぶ」ではなく「はにゅう」

將棋が好きな私も時折讀み間違える羽生驛でございます。
秩父鉄道との接續驛。昔、秩父方面へ蒸氣機關車の列車で旅行に行った記憶が蘇ります。

美しいステンドグラス

驛の造作を愉しむのもまた旅の面白さです。
小さな非常口の棒人間がアピールする階段を下りて外へ出ましょう。

驛前周辺

よく晴れた空の下、驛舎は獨特のフォルムを愉しませてくれます。
さて、これから向かうのは温泉場でございます。

そう、私の旅に「温泉」と「酒」と「鐡道」は謂わば3点セットなのです。
徒歩で十数分。向かった先はこちらでございます。

日帰り温泉施設「華のゆ」

ここはビジネスホテルに隣接された日帰り温泉施設です。
ホテル滞在者はタダで入れる様だったのがとても興味深く、今度の「創作罐詰旅」ではここを利用してみようかと思っております。

施設内は例によって撮影出來ないのですが、なかなか大掛かりな温泉場でした。
都市部の比較的新しい施設と云う事もあり、古き良き風情と云う点は望めませんが、露天風呂をはじめ大きなお風呂が幾つも在り、温泉に入ると云う点に於いては充分な「銭湯力」でした。

お風呂上りに

食事処や休憩所も廣々として大いにくつろげます。
愛用の扇子にお風呂セットも大切な旅の供です。
普段は珈琲牛乳派の私も久々に見かけた硝子瓶入りのフルーツ牛乳を戴きます。

温泉で2時間程滞在した私はふと外の異変に氣附きました。
實は露天風呂の釜湯に入っている時から低い雲が出始めていた事が少々氣になっていたのですが、いつの間にか空は眞っ暗であります。
夏によくある夕立。イマドキの言を拝借すれば「ゲリラ豪雨」と云うものでございます。
お風呂セットは持ってくるのに雨具を持ってきていなかった私は急いで驛に戻ります。
しかし、無情にもとうとう大粒の雨が降り出してしまうのでした。

ここでずぶ濡れになったら何の為に風呂に入ったのか解らないと思い、驛迄行くのを断念。途中に在ったコンビニエンスストアに駆け込みます。

驛はすぐそこだのに…!

雷とともに激しい雨が降って參りました。
温泉場から湯上りタオルを頭に巻いて難を逃れましたが、その後續々と學生さんやサラリーマンの方々がこのコンビニへ避難してきます。

さっきまでの好天が嘘の様でございますが、この地域はこうした急激な雨がよく起こる土地でございましてテレビのニュース等でもよく當地の様子が映し出されます。

少し向こうは晴れている…。

こう見えても小心者の私は何も賈わないのに店内に居座る事が心苦しく、飲み物を購入しました。
幸いにもこのお店には「イートインコーナー」があったので、そこで雨の止むのを待つ事に致します。

しかし、この「フルーツオ・レ」と云う奴…。
先程飲んだ瓶入りのフルーツ牛乳とは全く違う代物でした。
何と申しますか、昔から銭湯で飲んだあの懐かしいフルーツ牛乳とは似て非なる風味である事は一目瞭然。嗚呼、悲しいかな古き世界の住人たるや。

そうして驛の直前で足止めを喰らいつゝ、雨が弱まるのを待って数十分。僅かに雨足が弱まったタイミングに店を出て驛迄走り込みます。
こう見えても中學時代は陸上の區大會に出た唯一の文化部出身者。100米走に限り學年トップクラスの成績だったのが鳥渡した自慢。
出場者名簿の並み居る運動系の部活欄の中に一人だけ「自然科学部」と明らかに場違いな部活名があったのは良い思い出です。

何とか驛迄辿り着いた私は被害も輕微に濟み、同じく豪雨の為にホームで立ち往生していた普通電車の乗り込みます。
向かった先は館林驛。

折角だから、俺はこのカルピス色の電車を選ぶぜ!

特急電車で浅草へ戻ろうとの算段だったのですが、ふと驛の時刻表に目をやると何やら面白そうな電車が。
所謂「色違い」でありますがこの機會に是非ご乗車致しましょう。

窓口で切符を入手。これで帰りの便は確保出來ました。
こうした面白さは自分で時刻表を調べて為せる業だと思います。
イマドキのアプリ頼みではこうした面白味も少なくなってしまうでしょう。
旅は移動の樂しさも含めてのもの。私の如き古き世界に生きる者はそう思っています。

ここで特急の出發時刻迄時間が出來ました。
驛前を散策して適當に時間をつぶす事に致しましょう。

つづく…

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