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指先に残っていたあの感覺
今朝の朝食に出したのはこの瓶入りのヨーグルト。
こう見えてもたまにはこう云う物を食べるのです。
今時珍しい硝子瓶入りのヨーグルト。
近所の牛乳屋さんも随分前に廃業した今日、大変貴重な存在だと思っております。
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包みを解いてみると、なんと紙の蓋!
これはますます懐かしいのであります。
小學生の頃は給食の牛乳はみんなこう云う蓋でした。
これはもうこの懐かしき瓶の蓋を開けると云う行為を心ゆくまで味わうのが正解だと思います。
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私はよく見かける輪っかに針の附いたあの道具を使わない主義です。
昔から素手で開けていたものでしたから…。
この様に爪を立てて、紙蓋の端っこを少しめくり上げるのです。
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そしてそのままポンっと開ける。
簡單に見えますが、いさゝか要領が要るのです。
あまり爪が浅過ぎると上の紙だけが剝がれてしまい、深すぎると蓋が喰い込んで開けにくゝなる…。
この微妙な力加減に於いては子供の頃の感覺がまだ生きていた様でした。
近頃はみんな使い捨てのプラ容器ばかりで蓋もペリペリと剥がすシールの様な物が一般的かと存じますが、昔ながらのこう云う硝子瓶に入っているヨーグルトはどこか高級感があり、また心なしか中身も美味しく思え、見た目も美しく樂しめるのではなかろうかと存じます。
色々な理由で使い捨て容器ばかりが出廻った様ですが、我々が見失ってしまった豊かさがこの硝子瓶には在る様でございました。
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昔、明治の「ルミナスヨーグルト」と云う銘柄のヨーグルトが有り、その品物のコマーシャルメッセージがコレでございましたが、慌ただしく食べては容器はゴミ箱へ…なんて云う今日の味氣無くどこか冷たく貧しい雰囲氣の中で、私はもう帰る事の無い時代の温もりに少々触れた様な、そんな今朝の朝食(…に出したデザート)でした。
やはり一日の始まりはこう云う温かく樂しい雰囲氣でなければなりますまい。
尚、この空き容器は洗って大切に取っておきます。
こう云うのは取っておくと何かと便利なのです。
市販されている他のヨーグルトを入れて再利用すれば、それだけでも食卓の高級感が増すと云うものです。
プリンやゼリー等を作って冷やす際の入れ物としても最適でしょう。
この硝子瓶を使う度に懐かしきあの頃を思い出すものでございまして、日々の暮らしの豊かさとはこう云うところから手輕に味わえるものだと思います。
…イマドキの人には解り難いかもしれませんが………。