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【投稿その1 昔のエッセイを放出します  オブさん文芸部エッセイ⑪ もてない人になる方法(上)】

高校生の頃の自らのバカさ加減をを振り返りつつ、若い皆さんへ向けて書いたエッセイです。

 今も昔も、若い人たちにとって大切なものはといえば、だれかを恋い慕う心、早い話が恋愛感情とか、あるいはお互いを大切な存在として認めあう友情とかであるようです。映画やテレビドラマ、小説やマンガの世界などでも、恋愛や友情をテーマにしたものがやはり主流です。まあ、中には「何よりもお金やモノのほうが大切だオレは」などという人もいるのでしょうが、それはそれとして、一般的には、若い人たちの多くは「愛情」を注ぎ注がれる相手を、また、心と心を開き合い通わすことのできる親友を常に追い求めているように見えます。
 実は、そうした思いは若いときだけのものではありません。社会に出て勤め人などになれば、上司や同僚との人間関係も常に良好に保っていたいものですし、できれば「良い人間」として認められたい、愛される人間になりたいとだれもが思います。結婚などしてしまえば、妻や夫、子供にも愛情を常に注ぎ続けることも要求されます。ぶっちゃけた話、人生とは「愛を追い求め続けること」であるとも言えます。
 しかし、そんなふうにやっていると、どうしても途中で息切れがします。早い話が、嫌われないように、好かれるように振る舞うことに疲れてしまうのですね。あんまり愛を求めすぎるのも、そういう意味ではとっても「ウザい」ものです。
 そんなうっとうしい人間関係から解放されたい、真の意味で自分らしい生き方をしたい、という方々のために、わたしは「もてない人」になることを提唱します。もてない人になれば、ウザい人間関係から解放され、他人に気を使う必要もなく、自分独りの世界を守ることができるのです。この際、ここで皆さんに、わたしの経験に基づいた「もてない人になる方法」を伝授いたします。

①根拠のない自信を持つ
 「もてない人」になる第一歩は、根拠のない自信を持つことです。例えば、高校生のころのわたしは、とにかく自分の能力というか才能に、やたら自信を持っていました。将来は売れっ子のシンガーソングライター、あるいはベストセラー小説家になるのだと、何の根拠もないのに思っていました。毎日毎日文芸部室で歌を唄い、オリジナルの歌を作り、小説めいたものを書いては、周りの仲間に聴かせ、読ませていました。それが、本当は箸にも棒にも掛からない駄作であろうと関係はありません。とにかく、「自分はすごい」と思うことが大事なのです。

②しかし、努力はしない
 ですが、そのために努力をする、などということはやってはいけません。高校生のころのわたしも、もちろん努力などしませんでした。小説を書くために何か特別な勉強をしたということもありませんし、シンガーソングライターになるために作曲や作詞の基本を学んだなどということもありません。夢を実現するためひたむきな努力などしてしまうと、周りから「あいつは夢を実現しようとがんばっている魅力的なやつだ」などと思われ、あろうことか友人が増えたり、彼女・彼氏ができちゃったりしてしまうからです。うっとうしい人間関係から逃れたいのなら、そんなことになれば大変です。間違っても、努力などしてはいけません。そうすれば、「あいつは口先だけの人間だ」と思われ、友人も次第に減っていき、もちろん彼女・彼氏などできる心配もなくなります。(つづく)

【新潟東高校文芸部誌「簓」第4集(2007年3月6日発行)顧問エッセイより】

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