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三菱HCキャピタルが『PBR1倍』を超えられない理由 - ROE7.71%の壁を破るための航空機リース拡大シナリオ

割引あり

「リース会社って、ただ物を貸すだけだと思っていませんか?」

ほんの少しだけご紹介すると——
“ROE10%・ROA1.5%”を本気で目指す三菱HCキャピタルは、航空から物流、さらに環境エネルギーまで手を伸ばし、リースの常識を次々と塗り替えているんです。

  • 配当金が15年で8.3倍に成長

  • “95億円の赤字”を抱えた環境エネルギー事業、その先の意外な展開

  • 航空・ロジスティクスの好調要因と、リース業ならではの安定収益のカラクリ

  • PBR1倍割れは割安サイン? それとも……?

もし「リース業界はもう成熟している」と思っていらっしゃるなら、この記事を読むとイメージが変わるかもしれません。
国内最大級のリース・ファイナンス企業が「資産効率を高める新たな収益モデル」をどのように築き上げているのか。
その裏側を知れば、あなたの“リース観”はガラリと変わるはずです。

ぜひ今すぐチェックして、三菱HCキャピタルが挑むビジネスモデルの全貌を確かめてください。

▼記事はこちらからご覧いただけます▼

1.会社概要:三菱HCキャピタルが掲げる『ROE10%・ROA1.5%』への挑戦 - リース業特有の資産効率を高める新たな収益モデル

(1) 会社概要

三菱HCキャピタルは、総資産約10兆円規模を誇る、日本最大級の総合リース・ファイナンス会社です

A.リース会社の基本的な役割
リース会社は、企業が必要とする設備・機械などを購入し、それを企業に貸し出すことで収益を得る会社です。私たちの身近なところでは、オフィスのコピー機を月々のリース料で借りる、工場の製造装置を数年間のリース契約で利用する、運送会社がトラックを長期でリースして使用するなどの例があり、多くの企業が日常的にリースを活用しています。

企業がリースを利用する主なメリットとして、多額の購入資金が不要なこと、毎月の支払いで経費計上できること、古くなった設備の処分に困らないことなどが挙げられます。

B. 会社の誕生と発展
三菱HCキャピタルは、2021年4月に三菱UFJリースと日立キャピタルが経営統合して誕生しました。

a)経営統合の意味とメリット

経営統合は、企業同士が力を合わせて新しい会社を作ることです。結婚に例えると、お互いの良いところを活かしながら、新しい家庭を築くようなものです。この統合により、コストの削減や、より大きな事業への挑戦が可能になりました。

両社はそれぞれ、三菱UFJリースが総合リース会社として、日立キャピタルはベンダーファイナンスに強みを持つ会社として事業展開を行ってきました。

「ベンダーファイナンス」とは、製品を販売する事業者(メーカー・販売会社)が、製品の販売の際に、リースや分割払い等の金融サービスを組み合わせて提案できるようにする手法のことです。

例えば、建設機械メーカーが自社製品を販売する際に、購入を検討している建設会社に対してリースによる調達も選択肢として提案できる仕組みです。

この統合により、「1+1が2以上になる」という相乗効果が生まれています。例えば、三菱UFJリースの幅広い顧客基盤と、日立キャピタルの専門的な金融サービスを組み合わせることで、より多くの顧客に、より良いサービスを提供できるようになりました。

b)グループ経営の特徴
グループ会社は国内外に300社以上を擁しています。これは、それぞれの分野で専門的なサービスを提供するためです。例えば、航空機リースを専門に扱う会社、環境エネルギー事業を担当する会社、海外の特定地域でビジネスを展開する会社など、専門分野ごとに会社を分けることで、より効率的な運営が可能になっています。

C. 事業の特徴と収益の仕組み

a)三つの主な収益源
リース会社の収益は主に以下の3つから成り立っています:

(ア)インカムゲイン(定期的な収入)
毎月の給料や家賃収入のように、リース料という形で定期的に入ってくる安定した収入です。この収益は景気変動の影響を受けにくく、会社の安定性を支える重要な収入源となっています。

(イ)キャピタルゲイン(値上がり益)
不動産投資での売却益のように、保有している資産を適切なタイミングで売却することで得られる収益です。売却益で大きな利益を得られる可能性がある一方、市場環境が悪化すると残価リスクが高まる点には注意が必要です。
なお、残価リスクとは、リース期間終了後の物件の価値が想定より下がるリスク、例えば中古車の価格が予想以上に下落するようなリスクです。

(ウ)フィー収入(手数料収入)
不動産仲介手数料のように、サービスの提供に対して得られる収入です。アセットビジネスなどの運用手数料がこれにあたり、自己資金をあまり使わずに収益を上げられる特徴があります。

D. 経営方針と目標
三菱HCキャピタルは「社会価値の創出と持続的な成長の実現」を経営理念として掲げています。これは、企業としての利益追求だけでなく、社会に貢献できる事業を展開することを意味します。

a)環境・社会への取り組み
近年の投資市場では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した経営、いわゆるESGを重視する傾向が強まっています。三菱HCキャピタルも、再生可能エネルギー事業の拡大などを通じて、この分野での取り組みを強化しています。

b)財務目標とその意味
中期経営計画では、ROE10%程度、ROA1.5%程度という財務目標を掲げています。

ROE(株主資本利益率)は、株主が投資した資金に対してどれだけ利益を上げているかを示す指標です。例えば、ROE10%は100万円を投資したら1年で10万円の利益を生み出す能力があることを意味し、一般的に10%以上あれば収益力の高い会社だと評価されます。

ROA(総資産利益率)は、会社が持っている建物や設備などの資産全体に対して、どれだけ効率的に利益を上げているかを示します。リース会社の場合、リースする機器などの資産を大量に保有するため、この数値は一般的に低めとなります。
しかし、三菱HCキャピタルのようにフィービジネスを拡大することで、自己資本や総資産に対する効率を高め、ROA1.5%の達成を目指しています。

(2) 主要な事業内容

A. 国内事業の展開
カスタマーソリューション事業では、法人向けのリースや割賦販売を展開しています。割賦販売は、商品の代金を分割して支払う方式です。リースが利用権の賃貸借であるのに対し、割賦販売では最終的に所有権が顧客に移転する点が異なります。

収益の計上方法も異なり、リース取引では毎月安定的に収益を計上しますが、割賦販売では販売時に一括で売上を計上し、代金は分割で回収していきます。

B.環境エネルギー分野の取り組み
環境エネルギー事業では、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。固定価格買取制度(FIT)により、長期的な収益が安定的に見込めますが、買取価格の低下傾向への対応が課題となっています。

C. グローバル事業の展開と特徴
海外では地域ごとに異なるビジネスモデルを展開しています。海外事業では為替変動リスクに加えて、各国の政治・経済情勢の変化による影響も考慮する必要があります。そのため、地域を分散させてリスクを低減する取り組みを行っています。

D.航空機リース事業
航空事業では、JSA International Holdingsを中心に航空機リース事業を展開しています。航空機リースでは、機体の価値変動リスクをリース会社が負う「オペレーティングリース」が中心です。そのため、中古航空機市場の動向や航空需要の変化が業績に大きく影響します。

E. アセットビジネスの展開
不動産事業では、ファイナンスとアセットビジネスの2つを柱としています。アセットビジネスは、投資家から資金を集めて不動産などに投資し、その運用を行うビジネスです。自己資金をあまり使わずに手数料収入が得られるため、資本効率の向上につながります。

a)収益の多様化への取り組み
アセットビジネスでは、単なる資金提供にとどまらず、物件の価値向上や運営ノウハウの提供によって付加価値を生み出し、より高い収益を目指しています。

(3) 投資家として知っておくべきポイント

A.リース会社特有のリスク
リース会社への投資を考える際は、以下のようなリスクを理解しておく必要があります:

a)金利変動リスク:金利が上がると、借入コストが増加して収益が減少する可能性があります。

b)信用リスク:リース料を借り手が支払えなくなるリスクです。

c)残価リスク:すでに前述した通り、リース期間終了後の物件の価値が想定より下がるリスク、例えば中古車の価格が予想以上に下落するようなリスクです。

これらのリスクに対して、会社がどのような対策を取っているかも、投資判断の重要な要素となります。

B.ビジネスモデルの進化
従来の金融会社は資金を調達して貸し出す「金利収入モデル」が中心でしたが、現在は手数料ビジネスの拡大による資本効率の向上、デジタル技術を活用した新しいサービスの提供、環境・社会課題の解決と収益獲得の両立など、ビジネスモデルの進化が進んでいます。

C.投資家の評価ポイント
投資家は、収益の安定性と成長性、資本効率(ROE)、財務健全性、経営戦略の実効性などを重視して企業を評価します。三菱HCキャピタルは、これらの要素をバランスよく追求することで、持続的な企業価値の向上を目指しています。

2.最新の業績:航空・ロジスティクスが牽引する増益の裏で、環境エネルギー事業が抱える"95億円の赤字"の真相

(1) 全社業績の概要

A. 純利益の状況

企業の純利益とは、売上から全ての経費や税金を差し引いた後に残る最終的な利益のことです。株主にとって最も重要な指標です。例えば売上高が1000億円で経費や税金が400億円の場合、純利益は600億円となります。

2025年3月期第2四半期の純利益は前年同期比17.0%増の617億円となりました。前年同期比とは、前年の同じ時期と比べた増減を示すもので、この場合、前年の2024年4-9月と比較して17.0%増加したことを意味します。この増益は、航空・ロジスティクスセグメントの好調が牽引した形となっています。しかし、通期目標の1,350億円に対する進捗率は45.7%にとどまっており、下期での挽回が必要な状況です。

また、この増益には、連結子会社JSAの決算期変更による一時的な影響が含まれている点に注意が必要です。決算期を変更すると、一時的に通常より長い期間の業績が含まれることがあり、見かけ上の業績が良く見える可能性があります。この影響を除くと、実質的な業績の伸びはより限定的だったと考えられます。

B. セグメント別業績のサマリー

大企業は通常、複数の事業を展開しています。例えばトヨタ自動車であれば「自動車事業」「金融事業」などに分かれているように、事業を種類や地域で区分したものをセグメントと呼びます。セグメント情報を見ることで、どの事業が好調で、どの事業が苦戦しているのかが分かります。

セグメント別では、明暗が大きく分かれる結果となりました。航空セグメントは前年同期比180億円増の253億円、ロジスティクスセグメントも前年同期比17億円増の116億円と、いずれも力強い成長を示しています。

一方で、環境エネルギーセグメントは95億円の赤字に転落し、海外地域セグメントも前年同期比62億円減の39億円と大幅な減益となりました。特に、米州での運送セクターの不振による貸倒関連費用の増加が業績の重石となっています。

貸倒関連費用とは、取引先からの支払いが滞るリスクに備えて計上する費用です。例えば、1000万円の売掛金(顧客からまだ受け取っていないお金)がある場合、顧客の経営状態が悪化すると、その一部または全部が回収できなくなるリスクに備えて計上する費用のことです。

業績構造を見ると、好調セグメントの一部に一時的要因が含まれる一方、不振セグメントでは構造的な課題が顕在化しています。企業の収益基盤の安定性という観点では課題を残す結果となりました。

(2) セグメント別の詳細分析

A. 航空セグメント

航空セグメントの大幅増益は、構造的な成長要因である新規案件の積み上げやエンジンの稼働率向上によるリース料収入の増加が基礎的な収益力の向上を示しています。

稼働率とは、保有する設備や機械がどれだけ効率的に使用されているかを示す指標で、稼働率が高いほど、資産から得られる収益も増加します。

この増益には、航空機やエンジンの売却機数の増加によるアセット関連損益の改善も寄与しています。

さらに、一時的な要因としてJSAの決算期変更による影響も加わり、前年同期比で246.4%という大幅な増益となりました。ただし、この決算期変更の影響を除いた実質的な成長力の評価が今後の課題となります。

航空機リースでは、数百億円規模の航空機を航空会社に貸し出し、月々のリース料を得るビジネスモデルとなっています。航空機は世界中で需要があり、リース期間も長期にわたるため、一般的に安定した収益が見込めます。

B. ロジスティクスセグメント

ロジスティクスとは物流のことを指し、モノの輸送・保管・荷役などを効率的に行うビジネスです。経済活動の基盤となる重要な分野で、特に近年のeコマース拡大により、その重要性は増しています。

このセグメントでは、2,000億円規模の海上コンテナ投資を実行するなど、積極的な成長戦略を展開しています。市場環境としては、中東情勢の緊迫化による輸送日数の長期化や、世界の海上貿易量の堅調な推移を背景に、コンテナ需要は底堅く推移しています。

特筆すべきは、この大型投資の収益化が既に始まっている点です。発注したコンテナの大部分が年内にリース付けを完了する見込みで、下期から収益貢献が始まり、来期には数十億円単位の収益貢献が期待できる状況です。

C. 環境エネルギーセグメント

太陽光や風力など、自然界から持続的に得られるエネルギーを再生可能エネルギーと呼びます。環境負荷が低い反面、天候などの影響を受けやすいという特徴があります。

環境エネルギーセグメントの業績悪化は、一時的な要因である国内再生可能エネルギープロジェクト案件における大口の貸倒関連費用の計上が主因です。

具体的には、太陽光発電所などの再生可能エネルギー施設を運営する事業者が、経営困難な状況に陥ったことを意味します。

このような状況が発生する背景には、二つの構造的な課題があります。

第一に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)における買取価格が年々低下していることがあります。例えば、太陽光発電の買取価格は、2012年度は42円/1kWhでしたが、2023年度には16円/1kWhにまで下がり、38%も減少しています。

第二に、再生可能エネルギー事業は、初期投資額が大きいという特徴があります。太陽光発電所の場合、広大な土地の確保や発電設備の設置に数億円から数十億円の投資が必要です。この投資資金の多くは借入金でまかなわれることが一般的で、事業者は毎月の返済義務を負っています。

また、こうした大口の貸倒関連費用の計上に加えて、前年同期に減損損失を計上した国内太陽光発電案件において、追加の減損損失を計上する必要が生じました。

減損損失とは、資産の価値が著しく低下した際に計上する損失のことです。例えば、1億円で購入した太陽光発電設備の将来収益性が当初の想定を下回ると判断された場合、その価値下落分を損失として計上します。

この状況は、再生可能エネルギー事業におけるリスク管理の重要性を浮き彫りにしています。ただし、経営陣は下期において売却益の計上を見込んでおり、通期での収益改善を目指しています。

D. 海外地域セグメント

市況とは市場の全般的な状況を指し、需要と供給のバランス、価格動向などが含まれます。企業の業績は、この市況に大きく影響されることがあります。

海外地域セグメントの業績悪化は、米州運送セクターにおける市況低迷が主因となっています。特に、貸倒関連費用が前年同期比99億円増加し、168億円に達した点は深刻な課題です。この背景には、2022年以降の米州運送市場における需給バランスの悪化や金利高等により、運送業者の資金繰り(日常的な支払いに必要な資金の確保と運用)が悪化している状況があります。資金繰りが悪化すると、最悪の場合、事業継続が困難になることもあります。

(3) 下期の見通しと課題

  1. プラス材料(カタリスト)

    • 航空セグメント:新規案件が順調に稼働を始めており、稼働率の継続的な上昇が期待できる。

    • ロジスティクスセグメント:年内に大半の海上コンテナのリース付けが完了し、大型投資が早期に収益化。

    • 環境エネルギーセグメント:大口案件の売却益計上が見込まれ、赤字幅を圧縮。

  2. マイナスリスク

    • 貸倒リスクの追加発生:米州運送セクターの市況がさらに悪化すれば、貸倒関連費用が拡大する可能性。

    • 地政学リスク:中東情勢の変化などで海上輸送コストや日数が上昇し、物流全体の需要に影響が及ぶ。

    • FIT価格の継続的な引き下げ:再生可能エネルギー事業の収益性がさらに低下するリスク。

結果として、上記のカタリストが順調に進捗すれば通期目標の達成に近づく一方、貸倒リスクや地政学リスクが顕在化すると利益水準を押し下げる可能性があります。

経営陣としては、これら要因を注視しながら、ポートフォリオの最適化を進める方針です。

メンバーシップ

「noteのメンバーシップ」は、広大な書庫のカギを手渡されるような感覚です。そこに並ぶコンテンツを、好きなだけ自由に“旅”できます。

とはいえ、「メンバーシップに入ったけど、思っていた内容とちょっと違うかも……」となったらどうしよう、という不安を抱く方もいるかもしれません。

大丈夫です。試食コーナーで「この味は少し違う」と思ったときに商品を買わずに済むように、初月無料の期間中に解約すれば料金は一切かかりません。

だから、たとえ“宝の地図”だと思っていたものが、開けてみれば普通の地図だったとしても、あなたが損をすることはないのです。

言うなれば、お店で服を試着して「ちょっとサイズが合わないな」と思ったら、買わずに戻せるような感覚です。

これなら安心してお試しできますよね。 興味をもたれた方は、ぜひ一度メンバーシップを体験してみてください。

3.配当余力の分析評価:「配当8.3倍」の成長力、リース事業がもたらす三菱HCキャピタルの安定配当戦略

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