走る“直前”に、ご褒美を。 | 玉露ランの教え
2020年5月4日、18時から19時にかけて、私は異様なハイテンションでランニングを1人楽しんでいた。走り始めは音声型の学習コンテンツを聞くことで高揚感を抑えるも、30分も経たずに我慢の限界を迎え、音楽を聞きながら直線を見つけては猛ダッシュをしたり、踊るような気分で走っていた。
時を数時間戻そう。
この日、私は14時前に起床した。
同日午前4時頃にゲーム(ファイアーエムブレム 風花雪月:5周目)をクリアし、50時間を共にしたキャラクター達との別れや世界観への感動を引きずった状態で眠りについたため、自粛期間かつゴールデンウィーク後半ということも重なり、心底無気力な状態での目覚めであった。
少しでも気分を上げるため、寝床のまま注文したマクドナルドのダブルチーズバーガーとサムライマック(炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ)を完食するも、倦怠感は全く抜けない。
しかし、この日、私は走らなければならない。
外出自粛期間中は走った日にしか身体を洗わないという生活(ズボラな人間なので、出社習慣の消失≒入浴消失となってしまった)を続けており、この日に走らなければ3晩連続でシャワーなしとなる。頭皮にわずかな痒みを感じる。
加えて、翌日の朝5時台にZoom×ランニング企画を主催してしまったのだ。走ってそれなりの疲労を加えなければ寝付けないのは明らかであり、徹夜後に走って企画をこなすことだけは避けたかった。
この時の私には、日常生活に支障をきたしている状態から自分を走らせるための、強烈なモチベーションが必要だった。多少の理性を超える、強制力に近しいような、何かが。
走るためのモチベーションを、どのタイミングに設置するか
・Run After ...
「〜のために走る。」そう聞いた時、あなたは何を思い浮かべるだろう?
STRAVA社が公表したビッグデータ解析でも明らかな通り、ランニング後のご褒美としてビールが語られることは多い。
汗を書いた後のご褒美として、ビール、銭湯…どれも格別である。
「Run After...」という快楽は、ライフスタイルスポーツというジャンルが誕生する以前から、かなり開発されていたのではないだろうか。飲み屋の店長が主催するランニング仲間に入れて頂いた時は、マラソン大会のために遠征し、走り終えたら地元の飲み屋で宴をするという様子を見て、うまく経済が回っているな〜と感動した。
しかし、生活が崩壊している状態で走る後にモチベーションを置くのはリスキーだ。ランニングをスキップしてビールに手を伸ばしてしまっては、生活の軌道修正から遠のく一方である。
・Run with...
ライフスタイルスポーツとしてのランニングが発展するにつれて、走ることそのものを楽しむための回路が切り開かれてきた。
学生時代以降、走ることと疎遠になったという方には、ぜひ改めてランニングシューズやウェアのラインナップを見ていただきたい。シンプルなものからご機嫌なデザインのもの、素材感、何よりブランドが掲げる信念…きっと、自分のライフスタイルに親しいものを見つけやすくなっていることに気づくはずだ。
ライフスタイルスポーツとしてのランニングが好きな人であれば、基本的にはこの「Run with...」の領域を開拓していくことで、走るモチベーションは加速していくだろう。私も、この領域の開拓に夢中である。
ただし、そもそもベッドから出る気力すらない状態では、「Run with...」だけでも足りない。理性だけでは抗えない倦怠感というものがある。
・Run Before...
ここからが本題だ。
走る直前にすべきこと、したいこととして語られるのは、ほぼ全てが前座的なものだ。
基本的には準備運動的なものと、簡単な水分やエネルギーの補給などだろう。走る直前にモチベーションの肝・・・つまりご褒美的なものを設定する戦略は、あまり語られてきていないのでは無いだろうか。
しかし、怠惰を極めながらも走らなければいけないという強迫観念に迫られていた私は、発見してしまったのだ。易きに流れきった理性をも目覚めさせる魅力と、理性に頼らず身体の側から走らせろと呼びかけてくるような力を兼ね備えた存在を・・・。
そして、玉露ランへ。
走る直前に、玉露をいただく。
いわば玉露ランを試してみたわけだが、これがすこぶるよかった。
日本茶の中でも最上級に位置づけられる、玉露。
抹茶やエスプレッソのような”粉感”もなく、走る前でも非常に飲みやすい。
私が玉露を知ったのは、レッドブルの約5倍※ほどというカフェインの含有率の凄まじさをweb上で目にしたのがきっかけである。
(※ 玉露 160 mg/100 ml:食品安全委員会 , レッドブル 32mg/100ml)
玉露含めお茶にはカフェインによる興奮を抑制するアミノ酸(テアニン)が含まれているため、数値ほどカフェインが効くということはないという。専門的なことはこれ以上分からないので言及しないが、私は初めて玉露を口にした時、心拍数が高まりながらも思考が研ぎ澄まされるという、不思議な感覚に感動した。
玉露を飲もうと思えば、湯を沸かす活力がふつふつと湧き上がってくるのだ。その間に顔を洗い、着替え、簡単なストレッチをこなす。
玉露は50度程度のお湯で抽出するため、手元にあるコップでお湯を冷ます作業が発生するのも良い。これから玉露を飲み、そして走るという高揚感を、程よく焦らして育んでくれる。(ティーバッグ式の玉露なら、大した手間もかからない。)
50ccにも満たない量は、走る前にぴったりだ。玉露の旨味を堪能し、多幸感に浸る。
個人差があるのは大前提として、私は、玉露が非常に効く体質らしい。
玉露を入れるまでのちょっとした儀式によって、日常生活への軌道修正に向けての一歩は既に踏み出せているというのもあるが、それ以上に、テンションが高まりじっとしていられなくなる。
走るか走らないかと理性で葛藤せずとも、玉露を喉に通すことで、身体が理性に対して走れと呼びかけるような状態になるのだ。
玉露を飲んで走った日と、そうでない日の心拍数を比べると、こうなる。
玉露なし/ありと比べて、最大心拍数に近いゾーン5に至った割合の差が明確に出ている。そんなこんなで、この日は玉露の力を借りて14km走り終えた。
走り出したくなる楽しみを、走る直前に。
「走りたいけど、走りたくない」
「家から家へ走るばかりで、新しい刺激が足りない」
そんな時こそ、走った後や、走る最中ではなく、走る直前にご褒美を設定する。ランニングへのお膳立てを楽しんでみてはいかがだろうか。自分が浮足立つような楽しみをランニングの直前に設定できれば、自ずと走り出してしまう感覚を味わえるはずだ。
・・・
私はいつの日かこの玉露ランをチームに振る舞うべく、走る前に嗜む玉露を研究しようと思う。新しい目標ができて、何よりである。