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食品に「健康」とラベルできる条件【USFDAでの見直し】

USFDAが健康強調表示の条件を見直し中

米国食品医薬品局(USFDA)が食品に「Healthy(健康的)」とラベルできる条件を見直そうとしています。
米国成人の半数が、冠動脈性疾患やⅡ型糖尿病のような予防可能な慢性疾患を有しています。その予防のための食実践に当たって、近年の栄養科学の進展に基づくより適切な情報に消費者がアクセスできるようにするという趣旨のようです。(2022年12月28日までパブコメ中。以下リンク先参照)

「Healthy」と表示することは、「Health Claims」と言われます。日本語では「健康強調表示」と訳されることが多いので、以下では健康強調表示としておきます。(日本人にとって、クレームとは苦情的なニュアンスですし。)

米国はこの健康強調表示の仕組みを1994年から運用しています。
従来、この仕組みは食品成分(Nutrient)に着目したものでした。総脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、ナトリウム、各種ビタミン類等の成分量が、表示規準を満たしていれば食品に「健康的」とラベルできるものです。
今回の見直しで提案されているのは、食品群(Food group)に着目したものです。野菜、果物、穀物、乳製品、タンパク性食品といった食品群の提供量が、表示規準を満たしていれば食品に「健康的」とラベルできるものです。

詳細は上記のリンク先の「PART 101—FOOD LABELING」(※ページ最下部)以降に書いてあります。提供の形態(生鮮食品、単一食品、混合食品など)によって書き分けがあるので、正直言って読む気が失せますが、重要なのは「食品群相当(Food Group Equivalent)」の考え方です。以下のように整理されています。


野菜     :1/2カップ(≒110 g)相当
果物     :1/2カップ(≒110 g)相当
穀物     :3/4オンス(≒21 g)相当以上の全粒穀物
乳製品    :3/4カップ(≒170 g)相当
タンパク性食品:1/2オンス(≒14 g)相当【ジビエ】
        1オンス(≒28 g)相当【魚介、鶏卵、豆類、ナッツ類】(注)1カップを8オンス、1オンスを28.3 gとしてグラム単位に換算した。


どんな提供の形態であってもこれを基礎に表示規準が作られています。まずは、これを理解しておけば問題ないでしょう。(個別具体に見ると、さらにナトリウム量、飽和脂肪酸量、糖類の添加量に制限が設定されています。)

所感

ちなみに、提供の形態に「A raw, whole fruit or vegetable:生鮮でまるごとの果物又は野菜」があります。日本のスーパーのイメージで、生鮮コーナーのどこをみても「健康」「健康」「健康」と表示されている様を想像すると、ちょっと面白いですね。
また、健康強調表示ができるものに「Plain water and plain carbonated water without any flavoring or additional ingredients:普通の水及び炭酸水(風味や成分の添加がないもの))」もあります。日本のスーパーのイメージで、飲料コーナーの水の陳列棚に際立って「健康」「健康」「健康」と表示されている様を想像すると、これもまた可笑しいですね。

今回の見直し、多少不合理があっても健康に寄与するならいいやと評されるのか、あるいは市場や消費者に混乱を引き起こすと評されるのかはわからないです。

ただ、日本でも少し昔、同じようなことをして頓挫していたなということをふと思い出します。
平成26年10月に、厚生労働省の『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』は報告書をとりまとめ、「主食(穀類)」、「主菜(魚介、肉、卵、大豆)」、「副菜(野菜)」の分類別に一食当たりの提供の規準を示し、これを満たす調理済み食品にはシンボルマークの表示ができる旨の提言をしていました。
その後、パブコメで批判を受け、調理済み食品へのシンボルマークの使用は諦め、ポスター等への使用に留めるようになったというものです。

USFDAの今回の動向に照らすと、かなり先駆的な取組だったとも思われます。ただ、いかんせん「調理済み食品」をスコープにしていたのがよくなかったのでしょうね。
要するに、コンビニ食などに健康マークを貼り付けるわけですが、これは暗に中食を推奨していることになるわけで「食生活としては健康的なのか?」という疑念を容易に呼び起こします。そして、スーパーに行くと生鮮コーナーには健康マークがないのに、総菜コーナーに健康マークがあるような状況が生まれてしまうわけです。健康に良かれと思って手作り料理をしている人たちからは、それは批判が出ることでしょう。
一方で、政策の実効性の担保という側面から言えば、「調理済み食品」を対象にしたことには一定の合理性があるのも事実です。一食分が明瞭で、食品の構成量が適切に管理され、食品製造者も特定できるからです。実際の検討過程はわかりません。ただ、この構図から思考を巡らせると、別に中食を推奨したい訳ではなく、大真面目に考えた結果、包摂性がなくなったのではないかと思います。

USFDAの場合、生鮮野菜等もスコープに含めているので、少なくともこの点での包摂性はありそうです。ともあれ、うまくやっていくのかなと思います。

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