愛情物語 (映画 1956)
実在のピアニスト・エディ=デューチンの生涯を描いた映画。息子のピーター曰く「あくまでフィクション」とのことだが、それはさておきストーリーとしてはよくできていた。
ピアノで奏でられるショパンのノクターン。様々なアレンジで要所要所に流れるのが、耳にも心地良かった。私もピアノが弾けたらなぁと、まさに西田敏行みたいな気持ち。
あんなにラブラブだった主人公の奥様が、出産後にどうしていきなり死んじゃうのか?伏線も説明も無いので、そこだけが不満だった。
しかし、その唐突な悲劇が物語の後半に活かされていくのは良しとしよう。奥様が死んで、産まれたわが子を可愛がれず、ようやくわだかまりが解けたと思ったところで、更なる不幸が訪れる。前半がうまく行き過ぎな主人公が、後半倍返しに遭うみたいで、なんだか哀しい展開に思えた。
終戦後に制作されたこの映画。戦争に関わるシーンが印象的だった。妻を亡くし、ピアノも弾けず、息子と離れ、海軍に志願した主人公は、ミンダナオ島の戦いに参加する。焼け跡に残されたピアノを目にして、つい蓋を開けて弾いてしまう。その様子を見ていた現地のアジア系幼児(日本人か現地人か?)を手招きし、連弾をし、ついに膝に乗せて抱きしめる主人公。このシーンは泣けた。
彼はこの時、産まれてから見捨ててきたわが子を思い出したのだろう。これまで放置してきた事を悔い、やり直したいと。そう、手紙を書き始めたときに折良く終戦を迎える。
亡き妻が風を怖がったこと。同じく息子も強風を恐れて、主人公のベッドに助けを求めにいく。ここも良いシーンだった。
いろいろツッコミどころもあったが、古き良き映画だったと思う。64年前の映画を家で見られる平和さに、乾杯である。