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「エリザベス女王 希望のスピーチ」 (アナザーストーリーズ)

御年94歳、現役君主エリザベス女王の生い立ちとスピーチについてのドキュメント。

伯父の恋愛スキャンダルのせいで、思いがけず王女→女王となったエリザベス。「自分が望んだものではない運命を、毅然として受け入れた」といえば、絵画にもなった16世紀のNine-Day Queen = レディ・ジェーン・グレイの事をふと思い出す。

エリザベスは幸運にも、ジェーンのように処刑される事もなく今も健在だが、長生き故の苦悩もあったことだろう。

なかでも嫁であったダイアナ妃とは、複雑な事情も推測される。夫に不倫された妻同士として慰め合いたい気もあっただろうが、エリザベスは女王としての立場を最優先して離婚するよう促した。孫の嫁メーガン妃にも、思うところはあったのかもしれない。

番組のメインテーマ、女王のスピーチはどれも感動的だと思った。

14歳、初めてのスピーチで既に民衆の心をつかんでいた。新型コロナでロックダウンに際したときのスピーチも、人々の心に寄り添うものだったと思う。

しかし何より印象的だったのは、やはりダイアナ妃の葬儀前日スピーチだ。当時のブレア首相までが催促したそうだが、彼女がダイアナの死後そこまで声明を出さなかったのは何故なのだろう。性善説風にみれば「ショックのあまり何も言えなかった」のかもしれないが、意地悪にみれば「ダイアナ暗殺を疑われたくなかった」というのもある。

しかしどちらにせよ、エリザベスはダイアナ妃の物凄い人気と、マザー・テレサも絶賛した慈悲深さに平伏した。ケンジントン宮殿前に山積みされた花束を実際に見て、いかに彼女が皆に愛されていたのかを思い知ったのだろう。彼女について黙殺するのは得策ではない、と。

と、エリザベス女王が主人公のドキュメンタリーなのに、ダイアナ妃の方が気になって仕方なかった。"悲劇的な夭折と堅固な長寿" 比べるのは気の毒だが、記憶に残るのはやはり悲劇の方なのだ。

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