御法度落語 おなじはなし寄席 #8 (BS朝日)
今は無き遊郭の風情を感じられるのは、時代劇や落語の世界だけ。
いわゆる「廓噺」が何話あるのかちょっと見当もつかないが、落語でトリをとるなら人情噺か廓噺が多いようだ。
そんな廓噺が、満を持して"おなじはなし寄席"に登場。しかも「お見立て」や「紺屋高尾」ではなく「辰巳の辻占 / 辻占茶屋」というところが渋い!
楽屋に並んだ隅田川馬石師匠と笑福亭生喬師匠。御二方の出番は高座扇のくじ引きで決めるという、なんとも風流な幕開きだった。
◆ 先攻・隅田川馬石師匠
「辰巳の辻占」の舞台は深川。
タイトルの"辰巳"は、深川が江戸城から南東=辰巳の方角からきているという、のっけからタメになるまくら。
こういう、ちょっとした豆知識を得られるのも落語の楽しみである。
叔父さんにまで"ブリのあら"と言われるくらい、パッとしない男・源ちゃん。
お玉を待つ間、巻きせんべいに入っている紙を読む彼。その文句がまた笑わせるのだが、俳句大賞を出してくるなんて。しっかり笑わせてもらった。
心中を持ちかけられた遊女のお玉が、大事なかんざしを部屋に残したり、源ちゃんの羽織を脱がしたりするところ。
この辺りで気づかない源ちゃんのドンクササが、この噺のポイントだろう。
◆後攻・笑福亭生喬師匠
射手座のB型生喬師匠、「朝の占いを見てるのか〜」と思わせて、昨今の事情を鑑みた無観客寄席につなげるという鮮やかなまくら。
そこから既に笑いを取るのは、上方ならではの貪欲さなのだろうか。
女郎の梅乃を待つ源やん、結び昆布の見かすを見つつヒトリツッコミを入れるのが可愛い。
さらに、隣座敷から聞こえてくる三味線に合わせて勝手にやりとりしながら、梅乃の様子を想像して一人馬鹿状態の源やん。可愛さMAXである!
こんな一途な現やんを陥れる梅乃って、ホント悪女。
◆アフタートークでも言及されていたが、今回のネタは同じ筋書きでも、表現の仕方に大きな違いが見られた。
ハメモノとのやり取りは上方落語ならではの演出で、さらに噺が面白くなっていたと思う。
今回生喬師匠は、東京の三味線方と事前の電話&本番前の短時間で打ち合わせをされたとの事。息の合った掛け合い、ありがとうございました。
また、今回は女性が目立つ噺で御二方がその手法についてお話されていた。
さすが憑依型の馬石師匠、さりげない身のこなしは違和感なくお玉に見えましたよ。
踊りもサゲのアレンジも、内緒づくしの生喬師匠。品格は上方随一かもしれませんね!
◆どんくさい男が遊女の手練手管に翻弄される様は、現代の歓楽街の様子とさほど変わらない気もする。
が、嘘でも心中までしようとするのは落語の世界ならではのお楽しみだろう。
終盤お互いが相手に死んだと思わせようとする流れは、見ようによってはシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」みたい。
(それは無茶やろ、とヒトリツッコミしておこう)
今は女性の噺家も多くなったが、かつて落語は演るのも聴くのも男が主流。
男のための娯楽なのに、ダメ男が遊女に弄ばれて一杯食わされる噺が受けたということは、男には今も昔もそういう願望があるのだろうか?
◆次回「そば清」は4月に放送との事。
フードファイトからの怪奇ミステリー。
これまた楽しみ〜と思いきや予告が無かったので、今Twitterを見たら...
翌週翌々週は初回&2回目の再放送をするそうです!
見逃していた方、良かったですね。
私も再視聴したいと思います。