ETV特集選「人新世 ある村にて」 (ドキュメンタリー NHK)
もっと豊かに、より良い明日を…人類の活動が地球の環境や生態系を変えつつあると提唱される「人新世」。その影響が人や社会に及ぶ場合、貧しいコミュニティに大きく現れることが指摘され始めている。インドネシアのある村。かつては穏やかな沼地だった。今、各地のプラスチック廃棄物が流れ着く。廃棄物は意外な方法で金になった…規制に取り組む政府。一方で、時代の渦にのみ込まれていく村の日々を見つめる。(語り 池松壮亮)
(以上 公式サイトより)
以前、斉藤幸平著:「人新世の資本論」を読んだときは、私の不勉強もあり今ひとつ実感がわかなかった。しかし、この番組を見て「なるほど、そういう事か」と納得。
序盤から「プラスチック農家」というパワーワードに衝撃を受けた。農業ってのは米など有機的なものを扱う産業なのに、プラスチックなんて無機物は対極のもの。どうやって農業として認識するのか?
インドネシア・グダンロオ村。昔は沼地だった何もない場所に、先進国から輸入された大量のプラごみを広げて乾燥させる。それらは燃料として揚げ豆腐工場に売られ、混入物やワイヤーなど分別された金属は他の場所へ売る。
手を掛けて育てた農作物を商品として売るように、ひと手間かけたプラごみを商品として売る。
確かにやり方は農業と同じである。
しかし、こんな違法で保護もない低収入な形態を、産業と呼んで良いのだろうか?
環境団体の調査結果は恐ろしいものだった。
揚げ豆腐工場の煙 = プラごみ燃料が発生させる黒い煙には、マイクロプラスチックが大量に含有されていた。さらにその影響をモロに受ける近隣地区の鶏の卵には、安全基準の80倍のダイオキシンが含まれており、これはもう公害病ではないか。揚げ豆腐も間違いなくヤバいだろう。
そういう環境的な恐怖だけではない。
揚げ豆腐工場の従業員たちの過酷な労働と、生活環境の劣悪さによるやるせなさ。
良い事ではないが、やらなければ生きていけない。やりたくないが逃げられない。それらの凄まじさは戦場に近いと私は思った。
彼らたちには責任がなく、先進国など富裕層の不要物を理不尽に処理させられている。上層部の不条理を突きつけられている所まで、戦争と同じだ。
スーパーのレジ袋が有料化されて4年経つが、効果は出ているのか? もはやそんな焼け石に水程度の姑息な手段では、解決できないのは明白である。
「やらないよりはやった方が良い」みたいな庶民相手の半端なゴマカシではなく、国家として成果の出せるちゃんとしたやり方ができないものか?
本当に私たちは何をやっているんだか。
「問題を引き起こしているのは高所得国。とりわげ富裕層である不平等がもたらす危機なのだ」
経済人類学者・ジェイソン・ヒッケル
「私たちは他者を犠牲にする「外部化」によって自己を安定させ 再生産する社会に生きている」「社会の多くの層の暗黙の了解と積極的な参加によってこのシステムは支えられている」
社会学者 シュテファン・レーセニッヒ
番組内では上記のように「その通り!」な事が引用されていた。
説明分析はかなりできているので、対策を早急に実行しなくては、地球も人類も本当に危険だとますます思った。
私たち一般庶民にできる事はなんだろう?