御法度落語 おなじはなし寄席 #6 (BS朝日)
緊急事態宣言下で近隣地域への移動でさえも憚られる昨今。
桂かい枝師匠と林家彦いち師匠 = 落語界が誇る二人のスピードスターが、鬱鬱ムードを一掃する華麗な走りで魅せてくれた。
◆先攻は上方の桂かい枝師匠「いらち俥」
まくらで新神戸駅が出できて、トンネルに挟まれたホームが浮かんだ。確かにプロフェッショナルの多い地域ではあるが、それさえもネタにして笑いを取る師匠、素晴らしい。
早いテンポで進めてきたのに、あわや市電に衝突!?のシーンで、いきなりスローモーションになるところ。
英語落語のパイオニアとして、海外公演を重ねてこられた師匠ならではの工夫なのだろうか。これは目で見ても耳で聴いても笑える = 世界共通で理解できる手法だろう。
加えて"顔圧"ってこういう事だったのねと、あらゆる場面で大笑いさせて頂いた。
◆後攻の林家彦いち師匠「反対俥」
初めに出てくるボロい俥屋が、ンフンフ言いながらペッペッと手に唾をつけて梶棒を持ち上げるシーン。その様子の面白さに爆笑したが、力を入れた瞬間に彦いち師匠のお顔が紅く染まったのは流石のリアリティである。
扇子は箸や財布、舟の櫓など小道具として様々なものになるが、魚になって泳ぐのは初めて見た。
ライン入りのお着物に加えて、斬新なアレンジの噺も後輩に引き継いで頂ければと思った。
◆前半のアヤシくてどんくさい俥屋と、後半の元気で荒っぽい俥屋。私なら見るからに変な俥屋には乗らないし関わりたくもないが、それに乗って銭まで払うのが落語の大らかさ。
「二人の対比があるから噺も盛り上がる」まるでこの番組みたい。勿論、この番組はどちらも素敵でチャーミングなのは言うまでもないことであるが。
◆アフタートークで明かされた、噺のサゲの裏話も興味深かった。
私が知っている「反対俥」は「始発電車に間に合います」でオチがつくはずなのに?
かい枝師匠の「極楽やない、地獄や」オチは、今回のために作られたとの事。
更に、海外ではその前段階の「This is Heaven」が大好評だったそうで。
落語は生き物というか、時代や場所で変幻自在な芸なのねと、その奥深さに改めて感服した。
◆次回はなんと「頭山」!
あの変な噺を、春風亭一朝師匠と笑福亭鶴笑師匠がどう展開して下さるのか。
実力派の御二方、期待特盛である。