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「“焼き場に立つ少年”をさがして」 (Eテレ ドキュメンタリー)

ローマ法王が世界中に紹介したといってもいい、有名な写真がある。

原爆投下後、長崎に赴任した米兵ジョー・オダネルが職務とは別に撮影したその写真。唇を噛みしめて前を向いて立つ10歳弱の少年の背には、亡くなった弟がおんぶ紐で縛りつけられている。一度目にしたら忘れられない、強烈なモノクロ写真だ。

撮影から75年が経っても、その場所や日付、少年についても詳細は不明のままである。この番組では最新技術によって写真や色付けし、手がかりをつかもうとする。と同時に、少年と同じような原爆孤児たちがどのように生きてきたのか、大人になった彼らの証言で綴られていく。

戦争に関する本や映画をしのぐ、涙なくしては見られないドキュメンタリーだった。その少年が誰だったのか、事実は謎のままである。しかしその少年が特定できなくても、原爆で家族を亡くし、親の死に涙も出なかった、辛い現実を生きた多くの孤児たち全てを象徴するのがあの写真なのだ。



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