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福本清三さんのこと (よしなしごと)


元旦に福本清三さんが亡くなった事を知った。

"5万回斬られた男"として、50年以上斬られ続けてきた名脇役の存在を私が知ったのは映画「ラストサムライ(2003)」だった。

公開前の宣伝番組で紹介されており、「へ〜、そうなんだ」と思う程度だった。
トム・クルーズと真田広之目当てで本編を見に行ったのに、福本さんの静かな存在感が気になって目が離せなくなった。
世間もそんな福本さんを放っておくわけがなく、以降大河ドラマや仮面ライダーなどにも出演されていた。

大部屋俳優としてキャリアをスタートした福本さんは、主役級の俳優たちを「スターさん」と呼んでいたという。
自分たち大部屋のチョイ役とは世界が違うと、一歩下がるような腰の低さからは"斬られ役の矜持"を感じる。

そんな彼が今年の元旦に亡くなられたなんて。2020年は多くの著名人が鬼籍に入ったが、それらを見送りつつも年の初めに逝った事がなんとも彼らしいと思った。

福本さんの著書「どこかで誰かが見ていてくれる」のタイトルは、斬られ役一筋に生きた彼の心意気そのものだろう。
地道に堅実に、そして身体を反らせて斬られる工夫=独創と共に、福本さんの役者としての一途さは語り継がれるべきだと思った。
時代劇衰退の現在、もう彼のような役者は現れないかと思うと寂しさもひとしおである。

唯一の主演映画「太秦ライムライト(2014)」。チャップリンが好きだった福本さんにピッタリのタイトルだ。
近いうちに見たいと思う。

改めて、合掌です。

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