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SKE48を更新した日 第3回「研究生公演 制服の芽」編

 皆さんは自分の存在価値について考えてみたことはあるでしょうか?
 先日、奥井奈々さんの「ガチ 存在価値 あなたの姿勢で勝ちが決まる」というなかなかパンチの効いたタイトルの本を読みました。

 初代NewsPicksのキャスターとして「年収1000万円のプロアナ」の肩書きで鳴り物入りで、数万人のオーディションを勝ち抜いた彼女。しかし、モデルをやっていた彼女はアナウンサーのトレーニングはほとんどしておらず、担当した番組はすぐに終了。次の番組では視聴者のTwitterのツイートを読むだけの係になります。こんな誰でもやれる仕事に自分の価値はあるのか、と悩みます。実際に他局のアナウンサーや視聴者からも批判の声を浴び、社内でも陰口を言われているのでは、と妄想に怯えます。
 周りの期待に応えられない落胆。
 それでも、翌日には職場でプレッシャーを感じる仕事が待っています。
 停滞感を抱いていた彼女は、あるスタッフさんの「Twitterを読む仕事でもどれを選んでどんな風に読むかで議論の場の雰囲気は変わる。重要な仕事だ」という発言を受けて、考え方が変わります。
 自分の存在価値というには自分で決められるものではなく、他者からの評価で生まれると奥井さんは語ります。そして、その存在価値は「役に立つ」とか「儲かる」とかではなく、総務課のようなすぐに結果が分かりにくい部署や「その人がいるだけで職場の雰囲気がよくなる」といった人も立派な存在の価値であると加えます。
 何者でも無かった彼女が、少しずつ結果を出すようになったのは、ひたすら行動に移っていったからだそうです。論破動画を何本観ても賢くはなれない。偉人の名言を引用してバズっても、SNSで肩書を並べても意味がない、といくつかの章で語り、失敗しても動き続けないと結果や応援する人は現れないと語ります。
 NewsPicksの製作陣が変わるまで、わりとよくNewsPickesを観ていた人間としては、あの奥井さんがこんな思いで毎週、番組に出ていたのか、と驚いたと共に、この自分の価値って、他者の目からじゃないと正しく分からないな、というのも納得しましてね。自分の創るものなんて大したことないと思っていても、誰かにとっては大事な存在なんだなあ、と考えました。

 さて、9月21日に行われた研究生公演「制服の芽」を観ました。
 この日は柿元礼愛さんの生誕祭でした。
 正直に、書くと12期生について僕は詳しい知識がありませんでした。
 ですので、この日出ている先輩メンバーである、井田玲音名さん、上村亜柚香さん、そして、西井美桜さんをまずは入口に気になった子がいたら、その子に注目していこうと思い、見始めました。そういえば、この「SKE48を更新した日」シリーズ第2弾のチームS「愛を君に、愛を僕に」公演に出演していた松川みゆさんも出ていたのもありがたかったです。
 それでは印象に残った点を書いていきましょう。

 まず、久々に聴いた「恋を語る詩人になれなくて」。
 やっぱりこの曲が始まる時のワクワク感は変わりません。
 ここで目を奪われたのがセンターのれお様に負けないぐらいの存在感を発揮していた奥野心羽さん。そして、間奏のダンスで抜群のスキルを見せる24130こと、西井美桜さん。
 2曲目の「合格KISS」は初見では誰が誰か分からないシーンもあったんですが、2周目は結構、顔と名前が一致しました。ここから、研究生がやるからこそ楽しさや生命感がビンビンこっちにも伝わる「アンテナ」と「制服の芽」が続きますが、ここで上村先輩が大暴れしてます。「楽しい」という空気を他のメンバーにも浸透させられる存在は貴重ですよね。そして、倉本羽菜さんにも同じ空気がしました。
 ここまでで、久しぶりに観た「制服の芽」で、懐かしいなあ(しみじみ)というモードになるかと思いきやそうでもなくて、イントロ部分で懐かしいとなるものの、現在のSKE48のメンバーたちが作る公演はやっぱり引き込まれるものがありましてね。
 ユニットでは「思い出以上」で奥野心羽さんを持ってくることで長身のセンターという新しい「思い出以上」を作れていたのではないかと思います。さらに河村優愛さん、伊藤虹々美さんの配置も良くて、研究生ながら正規生に負けないぐらいの勢いを感じました。松井珠理奈さんがセンターの時の一気に場の空気を変える感じではないのですが、攻撃力を凄く感じる布陣でした。誰でもゴールを決められる感じでしょうか。
 「狼とプライド」では加藤皐生さんの表情の豊かさが印象的でした。
 「女の子の第6感」では今日の主役のかきれなさんの可愛さが光っていましたね。
 「万華鏡」は、今、12期生で気になっている「どす恋ボンジュール」でおなじみ南澤恋々さんが良くてですね。松川さんや長谷川雅さんも何度も目を奪われるシーンがありました。そして、西井美桜さんの「詩人」とは違う流れるようなパフォーマンスは、「この人の才能を活かせるユニットを今すぐにつくるべき!」という気持ちになりました。
 MCを挟んで、ここから全体曲が続きますが、公演の主役のかきれなさんは青い衣装が似合いますね。MCでは、多くのメンバーがかきれなさんが、誰かが落ち込んでいる時に「大丈夫だよ」と励ましてくれたり、場の雰囲気を明るくしてくれたりという、周りの人たちが彼女の人物像を教えてくれます。
 ここでは公演のパフォーマンスを引っ張るれお様の存在感を何度も感じました。MCでも、16周年公演に向けて練習するかきれなさんへ声をかけてアイドルステップの練習に付き合ってくださったり、と先輩の優しさを感じます。河村優愛さんも凄く良かったですね。
 アンコールを挟んで、生誕ブロックへ。
 ( 急に飛んで申し訳ないです )
 ここでの手紙とかきれなさんのスピーチがとても心打たれましてね。
 まず、お母さまの手紙を代読するみやびーむさんの音読のリズムが本当に聴きやすかったです。お母さまの手紙から伝わる彼女の周りの人への優しさ。高校生1年生の時に食中毒からひどく辛い思いをしたこと。治療薬がない状態で救急車で2回転院し、苦しくて息ができない状況。彼女を笑顔にするために電話や面会で会った時は明るい話をしてくださったお母さま。

 「痛みと苦しみの中でも沢山笑い合いましたね」

 この言葉が非常に印象的でした。
 お母さまの優しさは、娘のかきれなさんにもきっと受け継がれているのでは、と僕は思います。その入院から1年後にアイドルとしてデビューした彼女。ダンスも歌も習ったことが無い中、それでも頑張る彼女を応援するお手紙でした。

 もうこの時点で、僕は涙腺がどうにかなりそうでしたが、その後のかきれなさんのスピーチも良くてですね。
 「バスケットしている頃から、結構報われることが分からずに生活していた」という言葉が印象的で、自分よりも学年が下の子がユニフォームをもらうという経験があったそうです。
 まだ1年目、周りの子と比較しない、そう考えながらも、自分が研究生公演初日からポジションが下がったこと。ショックで申し訳なく感じて、電車でなかなか帰れずにトイレに篭っていたこと。
 それでも、同期のメンバーが連絡をくれて励ましてくれたこと。
 チャンスはあるのに、その場から動けないこと。
 研究生だけで披露するコンサートでもゼロ番で披露する楽曲がないこと。
 ユニットもまだ1曲だけだということ。
 家族にも同期にもファンの人にも沢山助けてもらえていること。
 私みたいなまだ入って1年しか経っていない自分の悩みを受け止めてくれる先輩たちがいること。
 私にとってのいいことを沢山共有したいこと。
 来年の生誕祭まで落ち込まずに頑張りたいこと。
 
 ぽつりぽつりと語る彼女の言葉には、アイドルという競争社会での苦しさ、でも、支えてくれる仲間たち。お母さまの手紙の言葉をふと連想しました。
 河村優愛さんが「みんなを笑顔にしてくれる存在」と彼女のことを言ったり、これまでのMCでみんなを励ましてくれたりする存在であるということが分かります。
 きっとかきれなさんは、自分のことを客観的によく観察できる人だと思います。そして、ファンの方々の期待も想像できる人でしょうし、アイドルという競争社会の現実も分かる人だと思います。それはスピーチ中で何回も客観的な視点で自分にツッコみを入れられるところからも感じます。
 しかし、彼女の自己評価とSKE48における「存在価値」は違うと思います。まだ前列やゼロ番で踊れるほど仕上がっていない部分もあるかも知れません。でも、奥井奈々さんが「存在価値」は他者からの言葉で見えてくると語っているように、柿元礼愛という人の存在価値は、SKE48において、研究生において、とてもとても重要だと分かります。そして、奥井さんが番組スタッフの方の言葉から自分の仕事の新しい切り口を見つけて、行動を起こしていったように、今のポジションから変わっていく切り口を先輩や同期、ご家族やファンの方の言葉から見つけて欲しいと最後に思いました。
 この公演のラストは「手紙のこと」です。
 僕は「制服の芽」公演でこの曲が一番好きで、何度も何度も聴いていますが、この日は不思議な感覚に襲われました。歌い出しのところから、先ほどのお母さまの手紙の内容が重なって泣いてしまいました。もう歳ですね。
 
 素晴らしい生誕祭はこうして幕を閉じました。
 正直に書くと、この公演を観る前は、全く違う切り口で準備を進めていました。それは教育業界で問題視されている「体験格差」の切り口から2024年にSKE48にいる研究生たちは、研究生だけで大会場を体験できていた時代と比較して、非常に不利なのではないか、それにどう抗うべきかという内容でした。そのための専門書も購入して読んでいました。
 ただ、今回の公演を観て、その視点は一旦捨てて書き直すことにしました。
 そこから考えたことが「存在価値」という視点です。
 自己評価が正しいとは限らない。自分のことを悩みすぎるから、周りの期待が分かりすぎるから、時として見えなくなってしまう「存在価値」。
 それを教えてくれるものは、何か?
 多分、僕らファンも変わらずにメンバーの「存在価値」を明確に出来る言葉を持ち続けたいと思いました。
 確かに体験の格差は過去と比べるとあるかも知れません。
 でも、劇場には変わらずに、悩み、苦しみ、仲間たちと手を繋ぎながら進んでいく少女たちの「物語」が変わらずにありました。それは昔と比べたら小さな物語かも知れません。でも、流れた涙の熱さに変わりはないぞ、と今回の研究生公演から感じました。この「物語」を見守り続けたいとまず思わせることこそ、研究生公演の良さではないか、と僕は感じました。
 皆さんは、今の研究生公演をどう見ているでしょう?
 

 それでは、次で最後ですね。
 チームE公演も更新していきたいと思います。

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