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おすすめのアニメ THE八犬伝 浜路再臨

人は27年間、同じアニメを観ているとどうなるのか?


 皆さんは滝沢馬琴の「里見八犬伝」をご存知ですかね。
 江戸時代に刊行されたこの作品は時代を超えて日本人に享受され続け、ある時は人形劇で、ある時は映画で、ある時はドラマで、そしてある時はアニメで描かれてきました。

 今回紹介する「THE 八犬伝」は、アニメ業界でOVAが積極的にリリースされていた頃の作品で、当時のテレビアニメとは一味違った作風が魅力的でした。

 当時のアニメとしては、キャラクターデザインが美しく、登場人物だけでなく背景にいたるまで、1枚1枚のセル画が欲しくなるぐらいの美しさです。
 原作では品行方正な人々だった八犬士に現代的な性格づけをして、仲間なのにそう簡単には仲良くなりませんよ、なんなら殺し合いますよ、という作風は、「仮面ライダー龍騎」に何の違和感も持たない僕のような人間を作る下地を作るのに十分すぎるアレンジでした。ですので、原作の八犬伝にあたった時に、「知ってるのと違う!」と衝撃を受けたものです。

 で、今回紹介する「浜路再臨」というエピソードですよ。
 まず「THE 八犬伝」で画像検索して欲しいんですね。
 なかなか美しい絵でしょう?
 じゃあ、ちょっと「浜路再臨」で画像検索してほしいんですね。
 びっくりしたでしょう?

 そう、この作品は作画がかなり特徴的で、伝説にすらなっている作品です。
 僕が初めてこの作品を観たのは、12歳の時。
 そこから、38歳になった2022年4月19日現在まで、ひたすら見続けています。
 
 何故、この作品はここまで僕を惹きつけるのでしょう。
 今日はその魅力を考えていきましょう。
 まだ観てない人は何らかの方法で観てくださいな。


 僕はこのアニメを初めて観てから、20年以上見続けました。
 「今期は~」という言葉がアニメ好きの方々にはありますが、僕の中ではよっぽどのことがないと、テレビアニメをレギュラーで観ないので「2000年夏クール THE八犬伝」、「2001年 秋クール THE八犬伝」とひたすら「THE 八犬伝」が続くことになります。
 1つの作品を観続ける楽しみって皆さんにもないでしょうか?
 ちなみに、「THE 八犬伝」は他のエピソードも全部素晴らしくて、1話1話について語っていきたいぐらいですが、今回は「浜路再臨」についてじっくり語っていきましょう。

① 画がどうかしている


 オープニングテーマの犬塚信乃の顔の美しさと、「浜路再臨」で浜路を追っかけている時の信乃の顔のおっさんっぽい顔。12歳の僕は、いったい自分は何を見せられているんだ、という気分になったもんです。
 もう、最初の道節も浜路も、「声は一緒だけど、誰なんだよ」と思いましたよ。
 でも、これが強烈すぎて、頭から離れられなくなります。
 画の変化は1話前の「妖猫譚」から始まっているのに、こちらの方が凄く強烈です。
 タイトルの「はまじ 再臨」という文字のバランスも凄く好きです。
 そして、この画は人間のリアルな表情、もっというと、より3次元の我々に近い感じがして大好きです。
 雨のシーンで、信乃の髪から落ちる水の雫とか、特に好きです。
 今のアニメは絵の美しさやキャラクターの美しさは、当たり前のオプションかも知れませんが、「浜路再臨」についてはそれとは違った価値観の美しさがあると思います。生身の人間とより近い美しさといいますか、匂いや息遣いまで伝わってきそうな画なんですよね。

② 演出もどうかしている

 最初と最後に入る瞬きのような演出は、どこか夢の始まりと終わりのように見えます。どこまでが現実でどこまでが夢か分からないような。
 そして、もう一度出会ってしまった信乃と浜路のやりとりが切ないんですよね。
「もしや以前、どこかでお会いしましたでしょうか?」
「いえ、初めてです」
 この時の信乃の淋しそうな顔と風。
 僕の好きなシーンの1つです。 
 なんでこの時、素直に事情を話さないんだろう、と子供の頃は思ったもんです。
 また、道節が登場して、木から降りて立つまでのカメラワークは、アニメという監督のコントロール性が強いメディアならでは、のカメラワークだと思います。
 また、信乃と荘助が闘う時のカメラの動き。信乃が刀を抜くまでの動き。
「やめてー!」と叫んだ後に止まる音。全部、違和感があるのに心地良い。
 最後の信乃の叫び声で最初は夜に輝く月が映っていたのに、徐々に色が変わって朝に変わっていき、異界に変わって行く終わりが凄く印象に残っています。最後の浜路の苦悶の表情も様々な妄想を膨らませます。

③ 音も勿論どうかしている

 まず、この回は笛の音色が印象的なんですよね。
 最初の道節と荘助が浜路と再会する時の狂ったような笛の音色。
 浜路との過去を思い出す信乃が聞く優しい音色。
 最後の網干が登場する時のやはり恐ろしい笛の音色。
 どれも素晴らしい。
 もちろん、決戦シーンの太鼓の音色もいいんですけどね。
 悲しいことに、「THE 八犬伝 新章」のサントラは、第1話~第3話分しか出てないんすね。第7話のBGMとか最高なんですけどね。クラウドファウンディングとかで出せないものかと、最近は考えてますよ。
 

④ ストーリーは最高にどうかしている

 浜路を巡る3人の犬士が交差するのが凄く良くてですね。
 道節は自分の妹を手にかけた罪悪感。
 荘助は浜路への思いと信乃への嫉妬心。
 信乃の死んだはずの浜路と再会できた喜びとなんとも言えないやりきれなさ。
 そこをついてくる網干。
 運命に導かれて、一番一緒にならなさそうな道節がここで合流するのが良いんですよね。
 網干の「安房で待っておりますよ」の台詞と雲のエクストリーム感も最高なんですが、浜路を真ん中に置くことで3人の犬士の感情が爆発していくストーリーが大好きです。
 信乃が詠んだ「行く川の風 行方もしれず 秋の夕暮れ」という何気ない言葉は、「THE 八犬伝」という毎回規模の大きな話の中の小品としても素晴らしいと僕は思います。


 まあ、とにかく一度観たら、忘れられないアニメですし、時代劇好きの方にもチェックしていただきたい作品です。
 このブログのそもそものコンセプトの一つが、めちゃくちゃ好きだけど、なかなか理解してもらえないものを紹介したい、語れる相手がいないなあ、という人の為に書きたいということがあったので、自分のために今回の記事を書きましたが、これをきっけに、この作品が好きな人と出会いたいなあ、とも思いました。
 僕にとって、大事な大事な1作です。

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栄、覚えていてくれ
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