第14回 「着る」鎌田さん

 先日、フィルムアート社から出版された「ファッションスタディーズ 私と社会と衣服の関係」を読みました。「流行」、「ヴァーチャルファッション」、「メディア」など、様々なクリティカルワードの視点からファッションについて専門家たちが寄稿しています。
 中でも本書の編者の一人である藤嶋陽子さんの「消費」に関する文章が面白かったので、さらに雑誌「モノノメ」の第2号に寄稿されていた「凡庸な服は、いかに捉え得るか?ー私的な身体技法をめぐる試論的考察」も読んでみました。
 

 服というのは、デザインを気にせずに機能面で劣化さえしなければ、毎年のように買い替える必要が本来は無いものです。
 しかし、それではビジネスは成立しません。 
「今年は、中坂美祐ちゃんの豚さんデザインがトレンド!」とか、「うわあ、あのお坊さん。栄、覚えていてくれの袈裟着てるよ、あれ去年の流行りじゃね?絶対あの坊さんはお葬式の20年前からの早割が効いても呼ばない」といった具合に流行をしかけていくわけですね( 多分、違う )。 
 勿論、それに対抗したノームコアファッションがあります。
 スティーブ・ジョブズが着ているようなシンプルなファッションですね。
 しかし、これさえも「シンプルなスタイリングの流行」という切り口で吸収されてしまいます。
 ただ、「いやいや、流行なんて興味ないよ。もう私は30年間、大矢真那生誕Tシャツを着まわしてますよ」という方もいらっしゃるかも知れません。
 これは自分自身の服装が他者から「見られる」ことの一種の自己防衛が働いているのでは、と藤嶋さんは指摘しています。また、流行に乗ることへの嘲笑的な声への防衛もあるかもしれないと。
 ただ、服というのは他者に「見られる」前に、自分に「見せる」という機能もあります。
 服を選ぶ時や着る時に、僕らは自分の「身体」についても考えます。
 僕は花柄の服が好きで、20代の頃はレディースでも気に入ったものがあればどんどん買って、パンツを少しシックなものにして着るのが好きでした。しかし、30代も後半に差し掛かると20代で緩かった首元が苦しくなることもあります。ああ、僕の「身体」って今こんな感じなんだ。お腹も最近出始めたかも、なんてことも考えます。
 また、「この服を着ると心が躍る」というものはないでしょうか?
 ネットフリックスで話題になったコンマリさんの断捨離では、服を捨てる時に「買う時にときめきを覚えた服をまずは残してください」と語ります。これは何故かと考えてみると、服を選ぶ時には「これは絶対に欲しい!着たら絶対にテンションが上がる!」という理由で買ったものもあれば「これは無難だから1着買っておくか」という理由で買ったものもあります。
 二つの服は自分に「見せる」か誰かに「見られる」かの選び方の違いで分けられると思います。
 僕の事例で言うと、関西に住んでいた頃には街にロリータやゴスロリの子が沢山いました。また、映画館で働いていた頃は、ホラー映画の公開日には思い思いのホラー映画Tシャツ( 勿論、みんな上から下まで黒のハードコアなホラーファンです! )を着ている方々が押しかけてきました。どちらも自分の着ている服を含めて楽しそうでした。そこには、他者の「ダサい」とか「変だよね」いう言葉ではありません。逆に今住んでいる田舎ではみんな同じような服を着ています。地方の都市に行くほど「見られる」が強いのかも知れません。
 ただ、自分の好きな人達から「その服、お洒落だね」と言ってもらえたら、その服に特別な価値が付くという「見られる」の良い点も書いておきます。
 
 さて、こんなに長々と前置きをしたのは、今回のテーマが「着る」鎌田さんだからです。
 彼女の場合、大きく分けるとSNSに投稿する私服とステージの上やメディアに登場した時の衣装の2つに分けられると思います。服の面白さとして「公私」の領域を行き来することがあると思います。
 皆さんは、どんな服の鎌田さんがお気に入りなんでしょう?
 早速見ていきましょう。

 こちらは、アメブロの写真から取ってきました。
 背景や色白な鎌田さんの効果もあるのかも知れませんが、鎌田さんの上品さと野心を同時に感じることが出来る素敵なファッションだと思います。鎌田さん自身もお気に入りのコーディネートだとか。
 
 まずは、こうだひろゆき( @kouda_hiroyuki )さんのコメントから!


 ワンピース鎌田さん( 身体が伸びるあの人ではない )、良いですね。
 年と共に好きが変わっていくというのもいいです。完全に僕の私見ですが、鎌田さんって丈の長い服を上手に着こなすイメージです。
 
 

 これに関してもこうだひろゆきさんから更にコメントをいただきました。

 こちらも年と共に好きが変わると繋がりそうですね。
 逆にいうと、どんな衣装でも馴染んでいく鎌田さんも凄いですし、そう思わせてくれるオサレカンパニーのデザインも凄いです。

 さて、次はじろう( @jiro0281 )さんのコメントです。

 ううむ、衣装の前にノスタルジーに襲われてしましました。
 MVの世界観ともつながりそうな白のレース衣装が素敵ですね。
 先ほどの「ソーユートコあるよね?」の鎌田さんとはちょっと印象が違います。この頃の鎌田さんたちネクポジのメンバーたちが、どんなイメージを期待されていたのかも少し伝わってきませんか?

 さらに、じろうさんのコメントを連続で。

 服を着ることの「変身の楽しみ」を感じさせてくれる写真たちですね。
 たとえば、僕らの生活でもこの服を着ることで「変身」する服ってありませんか?
 「変身」まで行かなくてもちょっと自信が持てるものってないでしょうか?ヨウジヤマモトの服が持つ「黒」を纏う時の気持ちだったり、吉田朱里の「B IDOL」のコスメの「赤」を使う時の気持ちだったり。
 僕はコスプレというのをほとんどやったことはありませんが、服の持つ意味や物語を知っていることで、ポーズや視線も良いものになっていくのではないか、と僕は思います。そういう意味では、鎌田さんのサブカルチャーやメイドについての理解が写真の完成度に役立った1枚だと思います。
 ちなみに、男装のまーやん最高ですね!

 続いて、かん( @ukU7BmmlaqPMtGC )さんのコメントです。
 

 緑という色が似合うメンバー。
 面白い視点ですね。
 皆さんは誰が思い浮かんだでしょう?
 ライブDVDなどで誰が緑をよく着ているかな、とチェックしたくなりました。ちなみに緑色が持つイメージを調べてみると、リラックスや調和があるそうです。鎌田さんの持つ柔らかさと通じるものがあるのでは、と僕は思います。

 続いてユウディ( @aoisora20111 )さんのコメントです。

 今回募集したコメントの中で一番意表をつかれたけれど、一番面白かったコメントです。
 「憧れた先輩」って面白いですね。
 服という物ではなくて、鎌田さんという人がファッションの起因になっているのが凄く面白いです。
 ちなみに、男子校育ちの僕には「憧れの先輩風衣装」を想像するとKOFの草薙京とかになるんですが、皆さんはどんな「憧れの先輩」をイメージしたでしょう?なんだか、これだけで一人一人のイメージが違っていて、面白そうですね。更に鎌田さんが「憧れの先輩のイメージ」を受け止められることも凄いです。

 最後は、しましま( @shirasu48 )さんのコメントです。連続でどうぞ。


「無意識の色」は曲の完成度も本当に素晴らしいんですが、衣装も良いんですよね。ちなみに、鎌田さんはパレオはエメラルドの衣装も着てますね!緑繋がりというと大げさかもですが、確かに似合ってます。


 ジャケットとスカートの配色もカッコよくて、しましまさんが貼ってくださった1枚目の写真は、まさに「鎌田さんが持つ雰囲気」との相性ばっちりだと思います。もし、言語化するなら、強さと美しさのどちらも兼ね備えている感じだと僕は思いますが、皆さんはいかがでしょう?
 2つ目のツイートの和装に関しては、鎌田さんの持つ「しなやかさ」との相性ばっちりですね。また、歴史的なことにも理解が深い( なんなら勉強している )鎌田さんが着ることで、何かもう一つ意味が乗りそうな気もします。多分、鎌田さんが大正時代に生まれていたら、竹久夢二の絵のモデルになっていたのでは、と4枚目の写真なんかを見ていると僕は思いました。
 あと、どうでも良いことなんですが、実はこのnoteの鎌田菜月さんマガジンの画像は1枚目の写真の浴衣の柄なんです( わりと鎌田さん推しの方は気づいてらっしゃったご様子 )。

 ありがたいことに、しましまさんはもう1つツイートしてくださっています。

 マフラー姿も素敵ですね。
 色味の関係もあるかもしれませんが、鎌田さんって季節でいうと秋冬のイメージが強いんですかね?
 皆さん、ちょっと先ほどの無意識の色に戻ってみてください。
 曲の2番で、鎌田さんは何の衣装を着てました?
 そう、「12月のカンガルー」なんですよね。
 マフラー付きの衣装で、しかも緑!
 ううむ、皆さんのおかげで「無意識の色」の面白みがまた一つ増えました。
 
 さて、皆さんの「着る」鎌田さんを見てきましたが、鎌田さん自身は服や衣装についてどう考えているんでしょうか?
 ちょっとアメブロを読んでみましょう。

 自分らしい服と仕事で必要とされる服。
 私の服と公の服。
 今までとは違うタイプの服。
 服を着ることで、少しだけ変わるかも知れない自分。
 そして、長く良い物を使える自分を目指したい、というところも素敵ですね。
 このアメブロを書いたころはコロナ禍だったということもあって、ステイホーム期間で、他者と会う機会が減って「見せる」と「見られる」というバランスが変わった時期ではないか、と思います。
 リモートワークの方だったら一日中スウェットで過ごしたということもあるのではと思います。僕はありました。でも、何故かこの時期に自分の為に服を通販で買ったのを覚えています。デザインではなく「着心地」を初めて意識しました( 靴だとこの要素は強くなると思うんですが )。
 鎌田さんの中にもファッションに対するちょっとした変化が生まれた時期だったのかも知れません。
 
 皆さんは自分が好きな服とみんなから好かれる服はどう違うでしょう?
 今日は、どんな服で過ごしましょうか。

※鎌田さんについて書いたこれまでの記事はこちら!


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