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オーボエリードメイキング講座#2 道具解説

第2回の今回は、リード製作で使う道具について掘り下げて説明していきます。

私は道具に関して、種類を試すというということをするわけではなく、一つの道具を買ったらそれを使い倒すタイプなので、道具の種類を並べてこのメーカーはこういう特徴、このタイプはこういう人におすすめという話はできません。しかし、私が実際に使っている道具を、このように使っていると紹介していくことで、道具に対する考え方や新たな使い方の発見につながれば、よりリードメイキングの選択肢が増える事になるかと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

1.ナイフ類

リード製作の要ともいえるナイフ類と、そのメンテナンスに使う砥石や研ぎ方について紹介、解説していきます。

 1-1.私が使っているナイフについて

ナイフは4本使っています。アンドウのリードナイフ2本とカッターナイフ2本です。

アンドウのナイフの1本は音大に入る直前に購入したJDRの本仕込みというナイフで、もう1本は5年前くらいに購入したノーマルのアンドウのリードナイフです。本仕込みとノーマルは研ぎの差だけらしいのですが、若干本仕込みのほうが金属が固い気がします。本仕込みとノーマルの差なのか、購入した時期の差なのかはわかりません。

カッターナイフはOLFA製です。ホームセンターで購入しました。

アンドウのナイフは基本的に1本あれば全ての工程で使えます。しかしながらリードを数作るようになると、工程ごとに複数あったほうが刃の消費が少なくなり研ぎの頻度を下げることができますので、楽をするために現在は4本体制でリードを製作しています。

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カッターナイフ黄は、リードの粗削り、舟形の両端を落とす、カッティングブロックで先端を落とす用
カッターナイフ銀は、リード先端用
アンドウノーマルは、リードの胴体部分を主とした普段使い用
アンドウ本仕込みは、スクレープやハートに段差をつけたりサイドといった切れ味が必要な部分

といった感じで使い分けています。

ちなみにカッターナイフの刃は黄、銀ともにOLFA製の特専黒刃です。

砥ぎは自分で行っており、砥石はシャプトン製の刃の黒幕シリーズの1000番を使っています。

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 1-2.アンドウのナイフの使い方

リードに刃を当て、左手親指の爪の上にナイフを乗せます(ナイフ背面に親指を当てる方法もあります)。

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ちなみに、左手でのリードの持ち方ですが、私の場合コルクを左手中指の付け根で支える用に持ち、

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そのまま親指をリードに添えます。

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削る時は右手首のグリップと左手の親指の押し出し(左手中指の付け根の握る力を主に使う)で削ります。慣れないうちはリードに対して刃を鋭角にならないように当てて、右手首のグリップを使わず削る方が良いでしょう。

刃に長さがあるので、先端~中央~根本と場所によって使い分けが可能です。刃の重みが使える根本部分では段差を作るのに適し、刃の先端部分は欠ける危険性のあるリードの先端部分を削る時に使うと良いかと思います。リードの胴体部分などは刃の中央部分、私はナイフの刃の上から3分の1くらいの場所が使いやすくいつもここを使っています。

削るとリードの削りカスがリードナイフに付着します。実際に検証したことがないので真偽のほどはわかりませんが、刃に指で触れると皮脂が付着して切れ味に影響があるような気がするので、ズボンの太もも部分にあて、上側にピッと動かして取ります。

リードは削る時、右側と左側で削りやすさが違います。私は右利きなので右利きとしてのお話になりますが、リードに対して刃を斜めにあてサイドに向かって削る再、中心から右側に向かって削るのは右肘が下がっているので容易です。しかし中心から左側に向かって削る際、右肘を上にかなり上げなければ削れません。右肘をあげるのを面倒になって、左肘を体から離し角度をつけようとすると、かえって左手の安定感が失われて危険です。普段から左脇を閉め、左肘が体につくようにしておくとリードを持つ手が安定します(左肘を体に無理やり押し付ける必要はありません)。

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そのため、手削りのリードメイキングでは右側がよく削ってあり、左側が残ってしまう場合が多いです。特に左サイドの肩~先端にかけては、触りたくないと無意識に思ってしまい残る傾向があります。右側をきちんと見ながら同じように削るようにしてください。

 1-3.ナイフの研ぎ

研ぎは刃物専門店などにお願いするか、自分で研ぐ必要があります。自分で研ぐ場合、中砥1000番と修正砥石かあるいはもう一つ中砥1000番を用意してください。

砥石に水分を含ませ(シャプトン製は2~3分程度でいいです)研ぎます。アンドウのナイフの研ぎ方ですが、刃の斜めの面にきちんと砥石を当て、研ぐ際にその角度が変わらないようにすること、砥石の面が平らであること(平らでないなら修正砥石かもう一つの中砥石でこする)が重要です。もう一つの注意店としては、動かしている内に段々右手が上にあがり、刃の根本が浮き、刃の先端しか当たらない状況になることがありますので気を付けてください。

慣れないうちは往復せず、押すだけあるいは引くだけで研ぎ、いちいち砥石からナイフをあげて、きちんと面が砥石に吸い付く様に当たっている感覚を確かめてから動かすということをすれば良いかと思います。押すだけがいいか引くだけがいいかですが、まず引くだけで試してみて、切れ味が戻らないなら押すだけにしてみてください。

家庭で使う包丁は右手で持ち、刃が自分側にきて、押し出して研ぎます。リードナイフは言わば左利き用工作ナイフなので、刃が向こう側になると同時に刃に厚みがありますので、包丁と研ぎ方が異なります。普段から包丁を研ぐ方であっても、慣れるまではある程度時間がかかりますので、あせらずやってみてください。

また、個人的な意見になりますが、長年自分で研いだナイフを使っているせいか、お店で研いでいただいたような、ビシッと切れ味のあるリードナイフは正直使いにくいです。胴体部分は大雑把にサッサッとナイフを使いたいため、切れ味が良すぎると引っかかって作業効率が悪いです。その代わり、切れ味が要求される場面ではカッターナイフを使います。

 1-4.削りにおけるカッターナイフの使い方

基本的にリードメイキングにはアンドウのナイフ1本あれば事足りますが、切れ味がよく、切れ味が落ちたとしても刃を折れば新品がでてくるカッターナイフは、私のリードメイキングにおいて必需品になっています。カッターナイフは特に先端を削る際に大いに活躍します。

基本的に持ち方はアンドウのナイフと同様です。アンドウのナイフを用いて先端を攻める場合、リードは乾燥していたほうがいいです。乾燥している反発がないと緻密に削れません。

カッターナイフの場合、リードは湿っている方が良いです。リードを柔らかくして、軽くなでて削ります。乾燥しているとむしろ持っていきすぎて欠ける可能性があります。湿っているということは材が膨らみますので、その状態で削って乾燥させるとかなり緻密に薄い仕上がりになります。

カッターナイフで削るのは、数年前ベルリンフィルのハルトマン氏がカッターナイフでリードを削る動画を見て参考にしました。それ以来ずっとカッターで先端を作っています。

ただ、カッターナイフには表皮の粗削りや舟形のサイドを落としたり、カッティングブロックで先端を落とすなど、切れ味が落ちる工程も担当してもらうため、2つ用意することで刃の消費を抑えています。

2.プラーク

プラークはリードを削る際にリードに差して下敷きとして使います。他の使い方はプラスチック製の滑るプラークであれば、リードの表裏のズレを修正するのに使います。そして先端の厚さを見る際に、濡れているリードにプラークを差して先端の色味を見る方法があります。この場合、黒いプラークが見やすいので、特に理由が無い場合は黒いプラークを用意することをおすすめします。その他の使い道として、リードを粗削りした後に、先端の連結をプラークを用いて切断する方法がありますが、私はその方法を用いず、詳しくないので説明を省きます。

私が用いている3種類のプラークを説明する前に、基本的な使い方である下敷きとしての使い道について解説していきます。

 2-1.下敷きとして使うプラークについて

プラークは様々な種類がありますが、どういう使い分けがあるのかをよくわからないまま使っている方が多いように感じます。プラークはその形状の違いで、差した後に厚みとして浮き上がる箇所が異なります。そのため、リードに差して、プラークに厚みがあるから削るように示された箇所を削る、という使い方と、特定の場所を削りたいために、そこを浮き上がらせやすいプラークを差すことで削りやすくするという2通りのアプローチが考えられます。

つまり、プラークに示された厚みを削ることで、自分の要求する完成形のリードになるものが、その人にとって理想的なプラークであると言えます。

しかしながらプラークを差してどこが浮き上がっているのか、どこを削るようプラークが示しているかを判断するには、経験が必要となります。また、人によって見え方が違うことも考えられます。

複数種類のプラークをお持ちの方は、1つ1つ差してじっくり観察してみると見た目にわずかな違いを感じられるかと思います。見た目が違うということは、削る量に違いが生まれ、すなわち仕上がるリードに違いが出ます。自分に合うプラークを見つけるというのはなかなか難しいですが、そのようなプラークを見つけるのもリード製作において重要な要素です。

以上を踏まえ私が使い分けをしている3つのプラークをご紹介します。

 2-2.私が使っているプラークについて

私が使っているプラークは3つです。リーガー製のプラーク、いただきものの黒檀製、いただきもののアルミ製です。

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リーガー製のプラーク(左)は万能です。私が使うと開きを落ち着かせてくれるような結果になります。しかしながら扁平な形のため、これだけで調整をし続けると立体的な開きがなくなっていきます。削り始めのリードに対して使い、日を改めてから以降の調整は黒檀製を使っています。
また、自分が使っているプラークで唯一の既製品であるため、先端を削る際ボコボコになっても代えが利く理由で、先端を削る際はこれを使っています。
他にはプラスチック製であるためすべりやすく、リードの表裏のズレを治す際にリードに差し込み、左右に力を加える事で直すこともします。
このプラークの問題点はプラスチック製であるため滑りやすく、また幅がやや広いために、サイドを削るとプラークが横にズレたり、サイドを削ろうとしてもプラークにナイフが当たって削りにくいということがあります。

次はアルミ製(中央)です。アルミ板をひし形に切り出してあるもので、いただき物です。このプラークは削るために使うと、薄すぎて下敷きの役割を果たしません。使い方は、差し込むとスクレープのすぐ上の部分の残っている部分を浮き上がらせます。クローで低い倍音が鳴らない場合にこのプラークを差して残っている部分を確認し、リーガーのプラークを使い削ります。ほかのプラークはある程度の厚みがあるため、特定部分を浮き上がらせるのは納得がいくのですが、薄い板状のこのプラークがスクレープすぐ上の部分を浮き上がらせるのは本当に謎です。リード製作はまだまだわからないことだらけです。

最後に黒檀製(右)です。師匠からのいただきものです。このプラークが浮き上がらせてくれるのは肩の部分(サイドの胴体部分から先端にかけての傾斜部分)で、音色に関わるところです。また幅がちょうどよく、黒檀製でややざらつきがあるため全くすべらず、サイドに関わる部分を削るのに非常に重宝しています。問題点と言えば1点物なのでもし紛失したら代えが利かないため、家の決まったところにあり外に持ち出せないという事です。

3.ラジオペンチ

ラジオペンチはワイヤーを切断し、絞る際に使うのが基本的な使い方になります。その他の使い方としては、完成リードに巻いてあるワイヤーの上からサイドを押させて開きを出したり、上下に潰して開きを閉じたりします。指でリードの開きをコントロールするより強力な効果が得られます。

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他には楽器に入らないような新品のチューブのコルクを潰すのに使用しています。やり方は、下からあるいは横からガシガシ適当に抑えるだけです。グリスをこの部分に塗るとゴミや水分が溜まりますし、テーブルにチューブを載せ、固いものでコルク部分を潰しながらコロコロ転がすとコルクが潰れて入りやすくなるという方法が有名ですが、一度この方法で潰した際、チューブの真鍮とコルクの間の接着剤が剥がれコルクが浮いてしまったことがあり、以降自分はコルクがキツい場合はラジオペンチで潰しています。

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ラジオペンチは個人的には先端が短い、なるべくコンパクトなサイズを使うのがいいと思っています。少し大きいと捻りやすいのではないかと思い、普段使いより少々大きめのラジオペンチを購入して使ってみたことがあったのですが、かなり使いにくく感じたため、それ以降なるべくコンパクトなサイズしか使っていません。

4.マンドレル

マンドレルは糸巻きの時に力をキープしやすくするために持ち手として使うのが基本的な使い方です。他には熱して焼き付けをする際にも使われます。裏技的な使い方としては、完成リードにグッと差し込むと一時的に開きが復活し、息抜けが良くなることがあります。

マンドレルの選び方ですが、自分が使うチューブと同じものを使うのが基本です。チューブと一致するマンドレルが無い場合は、グラつかないものを選んで用意してください。マンドレルの頭がチューブからややはみ出るものは構いませんが、マンドレルの頭がチューブから出ないものはグッと差し込むと、内側をえぐる可能性があるため、他のマンドレルのほうが良いかと思います。

 4-1.私が使っているマンドレルについて

私が使っているマンドレルは匠真円マンドレルと、焼き用マンドレルの2本です。

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匠真円マンドレル(右)は私が匠真円チューブを使用しているからで、他に理由はありません。

焼き用マンドレル(左)ですが、これはいただきものです。このマンドレルは形状が真円であり非常に重宝しています。また先端の形状が丸みを帯びており、焼き付けの際に舟型にグッと差し込んでも、内側をえぐる心配がありません。
もしマンドレルの先端が90°で角ばっているような形状のマンドレルを焼き付けに使っている方は、差し込むと材の内側をえぐる可能性がありますので、楕円のマンドレルを使っている方は楕円のカーブが緩い部分2か所、真円の方はぐるっと一周を、粗い耐水ペーパーか紙ヤスリで角をとります。そうすると焼き付けの際、内側をえぐる心配が無くなります。耐水ペーパーあるいは紙やすりを机に置き、マンドレル先端が45度で当たるように当て、こすって削ります。

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見にくいかもしれませんが、昔使っていたグルツィオD12マンドレルです。先端の上下の角をヤスリで削っています。

5.リードカッター、カッティングブロック

リードカッター爪切り型、リードカッターギロチン型、カッティングブロックは先端を切る際に使われます。先端をカットするタイミングは、糸巻き後粗削りをしてプラークを差す隙間を作る場合と、音程が低い場合や柔らかい材にハリを与えるために先端をカットする場合の2つです。

爪切り型が一つあれば基本的に問題ありませんが、私が使っている3つの道具を紹介します。

 5-1.私が使っているリードカッターについて

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まずリードカッター爪切り型です。仕上げや調整で先端をカットする時に最も使う頻度が多いです。上下の刃の位置が一致するので、リードの表裏が揃います。表裏が揃うと、効率的で素直な振動になります。
また、リード先端の角を落とす際にも使用します。斜めにリードをセットして、わずかに落とします。

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特殊な使い方として、カットする直前にリードカッターを奥に倒してカットすることで表裏の長さをわずかに変える使い方があります。

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上の写真で説明しますとこの状態からリードカッターを奥に倒してカットすることで、裏側が短く、手前側が長くなります。私が普段使っているリードは、ワイヤーが絞ってある方を口に咥えた時に下になるように作ってあります(一般的に、表裏の長さを変える場合、短い方が下唇にあたるように咥えます)。そのため絞ってあるほうがやや短くなるように(写真では見えませんが、ワイヤーを絞ってる側を裏側にして)傾けて、リードカッターを使用しています。

次にギロチン型のリードカッターです。リーズンスタッフ製を使っていまして、刃が垂直に落ちるタイプです。他には円を描いてカットするタイプのギロチン型も存在します。
糸巻き後粗削りをし、メーキングマシンにセットする直前に使います。寸法をいちいち図らなくても決まった長さにカットできるので、作業効率が上がります。しかし最終的に爪切り型で先端は落とせるように、やや長めで製作をしますので、表裏の一致などは気にしていません。
リードカッターに慣れていない方は、これを使えばまっすぐにカットできますので、初心者にもおすすめの道具です。

最後にカッティングブロックです。メーカーは不明です。これを下敷きにして、カッターナイフで先端をカットします。表裏の差が大きく、抵抗感が出ます。柔らかい材で、吹き心地が軽すぎるのに音程が低い場合、抵抗感をつけつつ音程を下げる理由で使います。

最後に

今回紹介したナイフ、プラーク、ラジオペンチ、マンドレル、リードカッターは基本的なリード製作の道具ですが、道具一つに様々な使い方があるのをわかっていただけたかと思います。他にももしかしたら使い道が隠されているかもしれませんが、そういう使い道は何もせずに思いつくものでなく、普段からリードを作っているうちに突然ひらめくものです。

次回は消耗品やマシン類の解説をする予定です。お楽しみに!


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