【小噺】上水道料金と下水道料金、滞納するとまずいのはどっち??
日々生活をする中で、いろんなお金を支払いますよね。
食費、光熱費、通信費、交通費、家賃、交際費…
もちろん、自身が受けた利益の対価は全て支払う義務があります。
ただ、滞納するお金の種類によって受ける不利益が大きく異なることもあるのはご存知ですか?この違いが顕著な面白い事例を紹介したいと思います。
それが表題の「上水道と下水道、滞納するとまずいのはどっち??」という噺です。
結論から言います。
上水道と下水道では、下水道のほうが滞納するとまずいです。
ここでいう「まずい」というのは、差押えのリスク等を指しています。
上水道と下水道、何が違うのでしょうか。
【上水道料金】
債権の種類:民法上の債権(私債権)
時効:2年(但し時効の援用が必要)、私債権のため差押えに当たっては裁判所から債務名義の取得が必要。
自力執行権:無
調査権:一般の私債権と同程度の調査権
【下水道料金】
債権の種類:公法上の債権(公債権)
時効:5年(督促や承認等で時効の中断が無い限りは時効の援用など無くとも5年で消滅)
自力執行権:有
調査権:地方税と同程度の調査権
箇条書きでまとめましたが、よくわからないですね。
それぞれ、滞納した場合何が起きるのか順を追って説明するとわかりやすいかと思います。
債権者の立場から見ていきましょう。
【上水道料金滞納発生の場合】
滞納→督促→裁判所への申し立て→裁判→債務名義の取得→差押え
【下水道料金滞納発生の場合】
滞納→督促→差押え
どうですか?
こうしてみると、下水道料金がいかに簡単に差押えられるかがわかりますよね。
【調査権の違い】
もうひとつ、それぞれに「差押え」と出ていますがこの前段階の「財産調査権」が大きく違います。
上水道料金をはじめとする私債権では、自身で事前に差押え口座を確認する必要がありますが、そのための調査権が特別無いため口座の特定が困難です。
※そのため家とか車とか目に見えてわかりやすい財産を差押さえることが多いです。
一方で、下水道料金をはじめとする公債権(強制徴収公債権)では、債権者が調査権を持ちますので銀行に「お宅の銀行にこの人の口座ない?」と聞くことで口座の有無、直近の取引履歴の写し等が見られます。
そのほかにも、保険金の解約返戻金を調査するための保険会社への照会や、電話加入権の有無などの調査も可能となっており、その調査権はかなり広いものとなっています。
【自力執行権の有無】
さらに、上水道料金は私債権のため、「自力執行権」という権利がありません。
自力執行権は、債権者(自治体)が強制的に債務者に対して差押え等の形で納付を実現できる権利でして、これが無い債権は裁判所の執行官と一緒に動産の差押えをしたり、口座の差押さえに当たって裁判所を経由したりする必要があります。
※弁護士資格とか無くても市役所や国税の人々が差押えできるのはこれが根拠ですね。
下水道料金は強制的な徴収力を持つ公債権のため、そのような手続きは必要なく、督促を送って一定期間が経過すると、すぐに差押えが可能となります。
細かい話をするとこれに裁判所の判例等が関わってくるのですが、ざっくりお話をするとこのように下水道料金と上水道料金の違いがわかるかと思います。
ひとつ、小噺として覚えておいて頂けましたら幸いです。
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