【ピチカート・ファイヴ】カップルズ
1989年3月2日。
「ベネチア。宿に戻ってパスポートを取り、ピチカート・ファイヴ「カップルズ」聞きながら出て両替へ」
6月4日。
「初夏の夕暮れ。毎日ウォークマンで、ピチカート・ファイヴ「カップルズ」聴いてるが、とてもせつなくなる」
1994年8月26日
「久しぶりにピチカート・ファイヴ「カップルズ」元ネタ音楽のテープ編集。このへん聴くのもオリジナルカセット作るのも実に久しぶり」
ここまででもすでに何度も登場している「カップルズ」。
私の「今後これしか聴けないなら」の迷わずの1枚です。
この2年前の87年、前にも「ベリッシマ!」やで書いてますけどそれから千回以上聴くことになるピチカート・ファイヴ「カップルズ」が発売されました。
ロジャー・ニコルズ・ブームを後に巻き起こしたりして、私は渋谷系の源流となったアルバムだと思ってますけど、そういったソフトロックだけでなく、バカラックへのオマージュも強かったという話は、「バート・バカラック」でも書きました。
そこで書いた「サマータイム、サマータイム」など以下で取り上げる曲は野宮真貴さん時代にセルフカバーされてますが、断然「カップルズ」収録バージョンをおすすめします。
サマータイム、サマータイム
本当に「カップルズ」の魔法はすごくて、発売から40年近く経とうかというのにいっこうに色褪せない。
田島貴男さんも野宮真貴さんもすばらしいですけど、やはりこのアルバムの佐々木麻美子さんの「声」の唯一無二感。都会の男女の風景を短いフレーズで浮き上がらせる、小西康陽さんの卓越しまくりのワードセンス。
よく晴れた日曜の午後、部屋で聴くのにいちばん適したアルバムです。いきなりどんな比喩だよって感じですが。
このアルバム、まったく売れなかったとのことですけど、大学時代、私のまわりはかなりの確率で「皆笑った」が歌えました。ダビングしたカセットテープが出回ってたせいかもしれませんが。
まあそれはさておき、たくさんおしゃれできれいな女友達たちと男女パート分けて歌ったりしてました。素敵な青春の一コマ。
皆笑った
時代&残念だなあと思うのは、後に「連載小説」をピチカートがセルフカバーしたとき、「♪10円玉を3枚持ってるのを確かめて/そして私はあなたに電話をかけるの」という名フレーズが、「古い手帳であなたの番号を確かめて」に変更されてしまったこと。
これ大好きだったんだけどなあ。9分間の電話ボックスの光景が目に浮かんできますが、それは昭和の人だけなんですよね。
でもいまや「古い手帳」も古いんでしょうね。
連載小説
と、好きな曲だらけのアルバムなんですけど、ふと気づくと「眠そうな二人」を口ずさんでることが多いです。「♪夜はとても深くて」という部分が無性に好きなんですよね。すばらしいメロディと詞。
眠そうな二人
というわけで私の中で唯一、千回以上余裕で聴いてるアルバム「カップルズ」の話でございました。