【スティービー・ワンダー】
1996年12月22日。
「スティービー・ワンダーのベストを誕生日プレゼントでもらう」
これまで「ベスト盤でなんとかするんじゃない」と自分に叱責してきましたけど、こういう海外の昔から山ほどヒット曲があるミュージシャンの場合、ベスト盤はありがたかったりします。
スティービー・ワンダーで思い出すのは、景山民夫先生の「世間はスラップスティック」というエッセイ集の中の1本。
(ディティールの間違いはご容赦を)アメリカでスティービー・ワンダーにインタビューすることになった景山先生。渡米前にレギュラーのラジオ番組か何かで、スティービー・ワンダーからリスナープレゼントをもらってくると約束してしまう。しかしいざスティービー・ワンダーに会うと、何かくれと言える雰囲気でもないし、まわりもスタッフも取り囲んでる。
そこで景山先生が取った行動が、取材しながらそっと立ち上がって、部屋に並んでいた衣装のラックから、余っていたハンガーをこっそりネコババ(まわりのスタッフも唖然として声も出ず止められもせず)。そしてそっとまたスティービー・ワンダーの前に戻って、何事もなかったかのように取材を続行。
よし、これでなんとかリスナープレゼントをゲットしたと安心し、取材も終えた景山先生。すると最後に握手を求めてきたスティービー・ワンダーが、景山先生の耳元で一言。「そのハンガーだったら、近くの店で1ドルで売ってるよ」。
景山先生がどこまで話を作ってるのかはわかりませんが(つねづね「私は嘘はつかないが誇張しないこともない」とおっしゃってました)、お見事なエッセイでした。