
【かしぶち哲郎】彼女の時
1995年11月14日。
「仕事たっぷりで疲れ果ててるが、小説書きたくて21:00帰宅。朝4:00までラストスパートで書き上げる。タイトルは「彼女の時」にする。かしぶち哲郎さんのアルバムのパクリ」

もちろんこれ、素人時代の未発表小説です。
20人くらいの私のまわりの女の子たちのエピソードをショートストーリー仕立てにしました。素人にしてはけっこう完成度高かったんですけど、世にお出しできるものではなかった。私自身が当時すでに編集者兼書き手なので冷静な判断。
でもここで書いたエピソードは後に、自分が本当に発表した小説やショートストーリー集などに、かなり忍ばせております。合法的な盗作。
ってそんなことはどうでもよろしく、ムーンライダーズのドラマーにして、ベスト盤が出るときには3枚中1枚が「かしぶち哲郎ベスト」で発売されるほどの、耽美的で特別な位置にいらしたかしぶち哲郎さん。その85年のソロアルバムです。
ムーンライダーズでは「砂丘」「バック・シート」から「SEX」「FrouFrou」まで、「無国籍・エロティック・退廃的」といったイメージの曲を一手に引き受けてましたけど、でもいちばんライブで盛り上がり、(知的で控えめでそして高齢の)ムーンライダーズファンが唯一腕を振り上げる「スカーレットの誓い」も、かしぶち哲郎さんだったりするのが素敵。
ちなみに「ときめきに死す」(森田芳光監督・沢田研二主演)で「♡なしでは生きていけない」というワープロ画面が出るのですが、それは「スカーレットの誓い」の「薔薇がなくちゃ生きていけない」からの引用ではないのか、という話がそのうちに「忘却映画館」で登場します。
そして後年、安部公房「魔法のチョーク」を読んでいたら、「クローム・イェロー」「セルリアン・ブルー」の記述を発見、かしぶち哲郎さんは「スカーレットの誓い」の歌詞「めいろパズルはクローム・イエロー」「響く汽笛はセルリアン・ブルー」を、安部公房から引用してたのか、という話もそのうちに「忘却図書館」に登場します。
安部公房→かしぶち哲郎→森田芳光。
薔薇がなくちゃ生きていけない。