択医
1712年、儒学者の貝原益軒が自分の経験をもとに健康法についてまとめた「養生訓」。全八巻の書物ですが、益軒は第六巻の半分以上を「択医」という項目にあてています。
保養の道は自分で病気の用心をするだけでなく、また医者をよく選ばないといけない。天下にかけがえのない父母のからだ、自分のからだを庸医(ようい:やぶ医者)の手に任せるのは危険である。医者の良し悪しを知らないで、父母や子や孫の病気した時、庸医に任せるのは、親には不孝であり、子には親たるの義務を果たさぬのと同じだ。
「択医」とは、「医」(医者)を「択」(えら)ぶということ。
日々の摂生に努めることも重要ですが、それと同時に医者を選ぶことが健康にとって重要であるということが述べられています。
腫瘍の疑いが高いと診断されてから、検査まで二週間という長い時間をこのまま何もせず過ごしていいのか疑問は消えませんでした。
舌の腫瘍は進行が速く、この二週間はやはり重要な気がしました。
軟膏を塗るしかない状況で二週間じっと待つのは明らかに悔いが残りそうに思いました。しかも異変に気付いてからすでに一か月経過していました。
ウェブで検索し高度医療センターや腫瘍科がある動物病院の中で、
連れていける距離範囲の病院に目星をつけ始めました。
高度医療センターだと、病院からの紹介が必要なところがほとんど。
腫瘍科だと色々なところにあるが、やはり、手広くやっていて利益重視という雰囲気のするところが多い。
また、口コミの取捨も非常に難しい。「あそこの病院がいいそうですよ」などという又聞きの何の根拠もない口コミを回答者として堂々と書き込む人の感覚は理解できません。井戸端会議のつもりなのでしょうか、何の意味があるのでしょう。
経験に基づく事実を公開してこそ、同じような状況・境遇にある人にとって、有益なのではないでしょうか。本当に役に立つ口コミが少ないというのが、この日記を始めるきっかけになりました。
距離的にも移動可能で腫瘍科があり、ホームページと口コミから割と良心的そうなD病院と、紹介状なしでも診てくれる高度医療センターの二つに目星をつけ、ヨメと相談しました。
このまま二週間軟膏を塗り続けて待つのか。結果腫瘍じゃないかもしれないが、その可能性は低い。腫瘍の進行は速く絶対に後悔する。
しかしK病院には、今までずっと世話になっている義理があるし、子宮蓄膿症のときに助けてもらった恩もある。目星をつけた別の病院に連れていくと、結果としては裏切ることになり、K病院とは断絶せざるを得ないし、N大に予約したK先生にも迷惑をかける。
フランの命にとって重要なポイントなので真剣に話し合いました。
出した結論は、二週間待つということでした。ネットで選んだ病院がよいとは限らないリスク、日頃からK先生が絶賛している優れたN大の治療を受けられなくなるリスク。この二つのリスクの事を考え、二週間待つという決断をしました。ご察しの通り二人とも田舎者です。
二人とも考えに相違はなくすんなり同意しました。
今振り返ってみれば、あの時点の検討材料で出せる結論としては最適だったと思います。新たな未知の病院か、既知の病院から紹介された高度な技術を持つ大学病院の診療。やはり二週間待たなければいけないとしても、この決断に至るしかなかったと思っています。今になってみれば、フランにとっては間違えた決断でした。
結果として「養生訓」でいうところの、
「子には親たるの義務を果たさぬのと同じだ。」ということになってしまいました。飼い主としてフランには大変申し訳ないことをしました。大いに後悔しています。