舌癌(扁平上皮癌)で余命宣告
5月11日(木)検査入院から退院
二人でN大動物医療センターにフランを引き取りに行き、説明を受けました。厳しい話になることを想定して行きました。
まず検査中に撮影した写真をみせてくれました。事前に感じていた通り舌の表面は治りかけていましたが、問題は舌の裏でした。素人がみてわかるほど大きな腫瘍。去年の冬ごろから口が臭くなったのは、このせいだったのです。
腫瘍は大きく、フランは普通のフレブルのように軟口蓋が長くないので窒息は避けられている状況とのこと。舌の表面は歯が当たるところが潰瘍になっているが、ほぼ治りかけている。病理の結果を待つまでもなく恐らく扁平上皮癌で決まり。つまり舌癌。
腫瘍部分が舌の先端だったら手術は可能だが、真ん中から奥に出来ているので手術は無理。切除した場合、舌が丸まったり機能が無くなってご飯も水も摂ることができなくなる。舌が長いままの方が生活の質は維持される。
先生は研修医に話をふり、答えさせながら説明を進めます。舌はどれくらい切除できる?と先生、舌先三分の一ですと研修医。先端だったり顎だったら手術をするのだが、この位置ではどうしようもない。
出来ることはステロイドで腫瘍の周りの炎症を抑えて、口がふさがるのを遅くするだけ、治療法はない。
腫瘍はどんどん大きくなっていき転移もする。CTを撮ってないのでわからないのが、口の中で広がる事が多いそう。
手術をするわけではないならCTは撮っても意味がない。CTは手術をしなくてもよいという判断や、手術後に転移が無いか確認する為にするもの。たとえ肺に転移したとしても、呼吸に障害が出なければ気にしないとのこと。
フランのように手術不可の場合はCTを撮っても意味がないそうで、人間の癌治療とはだいぶ感覚が違います。
腫瘍が膨らみ口が塞がったら胃ろうで栄養補給、呼吸が苦しくなったら軟口蓋切除で気道確保。これが出来る緩和ケア。欧米では安楽死にする症例ですとのこと。
口が塞がったら、腫瘍自体を切るということもあり得るが。炎症が起きて呼吸が危うくなるので気道切開をした上で行う。たとえ切ったとしても、あくまで一過性の対処。腫瘍は一か月以内に細胞分裂がより活発になり再発してくる。しかも短頭種の手術は危険。
ここで先生はパラディアはどう?と研修医に聞き、研修医は一例みましたがあまり効くイメージではなく結局大きくなりました。と答えました。パラディアは新しい抗ガン剤とのこと。副作用が起こる可能性が高いが、効くときには相当効く可能性があるものだそうです。
先生は「犬・扁平上皮癌・パラディア」で調べるよう研修医に指示をしました。ググるのかと思いましたが、まさかそうではないと思います。
この研修医への質問の仕方で、先生はあまり抗ガン剤とか詳しくないのかなという印象を受けました。後で調べてわかったのですが、先生の担当は循環器科。そして、これも後でわかる事ですが、2017年5月現在N大に腫瘍科の先生はいないようです。
一応、腫瘍科で診療を行っている先生も一人いますが、その先生の研究者データベースをみると、循環器系の論文ばかりです。
病院のホームページで先生の専門分野を調べるのは重要だと思いました。かといって、我々はK病院からの紹介だったのでN大への流れに抗う力も知識もなかったですが。
色々言われましたが、要するにフランに治療法はないということでした。外科手術は出来ない、抗ガン剤は効かない(研修医の見た一例のみで!)。今はいじらずに、口が塞がったら、胃ろうや軟口蓋切除の緩和ケアをする。
余命は胃ろうなしだと二か月ほど。割と元気なのでもう少しいけるかも。もし、胃ろうと軟口蓋切除をすればもう少し延びるとのことでした。
そしてこの方針に変更がなければ、もうN大に来る必要はないと言われました。後はかかりつけのK病院でどうぞということでした。
K病院で診ることができないからN大動物医療センターを紹介されたのに逆に送り返されてしまいました。
病理の結果が出たら月曜か火曜に電話連絡します。もし連絡がなければ水曜にそちらから連絡下さい。とのことで、病理の検査が出るまでに他の治療法、術式がないか探してみると期待を持たせるようなことを言ってくれました。しかし、自分で水曜に連絡することになるなという気はしました。
K病院にも大学から連絡しておきますが、データを渡しておいてください、と検査データ一式と口の中の検査時の写真をメディアにコピーしてくれました。K病院に渡して下さいとの名目でしたが、それぞれご丁寧に2通ずつあり、セカンドオピニオン用で使えということだなと感じました。
まぁ、正直最後の方はほとんど聞いてませんでした、質問はありますかと言われましたが、何も聞きませんでした。
どんな闘病ブログを見ても放射線治療や抗ガン剤について記述があるのに、N大側からは一切それについて言及なし。抗ガン剤についても詳しくなさそうな印象もうけました。
なにより、フランを助けるためにどうしたらよいかについての言葉は一切ありませんでした。簡単に言えば、症例に当てはまらないから、やることはありませんとだけ。それをダラダラとしゃべっているだけ。
絶対にフランを助けるために何かしてくれる病院を見つけてやる。以前目を付けた、ここから近いD病院に、この病院を出たその足で連れて行ってやると考えていました。
動物医療の目的は患畜の命を救うというものであるはずなのに、N大動物医療センターは学術的に研究価値のある症例や過去に実績のある症例が重要でそれに当てはまらない症例については興味がない、というように感じました。大学も普通の動物病院もどちらも患畜の命を救うという目標は同じはずなのに、少なくとも治療法を模索してくれる姿勢は一切感じられませんでした。
一方、緩和としての胃ろうと軟口蓋切除については、その実績でも積み上げたいのか、やたらと勧められました。きっとそういう症例が多いのでしょう。
手術が出来ない=死ということがどうしても納得できませんでした。
こんなに元気にボール投げをしたり散歩もできていて、舌の動きのせいで食べるスピードが遅くなっていたものの食欲もあり、それ以外は何も普段と変わらない状態のフランに何もしてあげられることができず、二ヶ月後の死を待つだけというのがどうしても飲み込めませんでした。
病院外に出て、目星をつけていたD病院にN大の構内から電話しました。その時点で午前11時過ぎ。ギリギリ午前の診療には間に合うが昼の時間は手術があるそうで、あまり時間が取れないかもしれないとのこと。それなら、改めて午後来てもらった方が時間が取れるとのことで、一旦家に帰り午後の診察開始の三時に合わせて行くことにしました。
家に帰り、フランの足を洗っている時に、フランの口の周りに乾いて固まった血がべったりついているのに気付きました。検査の時の写真に映っていた、口の周りについている血がそのまま固まっていました。目やにもついたままだったので病院をでたところで拭き取ってあげていました。
N大動物医療センターは平成20年に家畜病院に病院を増築し新設されたようですが、飼い主への対応全般。なにより、検査の時についた血をこびりついたまま退院させる辺り、マインドは家畜病院のままなのだなと思いました。
腫瘍科がまともに機能していない病院の為に二週間も待ち、さらに検査待ちで一週間。合計三週間待ったこと。事前情報のなさから、この病院に賭けようという選択をしたことを後悔しました。無知は罪です。
<費用> 再診料 1520円、検査料 32510円、麻酔料 14810円
入院料 8880円 合計 57720円