トランス脂肪酸について
トランス脂肪酸についてのメモです。
マーガリンやショートニングが有名ですね。植物油脂、加工油脂と表示されているものにも多く含まれています。
私たちの生活にとても身近です。
脂肪酸の種類
脂肪酸は脂質の主要な構成要素です。脂肪および脂肪酸は人体に欠かせません。
活動のエネルギー源になります。細胞膜やホルモン、核膜などを構成します。脂溶性ビタミンの吸収を促進します。皮下脂肪として臓器や外部刺激から保護しています。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸
エネルギーとして使われやすく、体内で合成できます。
現代の食文化では過剰摂取になりやすいです。
肉、乳製品、卵黄、チョコレート、ココナッツ、パーム油などに多く含まれています。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、さらに一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、そしてトランス脂肪酸に分類されます。
● 一価不飽和脂肪酸
オメガ9系脂肪酸です。
エネルギーとして使われにくいです。常温で液体。
オリーブオイル、菜種油、アボカドなどに多く含まれています。
● 多価不飽和脂肪酸
オメガ3系とオメガ6系脂肪酸です。
体内で合成できない必須脂肪酸を含みます。
青魚、トウモロコシ油、大豆油、クルミ、えごまなどに多く含まれています。
● トランス脂肪酸
植物油などの加工の際に行われる部分水素添加により生成されます。
また、油を高温で加熱する過程においても生成されます。
マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、食用植物油脂、加工油脂と表示されているものに含まれています。
含有量は銘柄によってかなりのばらつきがあります。
牛乳や乳製品の中にも天然のトランス脂肪酸が微量含まれています。
※牛や羊などの反芻動物の体内では、胃の中の微生物の働きによって天然のトランス脂肪酸が作られています。
トランス脂肪酸の問題点
過剰に摂取することで冠動脈疾患のリスクが高まると2003年にWHO(世界保健機関)が報告しています。
近年ではアルツハイマー病など認知症の原因になるという論文も多く出されています。
人工的に生成されるトランス脂肪酸と天然に存在するトランス脂肪酸とで健康に及ぼす影響に違いがあるのか、まだ十分な研究はありません。
各国の対応
アメリカのカリフォルニア州とニューヨーク州、カナダ、シンガポール、タイ、台湾、香港ではトランス脂肪酸の食品への使用を規制しています。
デンマーク、オーストリア、フランス、イギリス、スイスでは食品中のトランス脂肪酸濃度の上限値を設定しました。中国や韓国では食品中のトランス脂肪酸濃度の表示を義務付けています。
日本の対応
日本では規制も表示義務もありません。その理由として、欧米諸国に比べて平均摂取量が少ないことが挙げられています。
WHOは、総摂取エネルギーに占めるトランス脂肪酸の割合を1%以下にするよう勧告しています。日本人は摂取量の多い上位5%でも0.70%〜0.75%だそうです。
健康に留意するならトランス脂肪酸だけを排除すればよいというわけではない、という見方もあります。飽和脂肪酸の摂取量や多種ある脂肪酸の摂取バランスが大切であると言われています。
また、加工油脂を製造している企業はこの10年の間に加工技術を改良しています。マーガリンやショートニングのトランス脂肪酸含有量は格段に減少しました。
今やトランス脂肪酸の実情と消費者が抱いているイメージは大きくかけ離れているのかもしれません。
トランス脂肪酸とどう関わっていくか
企業が努力しているからこそ、トランス脂肪酸濃度の表示を義務付ければいいのではとも思います。
そうすればしっかり努力している企業の製品を消費者は選ぶことができます。
トランス脂肪酸は、酸化による劣化や温度変化による変質を防ぐことができるという工業的な使いやすさ、そしてお菓子やケーキのサックリとした食感を生み出すなどのメリットにより利用されています。
規制するというのは、そういった恩恵を手放すことでもあります。
ファストフードや揚げ物、そして焼き菓子などがトランス脂肪酸の主要な摂取源となっています。それらからの摂取は増加しているとの報告もあるそうです。
あまりに生活に浸透しているという現状を、まず見つめるところからなのかもしれません。