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缶詰の安全性について

学術誌「エンバイロメント・リサーチ(Environmental Research)」に発表された研究報告などをもとに書きます。

ビスフェノールA

缶詰の悪影響で真っ先に挙げられるのがビスフェノールA、通称BPAです。24時間以内に缶詰食品を食べた人の尿からは、通常よりも高いビスフェノールAが検出されます。

この化学物質がいわゆる環境ホルモンとして問題視されています。

環境ホルモン、正式には外因性内分泌攪乱化学物質といいます。ホルモンとそっくりの働きをするため、正常なホルモン作用に影響を与えてしまいます。

ビスフェノールAは、女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンのアンドロゲンと似た働きをすることが知られています。よって生殖系への影響が懸念点になります。

特に、胎児が発達しているときのビスフェノールAの摂取は、問題行動(多動性や攻撃性)、思春期の乳房発達障害、肥満、糖尿病、心臓病、肝機能の変化のリスクを高める可能性がある、という報告があります。

また、ビスフェノールAへの低レベルの曝露が心疾患、糖尿病、肝酵素高値のリスク上昇と関係することを示唆した研究もあります。

米国一般成人18~74歳の1455人(男性694人、女性761人)を対象に、日常的なビスフェノールA曝露が成人の健康に及ぼす影響を調べた研究では、尿中ビスフェノールA高値と、心疾患(冠疾患、心臓発作、狭心症)、糖尿病の間に有意な関係が見られました。

各国の対応

現在、多くのメーカーが自主的にビスフェノールAの使用をやめています。成人よりも胎児や乳幼児への危険性が特に懸念されています。EUやアメリカ、中国、韓国では哺乳瓶など幼児向け食器へのビスフェノールAの使用を禁止しました。

日本では禁止事項はなく、高めの基準を設けることで対応しています。

米食品医薬品局(FDA)は2012年、食生活の中で少量を摂取する分には害はないと結論づけています。

気をつけるべき缶詰はどれ?

缶詰によって尿中ビスフェノールAの検出には差がありました。

最も関係があるという結果になったのが、缶詰の果物、野菜、パスタ、スープだったそうです。炭酸飲料などの缶入り飲料を飲んでも、尿からビスフェノールAは検出されませんでした。

そして肉や魚の缶詰の摂取についても、尿中のビスフェノールA濃度上昇とは関連づけられませんでした。しかしデータの収集法に問題があったとする指摘もあります。

酸性度の高いトマト缶、加工(加熱)時間の長いソースやシチューなどの総菜系、酸性食品で油分も多く加熱して作られるツナ缶や魚缶には特に注意が必要だという意見もあります。

ビスフェノールAの悪影響を懸念する研究があるかと思えば、一方では安全性に問題はないという見解もあります。最終的には私たちが決めることなんですね。

消費者の選択によって、メーカーや政府の対応を変えることにつながっていくかもしれません。

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