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ズワイガニが消える日

ズワイガニは、蟹好きにとって王様です。

私も蟹は大好きで、20代の頃、年末年始蟹三昧して救急のお世話になったほどのカニ好きですから、ズワイガニの大量死滅なんてニュースはスルーできません。

しかし、ただただ、ズワイガニ食べれん、ぴえん。的な感想を持ったとしても1円にもならないわけですが、せっかく経済学部に入ったのですから、その視点で考えてみたらどうなのだろうということで、今日のテーマは『ズワイガニの大量死滅』としました。

参考URL https://news.livedoor.com/article/detail/27369826/ 

 今日は、この話題から、経済学的に考えてみたいと思います。 

ニュースから感じた疑問

このニュースを読んで私が感じた疑問は次の通りです。

  • ズワイガニがそんなに死んじゃったら、今年はカニが食べられない?

  • つまり、カニが高くなる?

  • それなら蟹関連商品も高くなったり、手に入らなくなったりする? 例えば、カニ食べ放題の温泉プランやお歳暮用のカニ商品とか…

  • カニ漁をしている人たちは失業してしまうの?

  • さらに、北海道のカニ漁で栄える港が衰退する?

  • カニの死滅で生態系が変わる?

  • その影響で魚の供給が変わってしまい、魚介類の価格も変わる?

こんな事をつらつら考えてました。

浮かんだ疑問に回答をつけてみよう!

まずは自分の疑問に自分で答えてみました。

1. 「ズワイガニがそんなに死んじゃったら、今年はカニが食べられない?」

ズワイガニの死滅により、今年の漁獲量が大幅に減少し、供給不足が発生します。そのため、価格が上昇する可能性が非常に高いです。これが「供給ショック」です。供給が突然減ることで市場価格が急騰します。特に、カニは高級品であり需要の弾力性が高いため、少しの供給減少でも価格に大きな影響を与えます。その結果、ズワイガニが手に入りにくくなり、消費者の選択肢も限られるでしょう。

  • 補足1需要の弾力性とは、価格が変動した際に需要がどれだけ変わるかを示す指標です。価格が上がっても需要があまり変わらない場合は「弾力性が低い」、価格が少し上がっただけで需要が大きく変わる場合は「弾力性が高い」と言います。

2. 「蟹関連商品が高くなったり失くなったりする?」

ズワイガニを使った商品、例えばお歳暮用のカニやカニ食べ放題のプランは、カニが手に入りにくくなると価格が上がるか、商品自体が市場から消える可能性があります。これは「原材料コストの上昇による製品価格の上昇(コストプッシュインフレーション)」の典型例です。また、企業がコストを転嫁できない場合、一時的に取り扱いを中止する可能性も考えられます。

3. 「カニ漁をしている人が失業する?」

ズワイガニ漁の禁止は、漁師やその家族の生計に大きな影響を与えます。地域依存型の産業で主要な収入源が失われると、その影響は周囲の経済全体に波及します。これを「地域経済の連鎖的影響」と呼びます。漁業の減少は、水産加工業や輸送業にも影響を与え、地域全体が不況に陥る可能性があります。

  • 補足3:米アラスカ州セントポールはズワイガニ漁業に依存しており、漁業閉鎖後、文化的・経済的・社会的緊急事態を宣言しました。(出典: NOAA

4. 「港が廃れる?ロシア人が来なくなって宿屋や食堂がダメになる?」

北海道のカニ漁は、ロシアとの取引に依存しているという話を聞いたことがありました。しかし、検索しても具体的なデータやニュースを見つけることができませんでした。このような情報収集スキルは今後必要になるため、鍛えたいと思いました。

5. 「生態系が変わって魚の供給に影響が出る?」

ズワイガニが死滅すると、食物連鎖が崩れ、他の海洋生物にも影響が及びます。例えば、ズワイガニを捕食する魚や同じエサを利用する生物の間で競争が激化することが考えられます。さらに、ズワイガニの漁業停止が他の魚種に依存を強め、乱獲や価格変動を引き起こす可能性もあります。

  • 補足4:太平洋タラがズワイガニの天敵であることが明らかになっています。これも生態系の一環として興味深いです。


長期的な影響と適応策

短期的な影響だけでなく、長期的な視点からも考えるべきです。気候変動や海洋温暖化の影響は一時的な問題ではなく、環境の持続的な変化の一部です。この変化は、漁業や地域経済の構造的な変革を促す可能性があります。地域は観光業や他の産業にシフトする必要が出てくるかもしれません。


ズワイガニの大量死滅、というのは蟹食べれんじゃん、ぴえん。なんてそんな甘ったれた感想で済まないくらいの影響を起こしていたのですね。

ズワイガニの大量死滅はいつ起こったか。

もう少し気になったことを深掘っていこうと思います。

記事から、ズワイガニの大量死滅は2021年の出来事だとわかります。

とはいえ、1次情報をあたろうと思い米海洋大気局(NOAA)の関連記事をいくつか読みました。

その中の記事「ベーリング海の生態系の変化によるズワイガニの減少」

https://www.fisheries.noaa.gov/feature-story/snow-crab-collapse-due-ecological-shift-bering-sea

で、ズワイガニは2018年から大きく減少していたことがわかります。そして、この大減少は地球温暖化による海水温の上昇が原因とされていますが、実はそれよりもズワイガニの苦蟹病が致命的な原因であることが書かれています。

とはいえ、この苦蟹病は海水温上昇によって生息地域が北上し、その過程で弱ったズワイガニが罹患したためかもしれないので、そうなると地球温暖化が原因、というのはまぁたしかにそうだな、と思わなくもないです。

他の原因として、海水温の上昇により、蟹の代謝スピードが上がり、消費カロリーが上がったため、餌が足りなくなってしまって、そのため大量餓死が起こったことも原因のひとつなのだとか。

つまり、原因は一つではなく、あれこれいろんな原因が同時多発で起こり、大量死滅したというのが本当のところのようです。

それにしても、ズワイガニの天敵が太平洋タラというのは今回初めて知りました。何にしても興味を持って調べてみると面白い発見があるものです。

ところで、この記事では、近年の調査で海水温の回帰が確認されていると書かれています。蟹の幼生が大きくなるのにはまだ数年かかるようですが、ズワイガニをまた思いっきり食べられる日も近いのかもしれません。

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