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成功するために必要なのは根拠のない自信⁉️

今年3月に美術教師を定年退職した。

小学校・中学校・高校と人生のほとんど半分を学校の美術教師+学級担任として過ごした。
いろいろな生徒・保護者と接した中で、良い意味で、特に印象深い生徒としてT君がいる。

T君は、高校在学中、軽音楽部に所属しボーカルをやっていた。細身で、けっこうイケメンのナルシストだった。  
学園祭では、体育館でライブをし、マイクをもって歌うその姿は意外なことに、とても真摯だった。

と、言うのは、美術の授業では、毎回の遅刻。課題も未提出。(成績評価に悩まされたなー)

ズボンは腰ばき(ズボンを腰ばきすると、当然、その裾が擦れて破れてくる。なんどもその破れを繕ってあげたよねー。きっと、T君は忘れているだろうけど…)、ヨレヨレで黄ばんだシャツのボタンも上から3つくらい外してはだけさせ、生徒指導教員から常に注意を受けるタイプだった。 

おまけに、定期テストは赤点+出席不足、学年末は毎年追認指導を受けて、なんとか進級する有り様だった。

美術の授業も出席時数不足、課題未提出。その集中力のなさから日本の美大入試に必要な写実デッサンはまったく描けなかった。

でも、そんなT君は、授業で会うたびに、

アーティストはカッコイイすよねー。
先生、オレさ、画家になりたいんすよねー。

と言い続けて、三年生の後半になって東京芸大の油画に進学すると言ってきた。

その時点で、模擬試験では芸大、東京五美術大には当然、学力不足の判定。実技はもちろん全く✖️。
T君の現役合格は絶望的だった。

わたしは、T君のグローバルに活躍しそうな感性と適正から海外の美術大学に進学することを進めた。

T君は、その年、なんとか高校を卒業したものの、予想通り大学入試では結果は出ずに、近くの美術予備校で浪人をすることになった。 

浪人をしながら、アルバイト+バンド活動もして、美術予備校の先生から、美術に専念するように言われても、全く止めずにマイペースを貫いていた。  

幸いに家庭の理解があったことが、救いだった。

時々、高校に遊びに来て、「〇〇参上」と自分の名前を高校の掲示板に落書きを残し、存在をアピールして帰った。


そんなT君が、なんと!!!4浪目の時に村上隆主催のGEISAIで受賞し、ギャラリーがつき、大学合格する前にめでたくアーティストデビューしたのだった。

そして、なんとか東京5美大の1つに入学し、高校時代から言い続けた東京芸大の大学院に進学を果たした。   

上野の東京芸大美術館にT君の芸大院卒業展を見に行き、よくぞここまで心折れずに頑張ったなと、安堵のため息をついた。

わたしも、予備校の先生も、当時のT君から、今の姿を予想することはできなかった。
T君だけが、未来の自分の姿を見つめて自分を信じた。信じ続けることが努力につながり、自分の未来を切り開いた。

ギャラリーが付き、個展や海外で作品が売れて、グランプリ受賞した絵画がファブリックスペースに展示される画家になった。

現在、画家&ミュージシャンとして活躍する様子をT君のInstagramで見ながら、わたしは楽しみに、影ながらこっそり応援している。

未来の可能を強く信じることができる根拠のない自信も才能の1つだと、T君の活躍を見ていて、そう思う。

誰にでもある自分の可能性を切り開くのは、自分はできると思い込める、根拠のない自信だ。


#オバサト63 #art#自信

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