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映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督日記:125 8月の農場

2023/8/29 晴天。朝4時30分に家を出発して二本松の農場まで撮影に向かう。今年3度目の農場撮影だ。
前回は7/24に行ったのだが、1ヶ月経つと夜明けの様子も随分変わる。前回は東北自動車道に乗った頃に朝焼けを真正面に受けて眩しかったが、今回はだいぶ西から太陽がお出ましになったので運転しやすい。しかし、福島県に入る8時半頃にはクーラーが効かないほど猛烈な暑さになる。こんな強烈な太陽の力を電力に変えてこそ現代人なのだと思う。

今回の撮影の目玉は、この農場の主力商品であるブドウの初収穫だ。映画撮影時は小指の太さ程度だった幹は大人の手首くらいに大きくなった。初収穫はクイーンニーナと巨峰。塚田農場長、菅野さんと一緒に記念すべき初もの収穫へいざ!

たいへんよくできました。

先ずはクイーンニーナの虫除けの紙袋を破いてみる。品のいい赤紫色に染まった房が姿を現す。塚田さん曰く「上出来!Aランク」とのこと。自分までもがうれしくなる。質のいいブドウを実らせるには虫との闘い、草との闘い、肥料や農薬に気を遣い、獣害の恐れもありつつ、うまく養分を房に届けなければならない。その成果がこんなに美しい姿で現れるなんて感動だ。巨峰も素晴らしい出来とのことだった。

うれしそうなお二方

初ものは1本の樹に3~4房実らせたのだが、来年は30~50房実らせるそうだ。来年の今頃は立派なブドウ園になっていることだろう。

巨峰

この日獲れたクイーンニーナ、巨峰それぞれ4房は、映画をご覧になって早々と予約してくださったお客様や日頃からお世話になっている方たちにお届けするとのこと。きっと喜んでいただけると思う。

記念すべきブドウ初収穫のあとは、5月から農場で飼っている2頭の牛たちにご挨拶。しっかり育っていてこちらもうれしい。牛たちはとにかく黙々と食べる。ずーっと草を食べている。面白いことにソーラーパネルの影の草から食べ始める。この酷暑、牛たちもパネルの影がありがたいのだろう。

撮影に行った日の昼は3人で恒例になっているラーメンランチ。二本松はラーメンの名店が多いのだが、中でも我々が気に入っているのは”麺屋しん蔵”。塚田さんは塩味、自分は山形鶏中華、菅野さんは汁なし坦々麺を頼んだ。ここは4~5種類のラーメンがあるのだが、全て麺もトッピングも違っていて、それぞれがものすごく旨い!

めちゃうま!

満腹状態で塚田さんと菅野さんに別れを告げて自分は東へ移動。福島第一原発が見える浪江町の請戸海岸に向かった。
山道を70km、1時間半で到着した請戸漁港の堤防に登ると、汚染水の放出が始まった原発が水煙と砂煙の向こうに見える。かつては集落だった請戸地区は更地状態ではあるが、映画を撮っていた頃と少し何かが違っている。具体的にはわからないが、何かが始まろうとしていることを感じる。
カメラを回す前にこの海岸で亡くなられた方々に手を合わせる。

波も風も強い日だった

この場所で乗用車を見るのは珍しいが、2台のクルマが自分の近くに停まり、2組の家族が降りてきた。小学校低学年の子どもが2人いる。
「あれがたぶん原発」と言っている。旅行がてら見物に来たのだろう。汚染水の放出が広く社会に認知されてると実感する。

請戸漁港

カメラを背後に向け、原発から最も近い漁港、請戸漁港を撮る。漁師さんたちに何の説明もなく、理解も得ないまま汚染水を放出した政府と東電。午前中の農場とは真逆の暗澹たる気分になる。この映画をもっともっと広めなければならない。自分にできることを続けていこうと肝に命じて帰路についた。

東京・杉並区の劇場・Morc阿佐ヶ谷 公開最終週
9月9日(土)、10日(日) 上映開始10:30両日とも自分は舞台挨拶に登壇します。
劇場でお会いしましょう!
★Morc阿佐ヶ谷 Tel 03-5327-3725
https://www.morc-asagaya.com

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