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象の置物

あまり自分から新しいことにチャレンジする人間ではなかった。
一人暮らしも、引越も、飛行機に乗ったのも、すべて会社の命令で転勤・出張をしなければならなくなった際に経験した。
仕方なしでだ。

もうけっこう前になるが、会社の命令でタイに行くことになった。
およそ4週間の長期出張だ。
もちろん初めての海外で、わからないことだらけ。
行く前は非常におびえていた。
知らない土地、知らない言葉、犯罪に対する不安などなど、電車に乗れるか?なんてことまで心配していた。
ただ慣れとは恐ろしい。
最初の2週間が終わるころにはホテル生活を満喫していた。
近所のスーパーでの買い物も問題なくこなし、キッチンがあるホテルだったので料理するぐらいまでになっていた。
ただ、平日は仕事があるからいいが、土日がつまらない。
サブスクで映画を見るのにも飽きて、現地の本屋で日本の書籍を購入したのだが、すぐ読み終わってしまった。
飽きたのだ。
そして油断していた。

退屈というのは恐ろしい。
一人旅をすることにした。
旅といっても一日で帰ってこれるレベルの距離、バンコクから世界遺産であるアユタヤ遺跡までの列車の旅。

片道数十円の窓ガラスの無い列車に揺られて到着したアユタヤの地。
駅に着くと、トゥクトゥクという三輪タクシーの運ちゃんが「チャイニー?コリア?ジャパニー?」と聞いてくる。
ジャパニーと答えると、メモ帳をめくって「キュウデン・アンナイ・ニセンバーツ」と問いかけてきた。
バーツは大体×3円なのだ、6000円。。。高い。
「センバーツ!!」というと、おっちゃんは「OK!!OK!!」だって。
初めての値切りに成功!!俺も海外慣れしてきたなぁと。
おっちゃんの三輪タクシーに乗って遺跡をめぐり、観光を満喫。
途中よった遺跡で、500円玉をもった二人組が近づいてきた。
「コレナンバーツ?ナンバーツ?」と日本語で聞いてくる?
えーと、と悩んでいると「リョウガエシテ!!」と。
そこで財布を出したのがまずかった。。「コノイロノオカネ」といって紙幣を抜き取られた。
ふざけんなって止めようとしたが、「アリガトオレイオレイ」と多分安物の象の人形を押し付けられ、さらに紙幣を抜かれた。
おい!!って叫ぼうとすると「アリガトアリガト」とダッシュで逃げる。
やられた。
非常にマイルドな強盗だった。
さっきまでの楽しい気持ちがむかつく気持ちにすげかわり、意気消沈でおっちゃんにステーションにGOと指示を出し、旅は終了した。
ちなみに観光案内代金、相場は500バーツなんですって!!やられた。

憎々しい象の置物は今でもトイレに飾ってある。
やられたとはいえ、消極的な自分の大冒険の証だから。

皆さんも海外行くときは気をつけなはれや!!

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