いとこのジョアンナ1

二人がマッチしたその日から、二人が最初のバレンタインデーを迎えるまでのメッセージ履歴を、英語のニュアンスを残して和訳していきます。二人の了解は得ています。

《新しいマッチ!なにか、話しかけてみよう!》
「よーそこの可愛いこちゃん!調子どう?」 

「ははは、そこそこ。そこのハンサム君の調子は?」

「まぁまぁかな。マッチ度80%の女と話してるって感じ。」
 「妥当だね。」 

「私も、 "イケメン、金持ち、スポーツ万能、頭いい、床上手"ってプロフィールに書いてある男と話してる筈なんだけど、今ひとつときめいてないんだよね。」
「まったくもって、ときめいてない。」

 「それは多分、君がその男の本質を、本気で楽しもうとしてないからじゃないかな?」

 「ふーん。こんなデタラメなプロフィールの男が、マッチングアプリで出会った女と、"本質"を共有して楽しもうとしてるなんて思えないけどな。」
「その男の言う"本質"って、本当のオーガズムがなんちゃらかんちゃらとか、ベラベラベラベラ言ってる、怪しい汗だくヨガ・セックスに行き着くんじゃない?」 

「うーん…それは1億ドル級の質問だな。」
 「さて、ジョークはこのへんにして。」 
「俺はケン。君はなかなか…クリティカルだね。」

 「ありがとう。クリティカルは私の法的に認められたミドルネームなの。」
 「名前はジョアンナ。よろしく。」

《2018年6月13日》
「おはよう。」
「昨日俺達って、どこですれ違ったんだろう?」 「もしかして、今も君は近くにいる?このぎゅうぎゅうの電車の中に?」



 「おはよう。」
「そこにはいないよ。今起きたから。」
「日本の朝の電車ってすごいらしいね。写真見たことあるけど、地獄だね。私は絶対無理。」

「ずいぶん起きるのが遅いんだね。」
「って事は、観光で来てるの?」
「それとも、向上心のない大学生?」 

「観光。」
「君こそ向上心のない大学生でしょ?こんなアプリ開いてないで、ちゃんと教授の話し聞きなよ。」
「それとも私に、『男の子の無意識にも女の子の無意識にも父親の巨根が潜在している』みたいな馬鹿げた話しをしてほしいの?」 

「はは、確かに君が教壇に立つならフロイトだって、くそみたいなロボトミーの話しだって、なんだって面白くなるよ笑 君とマッチした時、俺は前頭葉がカミナリに打たれた様な感じだったんだもん。」
「まぁ何にしろ、今は図書館で時間潰してるからいいんだ。」
「でもさ、ここでマッチしても、それってやっぱり大学内のコなのかな?」

「へー、私とマッチしたのにまだスワイプしてんだ?」

「え、なんかこわいよ。ただのクソつまんないジョークだよ。」



「怒ってんの?それとも街に繰り出して、東京にいる美女のアベレージを底上げするのに勤しんでるところ?」

「一緒。私もジョーク。」
 「はは、正解!そーゆーかわいいジョーク、悪くないよ。」
「その台詞、好きだな。」 

「みんな結局最後には好きって言うんだよな。じゃ、汗だくヨガ・セックス、試してみる?笑」

《2018年6月14日》
「うーん。ないね。ぜったい。」
「笑」

「おーけー。」
「そーいやさ、君はいつまで滞在してるの?」
「会ってみよーよ。国に帰る前に。最高の思い出にするって約束するよ!」

「へー。そーやって日本に来る外人をハントしてるってわけ?」
「でも、私、明日帰るんだ。だから今回は無理だな。会ったら楽しくなっただろうけど。」

「へー。そーやって、旅先の男にそれっぽい素振りをみせて夢中にさせて帰ってくってわけね?」

「うん、そんな感じ笑」

「ねぇ、LINEのアカウントもってる?」

「うん。」

「———」
「これ、俺のID」

《2018年6月14日(木)》
「よ!」
「半自動的に右スワイプしてたら、たまたま君とマッチした、ただのキレイな女の子だよ。」

「よ!」
「あー、もしもマッチングアプリで出会った男にメッセージをしたつもりなら、これであってるよ。」
「君はぁ…ごめん、いつマッチしたコか思い出せないわ。」

「ははっ、だまれ笑」
「君のプロフィール写真こそ、クソ退屈でガッカリだよ。」
「何、その後ろのちっちゃい建物?」

「モンサンミッシェルだよ。フランスの外れにあるでっかい教会みたいな…城みたいなヤツ。と、それを食べてる俺。」

「あー、それ…食べてるのね。オッケー。」

「君のプロフィール写真は…めっちゃ魅力的。」
「落ち着いてて、飾らない。だけど根暗ってわけじゃない。その口達者な明るさも感じ取れる。何ていうのかな…ミステリアス?」

「ははっ、それで次は?モデルみたいって言うの?🤷‍♂️」
「そんな事よりさ、何だって、国に帰る私とこんな所で話してるわけ?」

「え?どーゆー意味?」

「だってさ、マッチしたのに、会えないんだよ?それで私は、母国に帰るんだよ。」
「意味、ないんじゃない?」

「あー、確かに。」
「でも、君と話してると面白いし。意味はあると思うけどな、多分。」
「君が同じ地域で息をしている男としか話しをしない系の女なら、もう話せないね。」

「うーん、いつもはその手の女なんだけど、君は特別にしてあげよう😎」

「あー、ありがとうって言うべき?😅」
「じゃあ、理由ね…」
「実は俺達、いとこだったんだよね。うん!俺達、いとこなんだよ!」
「そーすればさ、汗だくセックスができなくても、会える距離にいなくても、wi-fiがある限り、話す理由がある。どー思う?」

「いいねそれ!君のそーゆーセンス、マジで好きだよ私!」
「ママに言ってやんないと。何で日本にイトコがいる事秘密にしてたの?って笑」

「はは、そうだね。俺、ずっと欲しかったんだー、同い歳のイトコ。しかも外国にいるって、ちょーカッコよくね。ちがう?」

「間違いないね。自慢していいよ。俺のいとこのジョアンナって。」

「あー、ありがとうって言うべき?🙄」
「そろそろ寝るわ。明日、最後まで楽しんでね。」
「あと、気を付けて帰って。おやすみ😴」

「もち!」
「おやすみ、私のいとこ😘 」
「いい夢みてね!」

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