火事装束

東京国立博物館に着物の展覧会を見に行きました。豪華絢爛、目も眩むような綾錦、侘び寂びなんてどこの話?華やかな着物っていいですね。江戸時代ぜいたく品が禁じられた時には裏地を思い切り派手にしたり、長襦袢に精緻な刺繍をしたり、おしゃれしたい!目立ちたい!という気持ちが、物言わぬ着物から伝わってきます。そんな注文に応える呉服屋、機屋、染物屋、帯屋、デザイナー、お針子、刺繍職人等々、職人技について展示があっても楽しかっただろうと思います。(二、三着物の柄の見本帖の展示がありました)

色鮮やかな数々の着物の中にあって江戸時代町火消しの火事装束を展示する区画にはちょっと違う空気が。木綿地を何枚も重ねて太い糸で刺し子を施した半纏が何枚も出品されていました。表は藍一色、裏には龍虎、鬼など、様々な勇ましい図柄を大胆に染めてあります。現場では藍を表に着て水をたっぷりかぶって(重たそう!)火の中に飛び込み、延焼を防ぐために周りの建物を壊していく。消火活動が終わったら半纏の柄を見せるため、裏返しに着て凱旋したそうです。図柄だけ見ても圧倒されますが、一針一針分厚い木綿に刺し子を施す手間を想像するとまたクラクラしてきます。一枚仕立てるのにどれだけの時間と人手が必要だったのでしょう。針と糸はどれぐらいの太さだったのか、工賃は高かったのか?想像は尽きません。現代の消防団員も揃いの法被を着ていますが、町火消しの伝統を受け継いでいる印なのでしょう。

分厚いクロス装の図録は3,000円。お買い得です。欲を言えば、印刷の精度をもっと上げて5,000円でも良かったと思います。末永く手元に置きたいものなので。



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