夢と、夢を叶える手段は全く別のもの
あるところに「研修講師になりたい」という夢をもったエンジニアのAさんという方がいました。Aさんは休みの日もコーチングの講座に出たり本を読んだり、いつか人の成長に関わる仕事がしたいと思うようになりました。
しかし彼はエンジニア。しかも当時いた会社は他の会社と吸収合併されてしまい、子会社のような扱いに。とても親会社の人事部には行けない状況です。
「自分はエンジニアだし子会社みたいなもんだし、研修講師なんてなれっこないよな」、そう自分に言い聞かせます。
Aさんは信頼する上司と飲みに行くと「僕、本当は研修の仕事がしたいんですよ。いつか、会社のみんなの成長に関わる仕事がしたいんです・・」とぽろりとこぼしたりすることもありました。
その後、Aさんのいる会社はさらに吸収合併。
3つの異なる企業が1つになるわけですから、当然現場は大混乱。そこで「もうこれからは新しい会社として、新しいルールを作ろう」という機運が生まれます。
スクラップアンドビルドで、社内の大改革が行われます。そこにアドバイザーとしてAさんの上司が呼ばれ「新しい人事部の教育係は誰がいいか?」と上層部に聞かれます。そのときAさんの上司は「そういえばAさん、研修講師の仕事したいっていつか飲み会で言ってたよな」と思い出し「Aさんが良いと思います」と推薦。
なんとAさんはエンジニア+子会社のような立場でありながら、ちょうど会社が再編されるタイミングだったこと・夢を周りの人に話していたことにより、念願の研修の仕事をすることになったのでした。
私たちはしばしば、夢と、夢を叶える手段をセットに考えがちです。
例えば「立派な家を建てて(夢を叶える手段)、家族を幸せにする(夢)」など。そしてその手段が難しくなったとき、しばしば夢の実現が難しいと思い込んでしまいます。
立派な家を建てるのは難しい状況になったら「自分には家族を幸せに出来ない」となって落ち込んでしまったり、という場面をよくテレビなんかでは見ます。
でも家族を幸せにする方法は、立派な家を建てることだけではありません。旅行に行って思い出を作ったり、あるいは家族のやりたいことを応援をする、という方法だってあるかもしれません。
私などはよく「こうなりたい!」と思ったら「こうやってこうすればなれる」と筋道を立てたりします。
以前紙の本を出版したいという夢があり、出版社に企画書を30社送りつけるという手段に出ました。結果は惨敗。「私はもう紙の本は出版できないんだ」と思い込んだものです。
だけど先ほどのAさんのように、一見難しそうな夢であっても天の計らいから自分の想像以上のことが起こる可能性はあります。
普通の人なら「研修講師になるには会社を辞めるしかない!」などとなりそうですが、彼は夢を叶える手段を空白にしておくことで、社内講師という道が拓かれました。
一説によると夢を実現する方法は5万通りあると言われています。
「これができない!もう私の夢は終わりだ!」となるのではなく「これができない・・でも○○するのが私の夢なんだよなあ」と、あえてそのままにすることで、もしかしたら動くことが、あるのかもしれません。