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鎌倉さんぽ部 古都トコトコ記 ー観音様と大仏様の巻ー

 9・18メートルの観音様と11メートルの阿弥陀如来様、もしもこのお二方が歩いたらほんの十数歩の距離であろう、そんなスポットが鎌倉市の長谷にあります。
 観音様は長谷観音と親しみを込めて呼ばれる十一面観音菩薩像で、由比ヶ浜を見下ろす山の斜面に位置する長谷寺にいらっしゃいます。創建は鎌倉時代のずっと前736年と言われる、鎌倉でも有数の古寺です。
 「花の寺」と称される長谷寺はいつ行ってもその季節を感じさせる花が咲いており、特に山の斜面を埋め尽くす紫陽花の季節と、ライトアップに映える紅葉の季節は圧巻です。また、見晴台から眺める鎌倉の街と大きく広がる海、そして頭上に広がる大きな空は私たちに自然のもっている“人を癒す力”を感じさせてくれます。

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 私は季節の花と風景を楽しみに長谷寺に来るのですが、もう一つの楽しみは境内にあるレストラン「海光庵」でのランチです。
 「海光庵」は大きな窓から光いっぱいの美しい景観を楽しめる展望レストランで、この展望だけでも素敵なのに、どのお料理も丁寧に作られているのが感じられ、とってもおいしいのです。(しかもお値段もリーズナブル)
 鎌倉には素敵なレストランが数多くあるのですが、このレストランは私のお勧めレストランのひとつです。

 一方、長谷寺から私の足で歩いて4~5分の場所にある高徳院、ここに大空の下に瞑目される国宝の阿弥陀如来像(大仏様)がおられます。
 「鎌倉大仏」と鎌倉のシンボルともなっている大仏様は、与謝野晶子の歌に「美男におわす」と詠まれたやさしいお顔です。元々は大仏殿に安置されていたそうなのですが、大仏殿は度重なる自然災害で倒壊し1369年以降は露座となり今に至っています。
 大仏様の体内には入ることができます(変更になっている場合もありますのでお出かけの際は事前にご確認ください)。

 以前、鎌倉文学館で夏目漱石の手書きの手紙や原稿を見た時、鎌倉に滞在しているお嬢さんへの手紙の返信に「お父様はまだ大仏様の体内に入ったことはありませんが、良い体験をしましたね。」といった内容の文章を見つけ、明治のころから体内に入れたのだなあ、漱石はその後大仏様の体内に入ったのかしらと思い、なぜか漱石を身近に感じ感動しました。
 高徳院はただ大仏様が座っているだけのお寺なのですが(高徳院の住職様ごめんなさい)、時々大仏様に会いたくなってしまいます。
 大仏様を見に来た方は、ただ有名な大きな仏像だと思って帰って行く人も多いと思うのですが、私は大きな意シンボル味があると感じています。
 まず大仏様の中は空洞、からっぽで「私」というものがありません。そして頭にはよく鳥がとまっています。
 インドの聖者ラーマクリシュナは「神を掴んだ人の頭には鳥がとまるんだよ。」とおっしゃっていました。「私」が消えている証拠なのだそうです。
 大勢の観光客で込み合う境内の中、瞑目する大仏様に気持ちを合せると周囲のうるささから離れ、中心が定まってくるように感じます。
 大仏様のその魅力が私を時々呼び寄せるのだと思います。
 四季折々の花の便りを聞くたびに、鎌倉の自然を満喫せんと散策を楽しむ日々、私は観音様と大仏様に、私たち人間が愚かな選択をすることなく、いつまでもこの自然が守られますようにと願うのです。

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