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鎌倉Topics 鎌倉能舞台

 江ノ電の長谷駅から、大仏さまへと続く道。
 この道を長谷寺を過ぎ、もうすこし歩いていくと、左手に見える緑の森の方に向かってゆるやかに登っていく道があります。その道の途中に鎌倉能舞台は静かに建っています。

 鎌倉能舞台は、昭和45年(1970年)日本の伝統文化「能楽」(ユネス
コの世界無形文化遺産)の振興と普及を目的として、故・中森晶三氏によっ
て創設されました。中森氏は鎌倉に在住されていた観世流能楽師(重要無形文化財総合指定保持者)であり、神奈川文化賞などを受賞され、鎌倉薪能の創設にもご尽力された方です。
 ここでは定期公演「能を知る会 」を開催するほか、能楽博物館として舞台・能面・能装束などが展示公開されています。また、鎌倉薪能は昭和34年10月10 日に第一回が開催されて以来、昨年で58回を迎えています。
 現在は、ご子息である中森貫太氏が、主催公演である「能を知る会」の舞台や、あらゆる世代の方々に向けて公演や講演、また次代を担う子どもたち向けの鑑賞教室をなど、さまざまな活動を行っていらっしゃいます。

 鎌倉能舞台へ伺うことになったのは、エッセンシャルライフ・コンサルティングトレーニング(ELC)レベル2パート3のコースのためでした。

 観光客でにぎわうお店が立ちならび、バスも通るメイン通りから、一戸建ての住宅が建ちならぶ小道に一歩入っただけで、どことなく空気が変わっていくのを感じます。ゆっくり坂を登っていくと、さらに静けさが増していくようです。
 そして、5分も歩くと右手に竹が植えられている駐車場が見えてきます。駐車場の手前にある大きな重い扉を開けると、能舞台へ続く入り口と二階の稽古場へと上がっていく階段が見えるのです。

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 稽古場に入れていただくと、そこには神棚が祀ってあり、大切に整えられ、心遣いがいきとどいた空間には、凛とした静けさと温かみがありました。

 「どんなワークショップなのですか?」
 能舞台のスタッフの女性の問いかけに「本質を生きることを学ぶコースです」と、わたしは答えました。

 「わたしたちの内側に、すでにある美しい本質。欠くことのできない質で
ある愛や喜び、慈悲、信頼などにハートを通してつながり、自分が誰であるかを学ぶコースです。
 わたしたちが表層の人格、思考や怒りや悲しみ、恐れなどの感情の層も超
えて、本質を強みや才能として表現し、日常にもたらすことのできる5つの鍵があるのです。
 今日は、その応用編、アドバンスにあたる最後のコースなのです。
 ハートにつながることで、本質や自分自身の中心や空(くう)とも呼ばれている源につながること。ほかの人や、樹や動物や自然などともひとつであることも、ハート瞑想を通して深めていくことができます」

 すると、その女性は「それは能にも通ずるものがありますね」とおっしゃってくださいました。

 「能は面をかける役もありますが、面をかけずに舞うものもあります。
 面があったとしても表情が変えられるわけではありません。けれども、身体の姿勢や動きを使い、面の角度などで、謡いとともに感情を表現していくのです。
 自然やまわりのものとの一体感を感じる感性や、人とのつながりを感じられる感受性などは、能の舞を舞うためにはかかせないものです。演目の登場人物には、神仏から草木の霊などもありますし、人間らしい親の愛や嫉妬などの感情を題材にした演目もたくさんあります。
 日本人であるわたしたちには、あらゆるものを感じとることができる感性があるのだと思います。
 能は今の時代にこそ、必要なもの。先代がこれからの時代を見通して、この能舞台を建てたことのすごさをあらためて、今、感じています…」

 まだまだお話しを聴いていたい気持ちでいっぱいでしたが、コース参加者の方の声が入り口の方から聞こえてきました。
 「つい、能について話しはじめると止まらなくなってしまって…」と、その女性の方はすこし照れながらも、とてもうれしそうな笑顔で話してくださいました。

 ユニティインスティチュートのリーラ、プラサード、アルヴィナが伝えているハートのスペース。気づきを拡げ、そこにあるものを含んでいく感覚。
 ハートのスペースからなにかがあふれ、言葉という音になっていく感覚。
 「日本人はシェアのときに手をあげることはすくないけれど、深いところでつながっているワンネスの感覚がすぐに起こる。言葉を超えたところで感じることができる繊細さや感受性が、日本人はとても豊かだと感じます。そして、これはとてもすばらしいギフトです」と、リーラが話してくれたことがあります。

 能舞台における空間の美。
 能楽師の空(くう)から生まれるクリエイティビティ。
 能楽師、舞台空間と観客の意識の共有から生まれる一体感。

 ハートのスペース。
 ハートのシンクロニシティ。

 能を味わうことは、ハートをも理解することになることでしょう。
                                                                                       川島りか 記

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