川原浩平

金沢美術工芸大学卒業→→うさチャマ団子

川原浩平

金沢美術工芸大学卒業→→うさチャマ団子

記事一覧

アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』レポート (2020年度金沢美術工芸大学「芸術と批評」担当教員:同大学教授高橋明…

 本稿は、アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』(ちくま学芸文庫、合田正人・小野浩太郎訳、2015年)を用いた2020年度の講義「芸術と批評」(担当教員:金沢美術…

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1年前
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【May not remember well.】イソムラミキGEISAI#22出展作品に寄せて

 2023年4月30日開催のGEISAI#22に美術作家イソムラミキが出展する【May not remember well.】は、日常風景をスマートフォンで撮影し、そこに写っている人物の顔や、その場…

川原浩平
1年前
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《君は僕に似ている》

 本作は縦√2m、横1mのパネルを二つ並べたものです。このうち一枚の短辺と長辺の比が1:√2であることは言うまでもありませんが、2枚を隙間なく並べた時の作品全体の…

川原浩平
1年前
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星の小論文

 2022年は一貫して、正五角形およびその頂点を結んだ五芒星に含まれる、黄金比をはじめとした幾何学的な要素をモチーフとして、その図形の特徴である部分と全体の相似関係…

川原浩平
1年前
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「幻影制作術」としての

 わたしは以前「表現について」というテキストで「情報」を意味する"information"という語を持ち出したのですが、今回はその背景にあった「フォーム」ついて、谷川渥『美…

川原浩平
3年前
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〈新たなる傷つきし者〉と破壊的可塑性

 本稿はフランスの哲学者カトリーヌ・マラブー(1959〜)の書籍『新たなる傷つきし者: フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』(平野徹 訳、河出書房新社、2016…

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3年前
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令和二年度愛知県立芸術大学卒業・修了制作展:イソムラミキ作品に寄せて「#25歳女性の場合」

 西洋占星術では、2020年12月22日に所有が尊ばれた従来の「土の時代」から、共有に重きを置く「風の時代」に移ったとされてる⑴。こうした星々の節目以前に、個人所有の住…

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3年前
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「表現」について

 本稿は、金沢美術工芸大学2019年度の講義「美学」の期末レポートに加筆修正を加えたものである。  佐々木健一『美学辞典』(東京大学出版会、1995年)によれば、「表現」…

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3年前
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アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』レポート (2020年度金沢美術工芸大学「芸術と批評」担当教員:同大学教授高橋明彦)

アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』レポート (2020年度金沢美術工芸大学「芸術と批評」担当教員:同大学教授高橋明彦)

 本稿は、アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』(ちくま学芸文庫、合田正人・小野浩太郎訳、2015年)を用いた2020年度の講義「芸術と批評」(担当教員:金沢美術工芸大学教授 高橋明彦)の内容をまとめたものである。
 20世紀フランスを代表する哲学者ベルクソン(1859-1941)は、デカルト以来の心身二元論を時間論に展開した上で、「自由はいかにして可能か」という問題に取り組んだ。ベルクソン

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【May not remember well.】イソムラミキGEISAI#22出展作品に寄せて

【May not remember well.】イソムラミキGEISAI#22出展作品に寄せて

 2023年4月30日開催のGEISAI#22に美術作家イソムラミキが出展する【May not remember well.】は、日常風景をスマートフォンで撮影し、そこに写っている人物の顔や、その場所を特定する要素をハイターで漂白した、一辺を89mmとする正方形の写真作品群である。イソムラは芸術大学在籍中の2016年から一貫して「私は私を共有したい」というテーマで制作・発表活動をしているが、本作で

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《君は僕に似ている》

《君は僕に似ている》

 本作は縦√2m、横1mのパネルを二つ並べたものです。このうち一枚の短辺と長辺の比が1:√2であることは言うまでもありませんが、2枚を隙間なく並べた時の作品全体の短辺と長辺の比もまた1:√2になります。(縦√2m、横2m)これら部分と全体は比率が等しい相似関係にあります。なお、基準となる一枚分の短辺の長さ1mとは、もともと地球の赤道から北極までの長さの1000万分の1とされているそうです。つまり星

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星の小論文

星の小論文

 2022年は一貫して、正五角形およびその頂点を結んだ五芒星に含まれる、黄金比をはじめとした幾何学的な要素をモチーフとして、その図形の特徴である部分と全体の相似関係、ひいては自己と世界との相似関係を、主に絵画で表現しました。自分自身がより大きな全体と繋がっているという一体感に秩序づけられることで、混沌を穿ち、天然健康のありさまを得さしむるための一助となることを願っています。解剖学者の三木成夫は、人

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「幻影制作術」としての

「幻影制作術」としての

 わたしは以前「表現について」というテキストで「情報」を意味する"information"という語を持ち出したのですが、今回はその背景にあった「フォーム」ついて、谷川渥『美のバロキスム 芸術学講義』(武蔵野美術大学出版局、2006年)https://www.musabi.co.jp/books/b163174/の一章「絵画のフォルムとアンフォルム」を参考に、古代ギリシャの哲学者プラトンのイデア論か

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〈新たなる傷つきし者〉と破壊的可塑性

〈新たなる傷つきし者〉と破壊的可塑性

 本稿はフランスの哲学者カトリーヌ・マラブー(1959〜)の書籍『新たなる傷つきし者: フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える』(平野徹 訳、河出書房新社、2016年)の読了に際した備忘録である。
 ヘーゲル哲学からとり出したマラブーの思想の核となる「可塑性」という概念では以下の三つの意味を考慮する。

① 粘土などのように、かたちをうけとることのできる物質のもつ能力
② 逆に、かたちを与え

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令和二年度愛知県立芸術大学卒業・修了制作展:イソムラミキ作品に寄せて「#25歳女性の場合」

令和二年度愛知県立芸術大学卒業・修了制作展:イソムラミキ作品に寄せて「#25歳女性の場合」

 西洋占星術では、2020年12月22日に所有が尊ばれた従来の「土の時代」から、共有に重きを置く「風の時代」に移ったとされてる⑴。こうした星々の節目以前に、個人所有の住居の空き部屋等を他人に貸し出すインターネット上のサービスであるAirbnbや、自家用車を利用した配車サービスであるUber、Lyft等のシェリングサービスが中心に利用者を増やしている⑵。SNSの発達や地球資源の限界もあいまって、時代

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「表現」について

「表現」について

 本稿は、金沢美術工芸大学2019年度の講義「美学」の期末レポートに加筆修正を加えたものである。

 佐々木健一『美学辞典』(東京大学出版会、1995年)によれば、「表現」とは、「目に見えないもの、観念的なものに対して、目に見える形を与えること、もしくはその目に見える形そのもの」(p.53)とされている。「表」と「現」という、ともに「あらわす」と読める漢字の重なりから「目に見える」ことの重要性がわ

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