415. 感情はアニメのように声のトーンで表現する
北新地の上にあるスターバックスは西梅田デートの待ち合わせと夜の商売の女との待ち合わせの宝庫である。梅田王子もこのスターバッスクはよく利用するが、なぜか梅田王子の隣には待ち合わせのカップルが座る確率が高い。
先日、梅田王子が資料整理をしながらコーヒーを飲んでいたら、めかし込んだ20代の女が隣に座った。10分ほどしてこれまためかし込んだ20代の男が現れ、「初めまして。なんて呼んだらいいですかね?」などとうすら笑みを浮かべて聞いていたので、どうやらマッチングアプリの待ち合わせであることがわかった。
「よく利用されるんですか?」
「普段は何をされているんですか?」
「お仕事はいつもこれくらいに終わるんですか?」
と、慣れた口調で質問攻めにする女と、丁寧に答えていく男。彼女の取り調べの結果、その男は公務員で現職の警察官(交通機動隊?)で、夜勤が多くまとまった時間をとって好きなことをするには厳しい勤務体系だということだった。
ここまで約15分。メロンのフラペチーノを写真に撮ったりインスタの投稿を見せあったりして場を盛り上げていたのだが、横でその一部始終を聞いていた梅田王子にはどうにも気になることがあった。一見和やかな初デートなのだが、声のトーンが二人とも明らかに平坦なのだ。
わかりやすく言うと、棒読みに近いのである。よく、モテるためには感情豊かに話そうと言うテクニックというか、そういうコンテンツを見ることがあると思うが、この感情の表現の仕方には2種類がある。それが、視覚的な表現と、聴覚的な表現だ。
特にこの警察官の男性は身振り手振り、わかりやすい笑顔やなんやかんやで盛り上がっている素敵なシチュエーションを演出し、はっきり言って非常に優秀な初デートをする優等生で間違いない。ただ、これでは時間がかかりすぎる。1秒でも深い関係を構築するには、ごきげんだけではなく不機嫌も取り入れないといけない。
良くも悪くも女性は不機嫌な話題を出すのが好きだ。それなのに、こうも上機嫌で盛り上がる演出ばかりをしていると、正直女性は疲れてくる。女性が不機嫌という感情を躊躇なく出せるように、不機嫌の感情も会話の要素に取り入れないと「私商売の女じゃないんだからさー」というイライラが募る。
実は、好対象に梅田王子の逆のテーブルには北新地の夜のお姉さんが50代のギラギラしたビジネスマン風の男と待ち合わせをしていた。こちらは商売なので、終始女性は笑顔、不機嫌な話題も気持ちよく聞き流すまさに接待のプロだった。この夜のお姉さんは、うまく50代のギラギラしたビジネスマン風の男のイライラを抽出し、笑顔で焼却し、私と過ごす楽しい時間の感情で置き換えていくもう一度言うがまさに接待のプロだった。これが、相手を魅了する真髄だ。
では、この夜のお姉さんはどうやって男のイライラを適度に抽出したのかと言うと、声のトーンを操る方法を使っていたのだ。声のトーンを操ると言うのは、セリフは全く同じでも、言い方(発音の仕方)を変えることでそのセリフを持たせる意味合いを変える方法のことをいう。
例えば「何言ってるの?」という単純な文字列も、笑顔で嬉しそうに言うのか、しかめ顔で平坦に言うのでは、全く意味合いが違う。セリフはその文字列そのものの意味合いより、それをどう発音するかで相手の受け取り方は大きく変わる。
ストリートナンパではこれを多用する。多くのナンパ師がそうであるように、私たちはそれほど多くのセリフを持ち合わせていない。梅田王子に至っては「どうも」とか、ひどい時には会釈だけという簡素っぷりだ。しかし、同じ「どうも」でも、言い方によってそれこそ何通りもの感情を表現できる。もっと言えば、同じセリフを一つだけ持っていて、相手に与えたい感情を考えてそう言う感情を持ってもらえる言い回しでそのセリフを発音するのだ。
これは、ほぼほぼアニメの声優に近い。昔の声優は作画が完成する前から脚本とセリフの長さを示す棒だけが表示される画面を使ってアフレコをしていたようだか、アニメの声優や落語家のように、感情を声のトーンや言い方で表現し、セリフ自体はどうでもいいワンパターンを使い回すくらいでちょうどいい。
もし、あんなに盛り上がったのになんか進みが悪い、深い関係になりにくいと言う悩みがあれば、声のトーンを調整してポジティブばかりでなくネガティブな感情も適度に抽出するアプローチを試して欲しい。案外、おなじ「そうなんだ!」でも、ネガティブに「あーそんなんだ」とボソッと返すと、急にノリノリになって女性の負の感情が湧き出てくることがある。何が当たるかはわからないが、とりあえず平坦にポジティブな雰囲気だけを演出しているばかりでは女性は疲れてくるのでダメだと言うことだ。
まあ、女性は女性同士でも終始盛り上がるふりをし続ける必要があるのでこういうのには慣れているのだと思うが、それを当たり前だと思って「俺たちうまくいっている!」と勘違いするのはよくある間違いなので注意して欲しい。
【参考】声かけのベストなタイミングのヒント、それは***にある。
梅田王子