【意見】「好きなこと」は仕事にならない
従来のコンテンツ(新聞・雑誌・テレビ番組等々)は「プッシュ型」で 好むと好まざるに関わらず「強制的」に配信されるものであったわけですが インターネット成熟期になってテレビ広告がネット広告に抜かれる時代になると色々と変化が現れてきます
「プッシュ型」の利点は「選択する必要が無い」ということです 若い頃は歌番組・ドラマ・特番と渉猟しますが 段々年寄りになるとNHKを流しっぱなしになったりします 選択をしなくとも良いというのはジョブズやザッカーバーグも言っていますが疲労の軽減には効果があります 日本人が制服好きなのも「コーディネートする必要が無くて楽」だからですね
これがYoutubeのようなUGC(User Generated Contents)で一般ユーザーが作った狭い範囲の視聴者向けの動画コンテンツになると 本来は積極的に選択しなければなりません インタラクティブなネットの世界では「視聴=参加」(インターネットの歴史は置いておくとして)であったりします 「いいね」「ハートマーク」等々「弱参加型」の出現はSNSが切っ掛けですね
昔はテキスト投稿しない人はROM専(Read Only Member)と揶揄されたわけですが 今はそういうことはありません 自分で探して引いてくるので「プル型コンテンツ」と呼ばれる訳です ところが 「AIによるおすすめ」を使うと「プッシュされたものからプルする」という微妙なことになります つまり「君はこの中から選んで!」とAIに決められてしまうんですね
ですから「おすすめ」を積極的に使っていくと結果として「タコツボを深く掘る」ことになるわけです 「プッシュ型」の情報は嫌でも見るしかないものです しかし そこから「新しい発見や新しい興味の対象」が生まれて来るという副次効果があります テレビのチャンネル争いで「我慢・ゆずり合い」が身に付き「ドキュメンタリー」で自分の知らないことへの興味が生まれたりします
それに対して「AIによるおすすめから選ぶ」ですと「興味の無いことはすべて無視する」に繋がっていきます 考える必要が無くだらっと眺めていれば楽しく時間が潰せる 若い人はこれを「自分の時間」と言ったりします 「面倒臭いことは避けて好きなことだけする」という 最近の若い人の傾向はこういうところから醸成されてくるのかもしれません
旧来の新聞・テレビ・映画はマスゴミと揶揄されますが 一応 Mass Communication なのでファクトチェックもありある程度は信頼性が担保されています しかし UGCではファクトチェックは無く運営者のさじ加減ということになります Twitterでの投稿がアメリカでのQアノンの暴動に結び付いたことは皆さんの記憶に新しいところと思います
今は「情報過多」の時代と言われています その中でこそ「どうやって必要な情報を集めるか?」が自己形成そのものに関わってきます これは「タコツボを掘らずに広い見識を持つ」ことを意識しないと「おれは好きなことだけやってるからほっといてくれ」という「他者と繋がろうとしない人間」になってしまいます
YoutubeのようなUGCは「情報収集」(コンテンツ屋以外に研究者にとっても)のためには大変便利なツールなのですが 娯楽目的のユーザーにとってはタコツボを掘ってやがてそのジャンルに飽きてしまう「タコツボ=墓穴」ツールなのではないでしょうか? 食べ物もコンテンツも好き嫌いしない方が良いかもしれません
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