期待ほどじゃなかった
人は慣れていく生き物だ。
この街にもこの暮らしにも。上京して丸5年。心踊る新生活と一心始めた仕事も、日常と生活に変わった。それでも思い出す事、懐古する事は変わらない。昔だけがより美しくなっていく。
自分の狡さが嫌いだ。
学生だからと逃げ道を作る事。地元を離れているからと目を瞑る事。技術職だからと距離を置く事。小さなズルさとその積み重ね。人間の気持ち悪さの凝縮。世の中の全てが子供騙しの茶番に見える。
世の中は思っていたよりもシンプルだけど、その分残酷だ。
何かを一つ知る度に息が詰まっていく。何も知らなかった頃の方がもっと自由に生きていた気がする。
憧れていた筈の自分は、期待ほどじゃなかった。