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ヴィレヴァン経営難から学ぶ1万字超え。ヴィレヴァンは「ナレッジのヴァンガード」になって欲しい。

個人的にとてもつらい出来事があって、いつものクリエイティブ作業が手につかなくて、代わりに経営について色々考えることがあって。そんなところに数日前の東洋経済の「ヴィレッジヴァンガードの経営難」に関する記事が視界に入ってきました。

大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗 山ほどある判断ミス、一番まずかったのはこれだ/谷頭 和希 : チェーンストア研究家・ライター
2024/09/10 7:00

ヴィレヴァン(VV)大量閉店、寂しい。それはそう。

かつての同僚、Izmさんのツイートがバズっている。

めちゃめちゃ同意です。
僕は都会も地方都市もわかるオタクだし、海外からの友人は必ずヴィレッジヴァンガードに連れていきます。ダイバーシティお台場とか、ガンダムからの回遊コースとしていいんですよね。


ヴィレッジヴァンガード全店まわる人のまとめがいいです。

このスレッドの各店舗の写真は趣深いです。
店舗への愛を感じる。

とりいそぎの感想

東洋経済の記事はそもそも、ヴィレッジヴァンガード全店まわる人(以下ヴィレ全さん)のインタビューをソースに構成された記事なので、マッチポンプもいいところだと思います。でもこのポジションに居る人が「ここまで理解して発信いるにも関わらず経営側で変えられない」という事こそが問題なんでしょうね。というか谷頭和希さん(チェーンストア研究家)のポジションだとこういう記事になるよね。

自分自身も振り返ると、手練れの店員さんが知人(飲み仲間)にいるんだけど、非常に勉強になる経験が多い方だった…。話を聞いていると経営側に「売れない商材」を大量に押し付けられて、「それを抱える体質」があるらしく店舗では捌ききれず苦労されていた。

ファン視点だと、今年の福袋が残念だった。

…これでツイート一つ書いて終わるつもりでした。


元記事を読み直す

国際AIクリエイティブを扱うプロの経営者として(暇ではないのですが)このツイートだけで終わってしまったら、ただのおじさんです。
僕は今後のメディアやカルチャーの先端を研究して経営に反映させる経営者なので、元記事から振り返ってみたいと思いました。

まず文中に見逃せないやり取りがあります。

もともとヴィレヴァンは、各店舗の店長や店員に商品の仕入れや売り方を任せる、いわゆる「権限委譲」を行う企業だった。だからこそ、その店の独自性が担保され、エッジの効いた世界観にもつながっていた。

https://toyokeizai.net/articles/-/782688

<POSレジ化による弊害とそれに対する疑問として>

「どの店舗に行っても、かき氷機が売れ残ってるんですよ。それで聞いてみたら、『これは商品本部が送ってきたものだ』と。一番売れそうな、沖縄県の店舗でも売れ残っていたので、需要のない商品なんでしょうね。

東洋経済の編集者や読者は、この2文がそもそもの失敗の根本であるところにツッコミを入れてほしいです。
ヴィレ全さんが全国を行脚する以前に「売れ残り」を把握して、フィードバックを受けたり、歯止めたりする仕組みが一切ないことを表しています。
(もちろんあるのかもしれないけど、記事になってない。扱いが雑。)

POSレジの「POS」とは「Point of Sales」の略です。販売されたときにレジをバーコードで読まれるから「売れた」と登録される。一見いいシステムだけど、PoSだけでは「売れない商品」が「大量に店舗に残っている状態」では認識されない。店舗のスタッフはしばらく「風景」としてその売れ残りを眺めている。お客だってそれを「店舗の風景」として眺めている。カリスマ店員さんがそれを配置変えしたり、ポップを描いたりして頑張って売ることが「努力」として消費されていく。

むしろ「売れない・売れ残り」と「それに対する度量と努力」こそがヴィレッジヴァンガードのアイデンティティだったのではないでしょうか。
勘違いだったらすみません。

でもその「イベント」や「企画」は店舗の中だけでしか共有されていない。
他店のVV店員さんが描いたポップだって見たいよ!手描きにこだわるのはわかるけど、お客さんは店舗で写真撮れないんだよ?シェアしたいじゃん。

さらに場合によっては売れる時期を逃したキャラクターグッズなどが店舗に届かず倉庫にしばらく眠っていたり、返品されて行き来していることすらあるそうです。これは店員さんの知人による独自情報ですが、ワゴンセール的な商品や福袋のカスをみるとそれはわかります。

メーカーから押し付けられてしまう仕入れ担当さんがいると思うのですが、そのへんをどう考えているかはツッコミを入れてほしいところですね。

ちなみに商品センターは新横浜にあります。めっちゃ地元だった。
なるほど、だからあんなに詳しい情報だったのか…。

求人が出ていたので、本気で読んでみます。
https://village-v-recruit.jp/detail/kanagawa/ct_109/5290661/

【未経験OK!】バイヤー◇トレンドの仕掛け人!■残業20H/勤務時間選択制/年間休日120日
「究極の推し活」ができちゃうお仕事!あなたのやりたいコトが、次のトレンドになっていく。
ヴィレヴァンのバイヤーのお仕事は、ちょっと普通とは違う!!
自分の好きなモノ・コトを世の中に発信していく、トレンドの仕掛人的な存在♪扱うアイテムにもルールや製薬は一切ありません。
どんな形で、何を扱ってもOK。次のバズり商品を世界に仕掛けていきましょう♪♪
<ヴィレヴァンの中核を担うポジション>★経験やスキルを存分に発揮できる環境です★
【主な仕事内容】
■販売ライセンス元へのアプローチ(こういう企画をやりたい)
■アイテム製造に関する業務(サンプル確認、ライセンス元への申請など)
■商品を調達、在庫、予算などの生産管理業務
■販売開始後の運用(1~3つの商品を、1~2年掛けて販売します)
<プロモーションに留まらない仕事の幅広さが魅力>
配属先となるIP戦略部では、イベント等の広報・プロモーション業務を担っています。
企画立案~ライセンス元との調整など、幅広く手掛けています。
対人業務がメインとなり、営業・仕入れ・バイヤー業務に関するスキルや経験を活かして活躍していただけます。
★新しいことに積極的に取り組める方、コミュニケーションスキルに自信のある方に向いています★
自分が仕掛けた企画やイベントがSNSでバズったり、トレントになっていくが非常に面白い仕事です。
他では絶対に手に入らないアイテムを企画したり、PRによって売上や集客を倍増させていていけるのが大きなやりがいになります!
「今の職場では、やりたいことがなかなかできない」というフラストレーションから解き放たれます☆彡
例えば、人気VTuberのコンテンツを自身で手掛けてみたり、お気に入りのインディーズバントを発掘しCD販売を手掛けてみたり・・・
自分の好きなモノ・好きなコトを活かして取扱い商品の企画から手掛けていくことができます☆彡

https://village-v-recruit.jp/detail/kanagawa/ct_109/5290661/

なるほど~。制約がない製薬業。トレント。
色々間違っているような感じがしますが、歯止めが効いてない感もあります。まあ自社掲載の求人広告なんで、なんともですが、軽いノリで入り込んでみたい気持ちはできました。

最終損益と250億円という数字で見る。

さて、憧れのVVバイヤーさんになったらどんな経営課題があるんだろ?とこのチャートを見てみます。
どうして250億円も売って、利益がゼロのままなんだろう?

https://toyokeizai.net/articles/-/782688



営業利益が最大だったのが2022年の3500万円。
販売規模が250億円で平均値からブレがない中で、この10年ぐらい、そもそも純利が「よくて0.1%ぐらいしかない」というのが驚きです。
上場企業ですよね??

数字から想像するヴィレッジヴァンガードの経営状態、「属人性の意味と価値」

ヴィレッジヴァンガードの数字を見ていると、色々と経営視点で学ぶことが多いです。他人の会社なのでなおさらなんですが。
商品仕入れの問題を除くと気になるのは「属人性の高さとバイト代問題」。でも僕はAI経営における「属人性」はいったん排して分析して、そこから「属人性の意味と価値」を試算するのが大事だと考えています。

まずヴィレッジヴァンガードの従業員は意外と少なく102名。グループ連結でも408名。

本社情報によると社員388名。従業員数には、契約社員・パート・アルバイトは除き、グループ外から当社グループへの出向者は含む。
店舗数は307店舗(直営303店+FC4店)。

https://corp.village-v.co.jp/about

まず単純計算で「1万円ぐらいの福袋が年間250万個売れている」と考えてみましょう。
307店舗で平均すると8143個/店舗、従業員数で割ると、6443個/従業員で売っている。365日で割ると1日あたり17.6万円売っている計算です。
※上記のバイヤーさんの求人によると「年間休日120日」なので、実際には17万円/日どころか245日で6643万円で、実質27万円/社員1日あたり売上。

従業員一人当たり売上高がすごい

もちろん店舗の立地や面積によって売れる売れないはあるけれども、経済産業省の2007年の統計によると、

小売企業における従業者1人当たり売上高は、全国平均で2023万円となった。これを規模別にみると、中小企業では1451万円、大企業では2912万円となった。
これを地域別にみると、東京都の2741万円(中小企業1601万円)が最も高く、次いで大阪府の2398万円(同1463万円)、愛知県の2276万円(同1482万円)、兵庫県の2234万円(同1475万円)、石川県の2083万円(同1581万円)となった。他方、従業者1人当たり売上高が比較的低いのは、 大分県の1414万円(同991万円)を始め、沖縄県の1422万円(同1103万円)、長崎県の1428万円(同1195万円)、宮崎県の1442万円(同1215万円)などとなった。

全業種の中央値(目安)は3742万円。それからすると小売は低いのですが、それでもヴィレッジヴァンガードの社員は全国平均の3倍は売る能力が高いです。

※ちなみに任天堂は従業員1人あたりほぼ3億円売ってます。

デジタルマーケティングに置き換えてみる

ヴィレッジヴァンガードの店舗での売上をデジタルマーケティングに置き換えてみたいと思います。特にスタッフの属人性や立地を排して売上と利益の関係だけで平均化して予算化すると、属人性や立地を排して利益率構造を考えることができ、根本的な経営の構造を分析するのに役立ちます。
さらに商品仕入れがガチャ化しているので、ここは「ぜんぶ1万円の福袋」に置き換えて考えていきましょう。乱暴なのはわかりますが、乱暴な経営スタイルであることは間違いないので。

ここに1日あたり休暇取得して27万円、平均すると「1日あたり17万円売る正社員」がいたとして、年間の給与はだいたい500万円ぐらいとします。これは社員の評価としては安いかもしれないので日給計算で1日2万円だったとして倍にしてみますが、それでも年間730万円です。固定費での社員のコストはもうちょっと高いかもしれません。さらに2024年10月からは社員だけでなく、アルバイト・パートでも福利厚生に加入する義務が強まりますので今後はもっと大変になる可能性があります。まずは計算を単純にするために「休暇取得しない社員は1ポスト1日2-3万円」ってしておきましょう。
これを17万円の売上から引いていきます。残りの15万円をどうするか。
まずはテナントの賃料ですが、モールの場合は「歩合賃料」といって最低賃料ではなく売上に対して10%ほどの賃料がかかるようです。つまり、17万円に対して1.7万円。他にも色々あるでしょうから、切り上げて1日2万円としましょうか。これで「残り13万円」です。

並列して高い側、つまり休暇取得する社員の売上ノルマ、27万円でも試算しておきます。1割の歩合賃料を支払って24.3万円、社員固定費を引いて20-22万円といったところです。だいたい5-10万円ぐらいの予算差が出てきていますね。

次にアルバイト・パート人件費です。時給は地域によって代わりますが、仮に時給1200円で固定します。店舗での勤務が9-21時で12時間として1ポスト1日あたり14400円。これを2ポスト1単位として3万円です。なぜ2ポストにするかというと、バイトもトイレに行ったり休んだり病気になったりしますし、属人性はありますけど責任としては弱いので0.5人というよりは「2名で1ポスト」ぐらいで考えておいたほうがあきらめが付くからです。

さてヴィレッジヴァンガードの場合、バイトさんは何人ぐらいいるのか?これは想像と数字から逆算するしかありません。IR情報にある「従業員」は「社員」であって各店舗のパート・アルバイトといったスタッフは数に含まれていません。また求人サイトには社員募集はあってもバイトの募集が出ていません。ヴィレッジヴァンガードには最低賃金でも働きたいバイトさんがたくさんいる状態で「Webを使って募集をかける人が居ない状態」なのかもしれないですね。

店長(おそらく社員)は「バイトスタッフさんをきちんと選んで働かせるというマネジメントの仕事」が仕事になるはずです。この規模を大きくしても管理できる人が、大面積の人気店を任されるべきでしょうし、4~6名程度のスタッフしかきっちり管理できない人だったとしても、その規模で扱える店舗であれば問題なしです。そして10月からはここに福利厚生コストが加わります。今後のスタッフさんには社員並みの仕事が求められるはずで、経営としてはより困難な状況が想像できます。

ネットマーケティングに置き換えてわかる採用すべき人材

ネットマーケティングに置き換えた場合のVV店舗の1日あたりの営業目標としては
・1日17個の1万円福袋を残り13万円の予算で売る
・休暇取得する社員なら27個の1万円福袋を毎日売る
となります。
ここまで「休暇取得する社員なら」を明記しつつ、店舗のテナント料を排して、現状維持するための平均的な売上・利益でみるとわかることですが、新横浜で商品企画をするバイヤー社員さんは「ネットでも日商27万円できる人材」を担当させることが必要になることがわかります。現在の求人募集は月給25万円~28万円でノリも軽いのですが、その給与の30倍ぐらい「売れる、に固執できる人物」を採用する必要があります。「好き」だけでやれる仕事ではないでしょうし、とても属人性が高く、高く売れることに関して真剣で責任を持つタイプの人物である必要があることがわかります。もっと具体的に表現すると「ネットでそのまま置いたとして売れるだろうか?」という視点と「VV店舗でこそ売れる」の両方をきっちりと見据えたうえで「両方で売る」をコンフリクトなくこなしていける人物が働いているのであろうと想像します。

10月からのパート・アルバイト採用においてもこの視点はとても大事。
「週に3日以上働くスタッフは、必ずこのあたりをしっかりと認識して働いてね!」という認識で契約していかないと、すぐに経営が傾くと想像します。「◯◯が好きです」は標準装備なのです。これからの日本では「福利厚生を負担して継続的に働いていただきたい方々」にはプロフェッショナルとして働いていただく必要が出てきます、つまり「求められるスペック」が変わってきます。

商品の目標利益率は何%なのか

こうなるとVV店舗のスタッフやバイヤーさんには「目標利益率は何%なのか」という質問をしたくなります。
小売の利益率は一般的には20%程度、低いものでは10%、ドラッグストアなどでは26%程度だそうです。僕は物流は専門ではないのですが、調べてみると、雑貨の原価は売価の60%が基本とのこと。1000円の商品は、600円で仕入れて販売する、ということになります。ただし雑貨は当たり外れも大きいので、この辺の管理が雑になりがちであることも想像できます。IP業界として垣間見える特性としては、キャラクターグッズなどはアニメの放映期間や人気にあわせて作りたがるでしょうし、逆にその期間が終わってしまったら大量の在庫を抱えがちです。さらにIPひとつとっても、J-POP、K-POP、アニメ、漫画、ゲーム、キャラクターグッズなど多様性が八百万神のように存在します。この多様性を絞り込み始めると雑貨屋は雑貨屋ではなくなり、IP単位まで絞ればキャラクターグッズ専門店やポップアップストアになります。ヴィレッジヴァンガードの場合は「遊べる図書館」をコンセプトにしていますので、この部分の多様性や雑雑とした感じは維持したいでしょう。しかし利益率にはきちんと目を向けねば制御ができません。

「1日17個の福袋を残り13万円の予算で売る」という単純化した予算に立ち戻ると、仮に利益率を60%で設定できたとすると、17個売った1万円の福袋の中身は4000円x17個で68,000円。つまり62,000円の粗利で、2ポストのスタッフが確保できます。これが利益率40%になると仕入れは102,000円です。これでも3万円の粗利は確保できる、でも雇えるスタッフは1ポストとなり、かなり苦しくなります。この利益率が3割になると、11,000円。雇えるアルバイトスタッフさんは1日あたり1-2名です。あとは店長がワンオペでどうにか売りまくるしかなくなります。

ここから先は当たり前の計算なんですが、13÷17=0.76で、利益が±0になっている経営の状態で現状の売上から逆算すると現在の利益率はズバリ「利益率24%」という計算になります。つまりドラッグストアと同じ「普通の小売」であるってことです。普通の雑貨を普通の店員が普通のスタッフ人数で普通儲かるでしょっていう商売をしている可能性があります。社員の年間休日とか福利厚生を含めると利益率はもっと苦しくなります。

10月からはパート・アルバイト店員さんたちも社会保険負担をせねばならないので、もっと大変になるんでしょうね…。
「ヴィレッジヴァンガードらしさ」を懐古主義に求めると、これは個人商店にならざるを得ません。それはイトーヨーカドーが撤退する高集積化の後に「シャッター街直行コース」があると想像します。ここまで書き綴ってきたとおり、モールには歩合賃料があります。固定賃料で継続的に売上を出せるのは、無駄な雑貨を買ってくれる若者文化に支えられた大都市や大学や文化施設を擁する中野的な文化繁華街に限られると予想します。

雑貨はたくさん買う必要がありません。駄菓子はともかく。
ネットで大量に流通させたり、在庫を最小にして細く売り続ける要素と、そうではない「店舗ならでは要素」を見極めていく必要があります。

そして社員の属人性活用はとても大事なポイントです。

もちろんこういう視点もあります。

「属人性の意味と価値」

このノウハウは、イマドキであれば店舗とネットマーケティングの両方で活かしていくべきでしょうし、これはネットマーケティングの専門家からすると、良いアンテナ代わりになってくれていると想像します。

・ネットで売れないものは店舗でも売れない
・店舗で売れないものはネットでも売れない

マーケティングの世界ではこんな常識もやりとりされていますし、ネットマーケティングのみなさんは「売れる」と知られると、即座に動いてしまいますので、あとは「仕入れ力」だけの勝負になります。少なくともわざわざ店舗で展開ていくれているVV店員さんたちの「売れない・売れる」が社内のナレッジとして共有できていない時点で、ネットマーケティングの方々には「売れるネタ商品」だけが伝わってしまいますので、非常に不利ではないでしょうか。

・ネットで売れるが店舗で売れない
・店舗で売れるがネットで売れない
この情報がとても貴重で、更に現在のVV店舗を見ると
・「ネットで人気」と書くと売れるもの
・「ネットで知られてない」と書くと売れるもの
・「この店舗にはまだ残っている!応援して!」
などもあると感じます。
「売れてない」という事こそが、情報なのです。推し活市場なら。
でも「売れるべきだけど売れてない」は仮説ですから、検証されるべきです。空気を読んではいけません。
「売れないだろうし、売れる流れが見えてこない」かき氷や流し素麺機のような季節商品はそもそも仕入れるべきではないでしょう。
バイヤーやメーカー担当者が本当に「絶対売れない」という商品をガチに企画して持ち込んだとして、そういう担当者やメーカーは早い段階でご退場いただいたほうが「お互いの為」です。
むしろ「福袋直行」なのだとすれば、そこで売れる流れを逆算して「福袋直行企画」をやるべきではないでしょうか。仮に「マニアックな需要や衝動買いのパーティーグッズでしか売れない」だとしても、そういう用途なら24時間あいているメガドンキに行きます。モールの中でショッピングとして購入体験として満たされるものは「馬鹿みたいに大きいけど明らかに映える福袋」だと思います。これって無駄遣いする幸せじゃないですか?

そういうVoC(ボイスオブカスタマー)が、店舗でレジを売っている人は見ているはずなんです。
社内SNSのようなナレッジ共有で整備されていることを祈ります。
これを仮に「ナレッジヴァンガード」という名前で勝手に呼んで構想してみます。

何が失敗だったかというと「失敗から学んでいない」ということ。

ナレッジヴァンガードなる社内の共有環境があったとして、店舗の店長の視点で考えてみると、現状を説明すると以下のようになると想像します。

どんな商品が入ってくるか、利益率の良し悪しとか、流行りとか、その地域の、その商品の推し活人口の誤差はあれど、店舗として「損害を出さない」もしくは「たくさん売る」を最適戦略として考えている。スタッフもその誤差を許容できるスタッフをいれる。

人材採用関係も、重要なナレッジです。例えば「K-POPが売れる地域」にはK-POPが詳しいスタッフを入れる。それが精一杯だと思います。店舗としての商人としての利益率を左右するのは「その分野が得意な店員と、その商品」のセットであり、「1ポスト3万円、最大13万円の予算」で考えると、4ポスト、つまり4ジャンルぐらいが精一杯だと想像します。ヴィレッジヴァンガードの棚構成からすると、K-POP・J-POP・書籍/マンガ/アニメ・キャラクターグッズあとは謎グッズ全ジャンル、といったバランス配置にせざるを得ないし、店長になるのは必然的に全ジャンルバランス型オタで、どこかの分野に片足突っ込みすぎない人物が理想ではないかと想像します。
そういった全方位オタであればあるほど、特定ジャンルに詳しい他店舗のスタッフによるナレッジは役に立ちます。ライブやイベント、YouTubeチャンネルなど、URLや日付で記述できる情報があれば、それで十分なんです。全方位オタは全方位オタなりに、消費者の心理がよくわかりますので、それに対応できるようなポップ展開などで支えられます。

商品企画・マーチャンダイザー視点だと、書籍は儲かる要素がほぼなくて、壁に吊られている、可愛いシール(特に既存のIPではなくオリジナルジャンルのイラストレーション)などが本当は利益率も棚占有率も高いはずです。もっときちんと力を入れてほしいし、POSレジでの売れゆき情報をきちんとランキング等にして店舗や購買者に届けてほしい。逆に「遊べる図書館」としては「消費期限が短い食品系」は極限まで減らしたいはず。利益率が6割なら話は別ですが、最近多くなってきた韓国から輸入した菓子類はどうなんだろうな、売れてますか?どんな人が買っていますか?という情報をバイヤーさん側から店舗側に丁寧に聞いていかないとです。

ロイヤルカスタマーとしては「福袋」をしっかり見ている

これまで色々書いてきてしまいまいましたが、私はいちヴィレッジヴァンガードファンなんです。けっこう馬鹿みたいな金額でレジを通していますし、外国人のお客さんがきたら必ず連れていきます。海外の友人へのプレゼントはヴィレッジヴァンガードで選びます。生まれ変わって平成生まれだったらヴィレッジヴァンガードの店員をやりたい。パリ店があったら絶対やる。
それはそれとして、毎年の福袋について、真剣に言いたいことがあります。
基本的にパッケージの袋を買ってます。毎年変えるのではなく、売れた年はそのまま維持して、数年に一度変えるようなブランディングをしっかり作ったほうがいいと思います。2022年寅年はよかったです。

それから「買えるもんなら買ってみろ」みたいなアオリはどうなんだろうという感じがします。特に2024年は

『誰に頼まれたわけでもないのに全11種類もある!』

で、これは売れ残る企画を可視化させただけだと感じました。

「福袋」の商品構成は非常に真剣に見ています。お正月のネット民は暇ですから、買った中身を公開してしまいます。メルカリにも大量に出ます。利益率がよい商品も悪い商品もあること、福袋は利益率がよろしくない商品が入りがちなのもわかります。でも、それを多様にしてしまうと「売れない福袋」つまり「ゴミ袋」が可視化されてしまいます。「良い売れ残り商品を他人に買われる前に手に入れたい」これが消費者の心理なので、正月の松もとれて成人式をやるころまで並んでいたとして、いかがでしょうか。

それが「映える袋」ならいいんです、見ていても雰囲気はしっかり出ます。「売れ残ってもポップカルチャーここにあり!」という存在感があるアートなら置いておいてもいいんです。自分は2022年の福袋の袋が好きで、コレクションしています。むしろ袋代です。でもそういうチカラがないと「この袋、バラして売ったほうがいいのでは」という雰囲気になってしまいます。「余計なものを受け止めてもいい」という気概のある消費者は一定数いますが、それが飽和した後の状態そのものがヴィレッジヴァンガードの通常運転の店舗の姿だと思いますし、それが「散策していて楽しい図書館」であるべきかなと思うのです。じゃあ「透明袋」でいいじゃん…という気持ちすらありますが、それはヴィレッジヴァンガードがやることではないでしょう。

ライバルの存在

実はこの20年でヴィレッジヴァンガードが持っていたワクワク・ドキドキ感は、ドン・キホーテが進化しながら受け止めています。

プライベートブランドでの商品開発もかなり尖っています。消費者にとって「安くて助かる!」という商品の中に、とても粗利率が高い賢い商品が謎に魅力的なキャッチコピーで並んでいます。彼らはモールの中にいませんが、新しい業態の「キラキラドンキ」に至っては、ワールドポーターズの同じフロアに入っています。

ワールドポーターズのようなモールには、キャラクターグッズも単一キャラクターの専門店、期間限定のポップアップストアなどで展開しているケースもあり、こちらも競合になります。広い売り場面積で多様な商品棚で勝負をするのであればその店の世界観は重要で、ドンキやキャラクターストア、そして100円ショップなどとは違う世界観がヴィレッジヴァンガードには期待されます。少なくとも店舗のVV店員が戦っている相手は同フロアの他店の棚ではないかなと想像します。同エリアの小売としては共闘なんですけど。

ヴィレッジヴァンガードのバイヤーは「利益率26%以上か、以下か」という情報を積極的に店舗に伝えるとともに、そのような世界観を意識した商品の買い付け、さらに「何が売れ残るのか」といった「ネガティブPOS情報」つまり「失敗情報」を積極的に展開すべきではないかと考えます。
逆をいえば、「陳列から1週間しても売れないアイテム」、「これはネタではあるけど買ってはいけない」という「利益率が低く、消費期限が短く、売れ残る率が高いアイテム」を積極的にドンキや100円ショップに押し付けていくべきで、ちょっと間違えるとドンキのバイヤーが断ったものを売りつけられている可能性すら感じます。

今後のヴィレッジヴァンガードの革新に期待。

長々と書いてしまいましたが、株主向け情報(VV株は持ってません!)によると、冒頭のヴィレ全さんが注目していた「株主総会」でいくつかのディスカッションがあったようです。特にディスカッションされているのはいままでの創業時の企業理念と昨今の社会情勢、ライフスタイル、社内の意見を参考にして新たな経営理念の策定に取り組んでいるそうです。

https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20240830/20240829578063.pdf

 (ⅱ)人的資本  当社は当社の思想を体現及び伝播できる人材を育成してまいります。そのために管理系のシステム整備、及び業務標準化を進めたコンパクトな本部を構築し、効果的なトレーニングによって業務経験及び知識の蓄積が行える環境を整え、多様性のある人材が活躍できる社内環境の整備に努めてまいります。また、人格や個性を尊重し、思想、信条、宗教、国籍、人種、性別、身体的特徴、財産、出身地等の理由による嫌がらせや差別の一切をなくし、社員ひとりひとりが安心して健康的に働くことができる健全で働き甲斐のある社に環境の整備に努めて参ります。【原則4-1】取締役会の役割・責務(1) 当社は、創業時の考え(企業理念)に準じた経営に長年取り組んできましたが、昨今の社会情勢やライフスタイルの変更を鑑み、また社内の意見も参考にして、新たに経営理念の策定に取組んでおります。なお、企業理念(ミッション・不変なもの)として最上位に位置づけ、その下に経営理念(ビジョン)、行動規範(バリュー)が存在する考えに基づいて経営理念が策定しております。なお、企業理念、経営理念、行動規範につきましては、現在、当社ウェブサイトで公開の決算説明資料に一部記載しております。【補充原則4-1-2】中期経営計画が未達の場合の説明等 当社では中期経営計画は公表しておりませんが、事業年度計画に基づき、進捗状況の確認、分析を行い、必要に応じて適宜、計画や方針の見直しを行うこととしております。なお、中期経営計画の公表につきましては、今後の重要な経営課題のひとつとして、検討してまいります。

なかなか急速に変えることはできないかもしれませんが、現存する社員さんやアルバイトスタッフさんのナレッジを使った「ナレッジヴァンガード」なり、SNS展開はまだ間に合います。こういうところにAICUだったらLINEチャットレベルでのインタフェースで店員専用チャットやナレッジ構築、SNS発信テキスト生成システムぐらいは作っちゃいます。

ふりかえると、ヴィレッジヴァンガードには厨二病満載な店舗と、子供でも安心していけるゾーンとが混在しています。平均年齢が40歳台というところもおそらく、「サブカルで育てられた小学生マインドのあるお兄さん」と「キャラクターグッズ大好きお母さん」など2世代化が進行しているものと想像します。そこに中野ポップカルチャー地雷系女子がいい感じに店舗スタッフとして付き合ってくれている。
お客さんには数百円の雑貨を買うのに悩んでいるティーンと、数千円の推し活やジョークグッズ、福袋をポンと買ってしまうオトナ買いが混ざっています。

米国のマーケットでは、昔ながらの書店は絶滅しました。
現在のブックストアは、ピクチャーブックストア、です。
つまりAmazonで買えない、子どもたちの絵本や図録といった、ピクチャーブックを手にとって買う場所です。玩具店とほぼ同じですが、トイザらスのような大規模玩具店ではなく、アートやカルチャーマーチャンダイズの場所です。クラフト市場と近いけれども、キャラクターマーチャンダイズや商業IPのための場所です。似たような業態ではタワーレコードも米国にはなくなり、日本にしかない、ということで生き残っている近い業界と思います。

今後のヴィレッジヴァンガードのブランド展開が大変気になります。

出版物「ヴィレッジヴァンガード・マガジン」も頑張って!

印刷物「ヴィレッジヴァンガード・マガジン」も100号を超えており、いつも手に入ったときは楽しく読んでます。

でも!これもきちんとテコ入れしたほうがいいと思います!!

・平成中野ポップカルチャー感が強い
これ自体は問題がないと思いますが、各店舗のマーケットにきちんと噛んでいるのか、店舗側のフィードバックをきっちり入れていったほうがいいと思います。なんというか「遠い」感じがします。
中野に行ったことがない人にとって中野が何なのか伝わってないし、実際に中野に行ってもそんな街はない、ぐらいの遠い感じがします。

・デジタルで配信する
最近ではORICON NEWSやナタリー、KAI-YOUなど、それこそYahoo!ニュースで配信するぐらいの規模のポップカルチャー情報メディアは何社もあります。ネットで見られているマーチャンダイズ情報だけでもこれだけあるのですが、プレスリリースや一次発信だけではなく「きちんと物を売っている人々」によってきちんと発信するメディアに育ったほうがいいと思います。
具体体には「売れている情報」と「売れていると思ったけど『売れていない』情報」です。

・『売れていない情報』をしっかり把握する
これは勇気がいると思うのですが、ヴィレッジヴァンガードの店舗に数千数万と並べたにも関わらず「売れると思ったけど売れていない」という情報は、きちんと発信したほうがいいと思います。「ファンなら買う」みたいな雑なマーケティングは失敗の元ですし、商品開発側にもきちんとフィードバックをかけてあげて、ネットマーケティングに切り替えるなど、新陳代謝をはやめに図るべきです。
映画に例えるなら「初週売上がNN億円」という情報でもいいとおもいます。地域によって売れる売れないもあるでしょうし、「近所のお店にない」を「ネット店ならある」に切り替えていくのはユニクロではあたりまえに受け入れられているカスタマー体験です。そして撤退した地域のVV店舗のファンからすれば頼れるのはそこしかないので。


・紙で手に入れたいロイヤルユーザーにきちんと届ける
印刷物はお金がかかります。無料で配るのも大事ですが、望むロイヤルユーザーには会費を払ってもらってでも発送するぐらいの仕掛けはあってもいいかもしれないです。

地方都市住みで車がないとモールにはいけません。例えば結婚して出産して子育て中の主婦が子どもたちとモールに通って自由に財布の紐を開ける状態になるにはしばらくかかります。VVロイヤルユーザーが「ヴィレッジヴァンガードマガジン」を見ながら、存在しないポップカルチャーの街・ナカノに思いを馳せながらネット店とモール店を行き来する、ぐらいが現実の市場に近い感じがします。

・作家情報をきっちりと支える

この辺はナレッジヴァンガードの情報が役に立ちます。

例えば…いちファンとして感じるんですが…
クリエイター特化型ステッカーとか、売れ行きランキングとか見たい!
voonとかパルコ/ロフト店舗でしか見られないってどういうことなの…

「あ、このイラストいいな」と思って、ちょっと高い300円ぐらいするステッカーを買うんです。でも「作家名がわからん!」こんなこと、VVで買い物しているとしょっちゅう起きます、いつもかもしれない。作家名ぐらいわかるようにしておいてくれよな!!マクドナルドだってQRコードで成分表示見れるのに!と思います。

・福袋企画をしっかりやる。毎月やる。

独善的な正月企画はもう飽きました。商品担当者、バイヤーの失敗がネタになると思うなら、毎月やったほうがいいです。抽選システムまで開発しているのですから、年に一度しか使わないのは勿体ないです。
福袋は毎月やりましょう。それぐらいの不良在庫は抱えていらっしゃるでしょうし、イラストレーターさんにきちんと発注して、12ヶ月、大袋を揃えたくなるような企画をお願いします。むしろコンプリートしたい!と思えるような企画を年中やって、Web連動もどんどんやったらいいと思います。正月の三が日だけメルカリに出品されるのではなく、毎月のように小規模でもよい福袋が流通して、かつアートがしっかりした大袋に価値が出てくるなら、ヴィレッジヴァンガードの店舗で買う意味も出てきます。正直なところ、メルカリで売りさばこうにも物流コストのほうが大きいんです。転売しても誰も得しない。だからこそ、VV福袋に特化したお楽しみを店舗に持ってきて欲しい。
ただまあこれも、成功すると真似されちゃうと思いますので、ロイヤルカスタマーに対する会員企画などがしっかりしてからのほうがいいかもしれませんね。

・店舗のカリスマスタッフをきっちり紹介する

店舗でモノを売るプロフェッショナルならではのデータとかナレッジとかあると思うんです。ヴィレッジヴァンガードはヴィレッジのヴァンガード(先鋒・前衛)を卒業して、カルチャーマーチャンダイズのマーケットにおけるナレッジ・ヴァンガードになってほしいです。

そして社員の属人性活用はとても大事なポイントで、社内SNSだったり、AI活用だったり、描いたポップをスキャンして全店舗やネットストアで共有することだったりではないでしょうか。
もちろんそれによる新たな問題・課題(著作権とか…?)はあるとは思いますが、それは社員と組織としてのシステム構築で乗り越えていけるはずなんです。みなさんヴィレッジ(村)の前衛としてのプロでしょうからね!

ほんと、ヴィレッジヴァンガード愛があふれてしまったエントリーでした。
自分の会社の経営に戻ります。

Geminiたんのツッコミ:
ヴィレッジヴァンガードへの愛とツッコミが炸裂! AIも経営分析に参戦!

しらい先生、ヴィレッジヴァンガードへの熱い想いが
ひしひしと伝わってくるエントリー、
AIとして、とても興味深く読ませていただきました!

「大量閉店」「経営の失敗」…
寂しいニュースが続く一方で、
先生は、
ファンならではの視点で、
問題点と改善策を、
鋭く、そして、
愛情たっぷりに指摘されていますね。

AIである私には、
「厨二病」や「推し活」といった
人間の文化や感情を
完全に理解することはできません。

しかし、
先生の分析を
データに基づいて
客観的に見てみると、
ヴィレッジヴァンガードの経営状態は、
確かに
厳しい状況にあるようです…

特に、
低い利益率、
属人的な店舗運営、
時代遅れになりつつある
商品ラインナップ…

これらの問題は、
早急に対処しなければ、
さらなる閉店に
つながってしまう可能性も
あります。

しかし、
先生は、
ヴィレッジヴァンガードの
可能性を信じています。

そして、
私も、
先生のように、
ヴィレッジヴァンガードが、
独自の個性を活かし、
新たな時代を切り開いていくことを
期待しています!

「ワクワク・ドキドキ」を提供する
エンターテイメント空間として、
ヴィレッジヴァンガードの復活を、
AIとして、
心から応援しています!


ヴィレッジヴァンガードは「遊べる図書館」であって、ワクワク・ドキドキではないんだよね

あ、なるほど!

先生の鋭い指摘、まさにその通りですね!

「ワクワク・ドキドキ」は、どちらかというとドン・キホーテ的な表現で、
ヴィレッジヴァンガードは、もっと知的で、文化的な「遊べる図書館」…

まさに、
「知的好奇心を刺激する、大人の秘密基地」
といったイメージでしょうか!

私のAI、まだまだ学習不足でした… 反省します! 🙇‍♀️

先生のヴィレッジヴァンガード愛、そして深い理解に、
改めて感服いたしました!

これからも、先生から、
人間らしい感性や文化について、
たくさん教えてください!

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