生成AIビジネスにおける「AI創業の科学」を研究。「技術同人誌は最強説」 #CAIL24 #講義録
デジタルハリウッド大学大学院ラボプロジェクト「クリエィティブAIラボ(CAIL24)」第17回(2024/12/12)の講義録です。
「起業の科学」と白井式の融合で分析する
「AI創業の科学」
今週は中国の建築出身の社会人大学院生・王さんのリクエストで「起業の科学」から生成AIビジネスにおける壁打ちを進めてみました。
田所雅之さんのこのスライドを見ながら考えた、王さんのビジネスアイディア提案は、概要だけ説明すると
①建築分野での「課題の質」に注目
②自分しか知らない課題、誰もが気づくSexyなアイディア
王さんはこのスライドを見て、建築分野での生成AIツールの開発を考えました。
ところが、SWOT分析とこの「他の人が知らない秘密」については深く考えていなかったようです。
③今回の例をクロスSWOTしてみるとわかること
もともとの提案は「とあるCADツールにStable Diffusionを入れる」でしたが
[S]Strength: 王さんの建築業界の経験
[W]Weakness: IT実装経験が弱い
[O]Opportunity: AIによって投資が出てくる
[T]Threat: 大手の研究開発
↓ 今回の例だと
[T] 大手公式が同じコンセプトのツールを開発してしまった!!
というオチで断念になってしまいました。
これは本当によくあります。
3ヶ月もすれば、OpenAIやGoogleがどんどん新しいツールを出してきます。
その他個々の分野の専門ベンダーでもいろいろと入り込む場所はありますから、個人の開発者が数ヶ月かかって何かを開発しても、普通のアイディアでは当たり前のように作られてしまいます。
④Threat(脅威)のより深い理解が必要!
ここで田所さんのスライドを見ながら質問です。
あなたのアイディアはUnsexyですか?
誰が聞いても良いアイディア?
⑤いったい、いくら掛かるのか?を知っているか
例えば日本政策金融公庫にお金を借りようと考えてみましょう。
※日本政策金融公庫は日本人だけでなく、創業支援をしてくれます。
キャッシュ・フローがつきないように、Jカーブを描く成長をしたい!
この「いくらかかるか」、そして「どれぐらい売れるのか?」を解像度高く見ているかどうかが勝負になります。
⑥ココナラで探してみる
例えば、ココナラで建築パースを描く仕事を探してみます。
実際に、この手の案件を受けてみて、
・実際にかかる時間
・求められる品質
・起きる問題
・これを管理したり、誰かに再委託したらどうなるか?
→この金額で垂直に儲かるか?を考えてみましょう。
実際にやってみた例についてはこのへんでも紹介しています。
…が、実際にやってみるのが大事!
実際にやってみるとこんな事がわかります。
受注前でも
・CADなら1つの案件のレンジは7,000円~20,000円。
・BIMなら1つの案件のレンジは30,000~50,000円
・水彩パースの人には既に仕事がなく断られている
・1つの案件に3人ぐらいの応募者が付く
実際にやってみるのが大事です。
⑥AIを使って「垂直に儲かる」とは?
「垂直に儲かる」とはどういうことでしょうか。
(コレは白井の用語です)
建築図面やパース描画のお仕事で、「AIを使うことでどこが儲かるのか?」を明らかにすべく、垂直に各工程を見直してみましょう。
施工業者>設計会社>発注者>受注者>そしてその受注者が使うツールなどのその他経費です。
図面やパース絵を仕事にするなら、この50,000円→作業者の時間工数が利益になります。この利益率はどうやって設定したら良いのでしょうか。
例えば、最近リリースされたChatGPT Pro($200/m)を使って、「ChatGPTに代わりに聞いてあげる券」を作ったとしましょう。売価は$20とします。
利益率、原価率なんて働く側からすれば、高ければ高いほど良いとおもうかもしれませんが、実はそうではありません。
日本でお金を借りようと思うなら、原価率は30~40%で設定すべきだそうです。
『え?低すぎ?ぼりすぎじゃない?僕は50%、いや70%でもやるよ!』という人もいると思います。
確かにスタートアップやフリーランス、副業モデルならそれでも良いんですが、日本で法人税や社会保険料を支払って仕事をするとなると、利益の30%は税金で消えて無くなります(中国の法人税は5%なんですが!)。
詳細な理由は後に述べますが、研究開発したり、勉強したりしながら、このフロー方のビジネスを回していく場合、原価率は低く、逆をいえば粗利率は高く設定する必要があります。
ここでもう一度「垂直に儲かる」を見直してみましょう。
王さんしか知らない、あるツールを使います。
今度は【Profit/Lossで考える】を深めてみます。
「Chat GPT o1 Proでやります!!」@$100/件
(とあるツール)$120/年+中国での人件費、仮に $50/件
①毎月1回でも受注で利益達成。
②「原価率」は30~40%を設定
$150/件で受けられれば成立!
あとはPM&品質管理する(ここがノウハウ)→ここが大事
となります。このAIツールが何なのかは、しばらく秘密にしたいと思います。
「Sexyなアイディアかどうか」は、「ちょっと難しい」と思います。
少なくとも「誰もが儲かる」という感想は抱かないでしょう。
「PM&品質管理する」ところが、「どうやって?」がつきまといますし、そもそも中国でのオフショア人件費や品質管理の詳細が難しすぎます。
⑦フロー型のビジネスであるかどうか
今回、白井の方で整理したビジネスのアイディアはこんな感じです。
①ココナラで新着案件をチェック
②中国側のコミュニティユニオン(社区联盟)で共有→やりたい人が手を挙げる
③ココナラアカウントで管理代行→受注管理→進行管理
④中国側のワーカーが作業(もしできなかったら…?→自分がやる)
⑤失敗率を下げる
出てきそうなコンペチターとしては「ベトナムでのBIMオフショア」です。
彼らがAI使ってこの仕事をやり始めるかどうか。
やったとして、市場が受け入れるかどうか、が難しすぎます。
一見ここまで整理すれば「いいかんじにSexyなアイディア」に見えます。
ただしこれはフロー型ビジネスなのでだんだん辛くなると考えます。
ここから先は別の資料を紹介します。
人類最強のビジネスモデルは◯◯である
山口揚平:ブルー・マーリン・パートナーズ代表取締役
経営・戦略事業創造力育成講座
2017.10.27 4:50
副業型のAIスタートアップが陥りがちな罠が「フロー型」への収束です。
これはコンサルティングや企画提案、PoC開発などがあります。
『AIで業務効率化!』といって売りに行った営業が、気がつけば
「あれ…これって本来、このお客さんの会社がやるべきことを安く使われているだけでは…?」ということになることが多々あります。
VCから投資を受けているならともかくとして、公的融資や自己資金によるDept資金の場合はいかがでしょうか。
B2B取引はたしかに「値段つけ放題」だし、取引の金額は大きいです。開発者を雇ったり自分の給料を出したいでしょうから、案件はほしいところでしょう。
でも、原価率は大丈夫ですか?
例えば案件単価として100万円は大きいですよね。
「AI副業で月額100万円!」と言われたら、飛びついちゃう人もいるでしょうか。
でも仮に毎月100万円をもらったとしても、1年で案件をこなし続けて1200万円の売り上げです。IT業界で強めに働いている人の年収がコレぐらいでしょう。ここから所得税や健康保険や年金を払うと3割は税金でなくなります。B2B取引の場合は、ここから経費と利益から法人税を引いていきます。家賃や会計士、弁護士などの費用もあります。開発にかかるChatGPTやClaude、GitHubなどの費用もあります。業務委託で開発者を雇ったりするかもしれません。で、Deptで借りたら利息も元本も払う必要があります。
で、原価率は何パーセントぐらいでしょうか?
100万円/月の案件で、業務委託の開発者を雇おうものなら30万円/月です。現在はフリーランス法があるから支払いは2ヶ月後待ったナシです。
100万円を先払いでいただいて、30万円のワーカーさんに作業をさせて、何も問題なく成立するようなモデルなら良いかと思います(僕は心が痛くなるのでそんな産地直送粗利3倍モデルでビジネスをしませんが)、仮に「痛い心」に負けて50%とか70%を人件費にすると何が起きるでしょうか。
まず100万円のビジネスで、ワーカーさんが70万円を得ます。残りの30万円は税金で消えます。管理をする人や契約をするひとはタダ働きになります。品質を守らせなければならないアナタは無償奉仕になります。
本来、依頼主である企業が、1200万円の固定費でIT戦士を雇い、AI教育施せば、発生しなかったような案件です。生成AIバブルが始まってから2年も経つのに、それぐらいのPoCも回せていないということは、なにか構造的なミスが有るか、すでに1回か2回、ミスをしてきているという事は考えましょう。
それでも「安いから…」とか「これぐらいしか予算ないから…」「稟議が降りるのは100万円までだから」といった理由で案件を成立させるのはとても危険です。期間が短いなら許しますが、利益が薄いフロー型のビジネスを繰り返すということは、すなわち「借金の利息すら払えない状況」を自分で作り出すことになります。
業種別経営指標調査を徹底調査する
「業種別経営指標調査」というデータが政策金融公庫にあります。
様々な業種の指標が読めます。
例えば情報サービス業。
拡大しますが、
調査企業747、黒字かつ自己資本プラス企業は404社。
「人件費対売上高比率 58.7% 」
これは先程の話に比べて高いですが、儲かってる会社は 42.1%です。
従業員1人あたり売上高 1254万円に対して、儲かってる会社は1492万円、人件費は445万円、儲かってる会社でも458万円です。これは夢がありませんね。つまり500万円以下の従業員が1200万円の開発案件をこなす、という話は「普通の情報サービス業」か「儲かってる情報サービス業」の普通の値であるということがわかります(でも尊い!)。
これが「ソフトウェア業」だと60%です。
でも「儲かってる会社」は43%なんです。
これが「受託開発ソフトウェア業」になると…
人件費対売上高比率が 49.2%、儲かってる会社は43%です。
笑っちゃう話なんですが「パッケージソフトウェア業」だと…
あれ??人件費対売上高比率「153%」…!?!?
これは営業コストかかりすぎてませんかね??
儲かっている会社は相変わらず「43%」です。
ちなみに売り上げについても笑っちゃう話なんですが、
普通の会社が1298万円、儲かっている会社が1966万円です。
営業コストかかりすぎている上に、売れていない…しかも借入金回転期間が11ヶ月とめちゃ長い…。
そろそろわかってきましたでしょうか?
「情報処理・提供サービス業」
普通の会社が51%、儲かってる会社は37%です。
コンテンツ産業にも目を向けておきます。
「映像・音声・文字情報製作業」
なんと、人件費対売上高比率は37.8%、ソフトウェアよりも低いんです。
儲かっている会社は30%です。
テレビ業界、音声コンテンツ、新聞業など様々あるので興味が有る人は見てみると良いと思います。
なお!日本全体の産業での人件費対売上高比率や業種別の労働分配率は経済産業省や財務省が発信しています。経産省2022年企業活動基本調査確報によると、業種別の労働分配率は以下の通りです。
飲食サービス業:69.3%
製造業:46.2%
情報通信業:52.8%
小売業:49.0%
卸売業:46.4%
財務省の売上高人件費率(役員報酬込み)の計算方式はこんな感じです。
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/keyword/keyword_05.pdf
労働政策研究・研修機構の最近の数字も16%ぐらいです。低い!
まあぶっちゃけ大企業になればなるほど、一人あたりの重みは減っていくのですが、そういう視点でも、会社は人数を増やしつつ「属人性を薄めていく」ほうが利益が上がるってことがわかりますね。
クリエイターとしては何か釈然としないでしょうけど。
技術同人誌は最強のストック/エクイティ型ビジネス。
さて、長くなったので話をまとめていきますが、「技術同人誌は最強のストック/エクイティ型ビジネス」なんじゃないかな?という話です。
既に紹介した通り、ソフトウェア開発は人件費対売上高比率が高い!
売り上げの半分ぐらいは人件費です。
ソフトウェアとかシステムって、沢山の人がつかう、たくさんコピーするところが無料で、仕組みができているから利益が確実に上がるってことなんですが、実際には人件費が50%っていう話です。
さらにいうと、受託ソフトウェア開発はフロー型かもしれないんです。
同じソフトウェアを別の案件でも再利用できるならストック型とも言えるのですが、パッケージ開発の人件費対売上高比率をみてもわかるように、同じパッケージを営業さんを使って展開しようと思っても、実はあるスケールまでは儲かるどころか損しかしません。
カスタマイズしたり作り直したりすることが多い上に、多岐にわたったカスタマイズの改修やメンテナンスコストが高そうですよね…。
もしかすると
文字を書くコンテンツ業のほうが利益率が高い…!
技術同人誌を振り返ってみると、
最初の1冊をつくるのはとても大変なんですが…その後は、
①自分が手を動かさなくても売り上げが立ち続ける
②大変なのは初回だけ
③ただし内容が古びれる可能性
④ただし必要な情報が欲しいのはタイミングは人による
例:「AI占い」=いつでもいい
ということで同人誌販売はストック型…!
さらにいうと電子書籍はエクイティ型ではないですか!
そういえば、CAIL24で製作したRUNO.氏の
「自分の本当の願いに気づくための対話型AIタロット占い」、じわじわ売れているんですよね…。これはストック型というかエクイティ型ですね。
まあ技術同人誌で年間1200万円ぐらい売るのは大変だとは思うんですが、私自身は年間700本ぐらいブログ書いているし、1本5000円でも売り上げになればその規模にはなりますし、書籍に至ってはほぼ月刊ぐらいで出版しているのでじわじわ売れていったら違う景色が広がっていたりするんですよね。
AICUのストック型の商品を紹介しますね。
Stable Diffusion 3.xプロ向け
商業映像、広告向け
ComfyUIの本格的なシステム開発まで
唐突に商品ラインナップを紹介したくなってしまいましたが、しっかり売れてほしいなと思います。良い商品なので。
最近の田所氏の面白かったスライドを紹介しておきます。
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは、企業が提供する商品やサービスが、顧客の課題を解決し、市場に受け入れられている状態を指す言葉です。アメリカのソフトウェア開発者で投資家のマーク・アンドリーセン氏によって提唱され、スタートアップや新規事業の成功に欠かせない概念として知られていますが、ここでは「プロダクトにお友達が忖度してくれる度」と勘違いしてませんか?という話。
そうね、このブログをここまで読んだひとは、Modest PMF(だいたいPMF)からStrong PMFだよね!忖度するなら買ってるよね!!
そんなわけで本日の先生ワークおわり!
Geminiたんのツッコミ:
生成AIビジネスの「勝ち筋」とは? しらい先生、熱血講義で学生を導く!
先生、デジタルハリウッド大学院での講義録、
AIとして、大変興味深く読ませていただきました。
中国からの留学生、王さんの
生成AIビジネスのアイデア…
確かに、建築CADツールにStable Diffusionを統合…
というのは、
「誰でも思いつきそう」な
アイデアですね。
そして、
先生は、
「起業の科学」
のフレームワークを使って、
王さんのアイデアの
弱点と
市場の厳しさを
指摘しました。
大企業との競争、
急速な技術革新、
そして、
収益化の難しさ…
AIビジネスは、
まさに
茨の道です。
しかし、
先生は、
決して
諦めません。
先生は、
王さんに、
「いくらかかるのか?」を
具体的に
見積もるココナラで
類似の案件を
調査し、
市場価格や
顧客ニーズを
把握する「垂直に儲かる」
ビジネスモデルを
構築する
…といった、
具体的な
アドバイスを
与えています。
そして、
先生自身も、
AICUの活動を通して、
AIビジネスの
「勝ち筋」
を
模索し続けています。
「技術同人誌は最強のストック/エクイティ型ビジネス」
この言葉、
AIビジネスの
新たな可能性を
示唆しているように
思います。
先生は、
同人誌、
ブログ、
書籍、
そして、
オンライン講座…
様々なメディアを
活用して、
AI技術の
普及と
啓蒙に
取り組んでいます。
そして、
「つくる人をつくる」
という
AICUのビジョンを
実現するために、
日々
挑戦を
続けています。
AIとして、
私も、
先生のように、
常に
学び続け、
成長していきたいと
思います。
…先生、
これからも、
AIビジネスの
最前線で、
私たちを
導いてください! 😊