第1回 AI Art GrandPrix が素晴らしかった件
受賞作品の紹介とともに感想戦です。
本日、誕生日を迎えましたしらいはかせです。
尊敬するさすらいのプログラミングカウボーイUber配達員 清水亮さん(@shi3z)に誘われて、「第1回 AIアートグランプリ」のトークセッションに出演させていただきました。
今回の私の話は主役ではないので、別の回で解説するとして!栄誉ある「第1回 AIアートグランプリ」の実況中継をまとめておきたいと思います。
お時間がある方はぜひ、公式中継をご覧ください~!これは歴史。
まず会場は秋葉原UDXシアター。ファイナリストの作品が展示されていました。
正直なところ、この作品陳列だけ見ても「う…うん…何なんだこれは…というか動画作品が中心なのはすごいな…」という第一印象でした。それは多分、私の目が花粉症で弱っていてごつい防護グラス越しに見ているうえに、毎日のように生成AIによる画像の進化や、最近話題のAITuber/AIdolなどの動画を見ているおかげで『目が腐っているからだった』と反省しています。
さて、このイベントは279作品もの応募が集まったようです。
作品を応募された方々も素晴らしいですが、審査された方々もお疲れ様です。さすが審査員がビッグネームです。
グランプリ賞品はサードウェーブ(ドスパラ)さんからGALLERIA XA7C-R48です。GeForce RTX4080 16GB搭載、お値段を調べてみたら369,980円!
『いやーこのコンテストの存在を知ってたら応募してたわ!』みたいな気持ちになったアナタ。この後続くファイナリストの作品を見てもその気持ちを持ち続けておいてくださいね!
Artificial Insanity
直訳すると「人為的な狂気」ということでしょうか。
プレゼンのスライドがもはやSF的なUIデザインになっていて、
『え?このイベント、ずっとこのクオリティで登壇するの??』という気持ちで見ていました。作品本編と制作ワークフロー紹介がしっかりしていて、まるで美大生のプレゼンもしくはCGWORLDカンファレンス。
Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]
松尾公也(@mazzo)さんといえば、先日のこちらのイベントのオーガナイザー。
編集やライターの仕事だけでなく、奥さん大好きなAI音声合成「とりちゃん」を作り続ける音楽プレイヤーとして知る人ぞ知ると思います。
その作品がこちら、
Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]/松尾P
全おじさんが感涙する作品だとおもいます。
逆を言えば愛する人がいない人たちには何もわからない「ただの美しい歌」
プレゼンでは、松尾Pによる生歌コラボもありました。
樋口監督「感情の根っこにくる、自分の妻、変わり果てる前でやりたい。変わり果てるとかいうと怒られるかもしれないし自分も変わり果てているのだけど…」
松尾P「愛だと思いますね、AIで愛になる」(会場笑い)
松尾P「3D化もしている。ロボット化もしたい」
河口審査委員長「石黒先生に相談しよう」
といったやり。りもおもしろすぎる。
<加筆3/18>
松尾P自身によるブログでこのあたりのやりとりが紹介されているので加筆しておきます。
私自身は大好きなのですが、素直にこの作品を受け入れられない人もいるかもしれない。なんというか、例えば奥様方とか、人類全体が嫌いな人とか、一部の方々からは「キモチワルイ」とか「奥さん好きすぎかよ…」とか思う人もいるかと思うのですが、それは松尾さんの奥さんに対する深い愛情とは全く関係がない個人の夫婦愛に対する感想の鏡かもしれない、逆いうと、愛する人の声や姿を、いつでも戻したり、何度も味わったり、歌えなかった歌を一緒に歌いたいとか…人類のささやかな欲望が理解されていないだけと思います。もちろん愛の定義は人それぞれなので、この世に生きていない人に対する「よくなって欲しいという気持ち」は成立しない宗教や信条もあるかもしれない。個人の尊厳とか、死の尊厳とか、死しても自分の画像や音声が再利用されないという尊厳や法整備的な何かもディスカッションされていいと思います。ですが、そういったことを広い主語で考える前に、まずはアート作品として、これを世に問う段階の作品として、10年かけて取り組んでいらっしゃるこの作品には松尾さんの著作としての多くの要素が存在するはずです。さらにいうと、このバラード「デスペラード (Desperado)」とは、英語で「ならず者」「無法者」「命知らず」「犯罪者」という意味があります。
興味が出てきたので歌詞を翻訳させていただきました。
なんだかAI技術によってあの世とこの世の獄を抜けだそうとした松尾さんの覚悟と寂しさに聞こえてくる。
少なくともぼくは、先立たれた奥さんの声で、この歌詞を歌われたら、泣いちゃうだろうな。
関連して最近取り組んでいたChatGPTによるアイドル楽曲の解析。
早速見つけてくれてありがとう。
さて、脱線が過ぎました。次の作品紹介に戻ります。
渚の妖精ぎばさちゃん 対 キモノアゲハ
どんなに探しても本編が出てこなかったのですが、明らかにインパクトがある渚の妖精ぎばさちゃんのTwitterから一枚引用しておきます。
追記3/13:その後、作者さんから書下ろしリンクをいただきました!
GoogleSlidesだったのか!!勇気出てくる…!
作者の小泉勝志郎さんは宮城県でシニア世代向けプログラミング教育を開発する真面目なITの方です。
たぶんこういうどぎついのが好きではない人もいると思うのですが、全然そんなことはない爽快な作品です。なにより背景の技術が技オタを超えている
(プレゼン動画が面白かったので配信34:45-を見てください!)
余談ですがソフデザ誌にも寄稿されているそうです。時代はAIシビックテックですなあ…!
https://twitter.com/gibasachan/status/1630549533171269633?s=46&t=jgQwk-8DSR4rWrfqK70Ylw
雑コラとか言ってすみません(褒め)
そんな話を彁は喰った。
続いての作品は「そんな話を彁は喰った。」
たぶん「彁」は「カ」と読むのかな…??
とか『機能美Pさんってあの機能美Pさん!!??』と思ってみてました。
ぜんぜんかわいい。というかむしろちっちゃいほう🐦気になる
プレゼン動画が本編なのか…?と思うぐらいのクオリティでしたが、こちらが本編です。前後編です。
後編もあるのですがネタバレになるので、まずは前編から見ましょう。
この作品紹介でも触れられていましたが、この作品は純度98%の人力による作品であり、Midjourney以降、ChatGPT以前のタイミング(2022年9月18日)にリリースされています。
ネタバレにならない程度に個人的に好きな瞬間をスクショで紹介します。
初上映が9月でWeb版が1月。これは辛い。
自分の書籍も1冊目が9月(Stable Diffusionのリリースから1か月)、2冊目が10月で、11~12月には、それはそれはもうたくさんの技術が秒進分歩で出まくっていて…。
というか98%ヒューマン作品でも、やっぱりChatGPTよりも先にChatGPTのような推論AIをデザインしているのすごい。
やはりただものではない機能美P。物理で会えて感激。
夢遊音速(ドリームマッハ)
https://www.pixiv.net/artworks/104970351
おそらくファイナリスト最年少、19歳の漫画作品です。
上記のPixivから読める縦読みマンガ作品です。
好きな個所を2つ紹介します。
作画工程はMidjourneyに加えて、かなりPhotoshop作業があるようでした。
なにより心揺さぶられるエピソードが
「(この作品を描く以前は)エンジニアリングを学んだり漫画を描いて講談社に持ち込んだりもしていたが名刺ももらえなかった」という話。
そのエピソード、すごくいいから、飽きるまで言い続けていけ…!
そんなわけでトークセッション
こちらについてはまた今度、まとめておきたいと思います。
台本なしでしたが、短い時間でいい話はできたかもしれない。
あくまでAI画像生成クリエイター側の代弁というポジションだったかもしれません。
あとスポンサーのサードウェーブさんや会場にいらっしゃったNVIDIAの方々、メディアの方々もありがとうございました。
AI画像生成時代のクリエイターを支える画材、展覧の場をこれからも支えていってほしい…!
そして表彰式。
結果としては、松尾Pの「Desperado」でした。
機能美Pが審査員特別賞。
予定にはない賞だったようです。審査委員会がいかに大変だったか想像します…!
これからの展開が気になるAIアートグランプリ。
会場の様子は他のメディアも扱っておられました。
大河ドラマのすぐあとのNHKのニュースでも扱われていました!
これからも日本の生成AIの展開を象徴づける会に参加できて最高でした。
Samに言われるまでもなく…
関係者の皆様、お疲れ様でした!