幸魂奇魂2012年初演鑑賞のあれこれ
最近、ときどき口ずさむ「幸魂奇魂守給幸給=さきみたまくしみたままもりたまいさきはえたまえ」
春と冬の鬩ぎ合いの2020昨今。変わらぬ空の青をみると、いま世界の共通の困り事が映画世界ではないかと思いこみたくなる。優れたVR技術の中で地球が試され揺さぶられているだけかも、と相変わらずの現実逃避妄想に余念がない。エンドロールまでが遠いのか、起承転結のいまは「起」にすぎないのか。
2011年に「古事記」を現代語訳にした松本隆さん、作曲藤舎貴生さんの「幸魂奇魂」を2012年南座「日本の祈り」というイベントにて初演。その数日のわたしのメモ。間違ったことも書いているかも。そのまま。
【2012/02/18
日本の祈り 歌舞音曲で綴る日本の心の原風景 京都南座】
開演前にブランデー5滴入りの紅茶を飲み(←フランソア喫茶室)
それも密かに五臓六腑に滲みたのかも。
むっちゃおもしろい公演だった。
ほんの一時期、文楽の資料作りのお手伝いをしていたとき
お隣が義太夫のお稽古部屋だった。
太棹や鼓の音が聞こえ、舞台の音もそのまま聞いて
ほんとにクラクラしていた。滾る血。
そんなちょっとした経験もあって、今日の雅楽・和楽・邦楽
言葉の集結はオレ得。結果的に。
ほんと三味線と鼓はぞわぞわするのだ。あのころも今も。
開演前は「うーん わたしは怪しい客なんじゃなかろうか」
「古事記もチャレンジしたけど結局よくわからないしー」
だった。キョトンとして終わるんじゃないか、と思ってた。
キョトンどころじゃない。
わたしの目当て 松本隆さんの作詞の「幸魂奇魂」は第三部。
司会の宝田明さんの愉快な進行もあり
思ってもみない親しみやすい空間だった。
各舞踏もむっちゃおもしろかった。
さきみたまくしみたま=幸魂奇魂
さっそくATOKの辞書登録したぜ。
セリから袴姿の若村麻由美さんがでてきてその世界へ。
その後、なんかもう「山葡萄の房になる」あたりで
客席のわたしはハイになり(はじまってほんの数分後)
もうほっぺが上がって上がってしかたがない。しびれた。
指で太股にyabai yabaiと打っていた。
他人からみればリズムとっていたように見えるんだろうが。
yabaiのだ。
なぜか。それは邦楽器って内臓の外側がぴくぴくする。
しかも、わたしが好きなことばのならびがそこにくっつく。
それはしあわせ。
もうにっこにこ。うれしくて。
笛の空気の斬り具合。鼓の高揚。三味線のグルーブ。
太鼓は、満月にみえたり、太陽にみえたり、地球そのものだったり。
ほんと面白い舞台だった。
初演を体験できたこれまたしあわせ。
「幸魂奇魂」を見つつ、これはあと100年先もなにかにつけて
上演されるんだろうとか考えたら もっとニマニマしてしまった。
わたしの両隣のご婦人方、紳士方も、終演後熱狂。
地下鉄通路でも「よかったよねー」と聞こえた。
パンフレット、横書きの詩。
すんなりとあの世界を味わうことができる。
音で聞いたから。
そしてなんといってもわかりやすい。
文字の美しい整列。
古事記ってば、スペクタクル。
上演されたのは
国造り
八俣の大蛇
沼河比売
幸魂奇魂
先行でCDも会場販売します との紹介されていたように思うが
販売場所がわからず、今日は買えなかった。今日は・・・
今日は・・・明日も、あれを見るしあわせ。
「沼河比売」ロマンティックしすぎ!!
そして寒い河原町をあとにし
帰宅したら、クビからぶらさげていたビーズのネックレスが千切れた。
ちょっと替え歌にして、ちりぢりになった青いビーズを拾ってみた。
光の糸か。
なんという出来事。
【2012/02/19 京都南座2日目】
「日本の祈り」
昼の部へ行った。今日は遠景を楽しむ3階。
八俣の大蛇、の姿を著すフレーズは昨日1度聞いただけなのに
なんか口ずさんでしまう、そういう歌だ。すごい。
これまた全体や床に当たる照明 奥行きがみえて
昨日とはまた違う空間。いいわ南座。
そしていまもおうちで聞いているのは「幸魂奇魂」
2/18~19の京都南座
「日本の祈り」第三部 幸魂奇魂から感じたことを
何度かに分けて書くしかない。
【2012/02/21記 言霊 幸魂奇魂をみて1】
まだ興奮さめず、またしても日常に戻れず。
総勢50名の邦楽演者と朗読の俳優さんたち。
キラキラの紙吹雪が実際に舞ってはいたけれど
客席のこちらの胸までなにか新しい花びらが舞ってた。
それがまだこびりついている。
ことだま。
松本隆さん作の口語体のことばたち。
邦楽器の激しさはやはり日本人の感情に合う。
淡々とした朗読の底を流れる音楽で
奥行きの景色。情念。掴まれる胃袋の下あたり。
さすられる心臓の横あたり。
ほんとうに面白い。
なんだろうな、この「おもしろい」という言葉。
その言葉に逃げている自分がいやでもあるんだけど。
感慨深い。でもいいけど、邦楽器や古事記にくわしくはないし。
ここはやはり「いとをかし」。
若村さん平さんは微動だにせず、の正座姿で
カラダで演じているわけでもないのに
あの時間
その世界のひとが荒々しく感情のままに動く幻影が見える。
謡さんの声、松本さんが置いた言葉が
まっすぐにこちらに刺さることがうれしい。
絵でみるより自由。
そのよろこびで、わたしは終始頬があがりっぱなしだったが
まわりのご婦人たち紳士は鼻水をすすっていらっしゃった。
その中で見ることができたしあわせ。
初日は、幕が下りる途中からスタンディングオベーション数名。
カーテンコールがあれば(邦楽にはないか)
絶対に立ち上がっていた。
そのくらい高揚して、その余韻をもてあましつつ
(帰りの鴨川)凍る橋を渡ることになった。
ことだまというものがじわじわと。
月曜の日常を浸食されてしまった。
さきみたまくしみたままもりたまい さきはえたまえ
松本さんならでは、のフレーズが美しい。
ほんとに美しい。風をみる。
【2012/2/24記京都南座 「日本の祈り」第三部幸魂奇魂~古事記より~
の舞台のひとたち】
朗読 平 岳大/若村麻由美
演奏 囃子6名
太鼓3名 林英哲さんほか
長唄の唄いてさん 7名
長唄三味線方6名
謡3名
尺八
箏3名
笙
胡弓
笛
声楽アンサンブル8名
普段はきっと集まることのない名手が
一同に会しているのだとおもいます。
藤舎さん親子の鼓と笛。
鼓動だったり、空気を斬り込む音色。
そして
謡の方がとっても素敵であった。
謡 唄 朗読 それぞれの口語体。
松本さんの色。南座の空間。
ほんと感動した。
ぜひにラジオ放送で「幸魂奇魂」ライブを流していただきたい。
(この年の3/10と3/11に全国で放送された)
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