MEs User Interview #1 - MEsの空間思考を頼りに、建築設備の新たな価値を
[インタビュアー]
簡単に自己紹介をお願いいたします。
[宮田さん]
はじめまして、宮田龍弥といいます。東大大学院の建築学専攻修士1年生です。現在、研究室で建築設備、特に空調のスマート運用に関する研究を行っています。設備のデータを取得し、解析して運用改善、省エネ、最適制御、不具合診断など新しい技術の開発に取り組んでいます。
学外では、ASIBAの理事として活動しています。ASIBAは建築学生のアイディアを社会に実装するための団体で、プロジェクトやワークショップを企画運営しています。また、僕自身も建築設備分野で新しいサービスやビジネスを実装できないかと考え、Withvacという学生コミュニティを運営しています。
[インタビュアー]
建築という分野を選ばれた背景を教えていただけますか。
[宮田さん]
建築学会に入った理由は、家族に建築関係者が多かったためです。、祖父は海外の大学で建築を学んだ後に日本で設計事務所を経営し、父親もよく事務所の話をしてくれていました。小さい頃から建築事務所に出入りする機会が多く、自然と建築に興味を持ちました。そういった経験も影響し、最終的に自らも建築の道に進むことになりました。
[インタビュアー]
宮田さんとMEsの出会いは、ASIBAさんで開催させていただいたワークショップですよね。そこから深く使ってくださっている理由などあれば、教えてください。
[宮田さん]
ASIBAのワークショップで一度MEsを使った際は、ゲーム感覚で楽しんでいました。3Dモデルを空間上にビジュアライセーションし、自分のアバターが動き回り、写真やテキストを共有して楽しむという、エンターテインメント要素が強い体験だなというのが第一印象です。
しばらく使う中で、かねてより自身が重要だと感じていた「空間的思考」を行う場所としてもMEsは役立つ感覚があり、ワークショップ以降も、研究活動関連の情報整理に使い始めました。実は、MEsを使う前、ほとんどの情報類をスプレッドシートを使って管理していました。メモだけでなく、スケジュール管理までもそこで行なっていたので、周りからも「流石に他のツール使ったら?」と言われていました。(笑)
そのような中、MEsを使い始めて、一見すると関連性の薄いこの要素とあの要素を掛け合わせたらいいものができるんじゃないかなとか、たくさんのデータをビジュライセーションする中で物事の全体の構想が見えて、その中でまだ分かっていないところにフューチャーして新しいものを生み出していくといった、アイディア思考みたいなことをするのに、適していると感じました。今後の進化に期待しつつ、現在もMEsを使い続けています。
[インタビュアー]
宮田さんが具体的にMEsをどのように使っているかについて、さらに教えていただけますか。
[宮田さん]
僕は今、いろんな使い方を試している最中です。
例えば研究を進める際、実験データや既往研究を整理して一つの知見にまとめることも重要ですが、もっと前段階の「新規性のあるテーマは何か」「何と何を結び付けると面白そうか」を考えるときにこそMEsが役立っていると感じています。新しいプロジェクトや取り組みを進める上で、自分がどの位置にいるのか、業界全体としてどこが進んでいてどこがまだ手つかずであるかを俯瞰し、構造化して捉えることが重要なので、このフェーズをサポートしてくれるツールの存在は心強いです。
例えば、設備系の最適制御といった解析を行う際、個々のデータや他の論文からの情報を互いの関連性に沿ってマッピングすることで、断片的な知識の局所的な理解に留まらず、全体を俯瞰することができます。
具体的には、グラフやダイアグラムの写真をインポートし、そこにキャプションや関連リンクなどの追加情報を記載して空間上に配置していくことで、視覚的に理解しやすくしています。事例が一定集まっている研究は手前に配置し、既存の事例が少ない研究は遠くに置くなど、空間的に整理しています。これにより、どこがまだ研究されていないのか、どこに新たな関連性があるのかを一目で把握でき、直感的に理解しやすくなります。
[インタビュアー]
とても興味深いです。そういった使い方に至った背景をもっと聞かせてください。
[宮田さん]
結構僕の特殊なケースなのかもしれないですけど、そういう何か自分が知り得た知見を構造化したいというモチベーションが元来とても高くて。
例えば、自分の実家の近くや大学の近くはよく知っていて、道に迷うことはありません。しかし、見知らぬ場所に行くと地図がないと現在地もわからず、目的地にもたどり着けません。これが知識が構造化されているかどうかの違いです。
僕のように、ここまで言語化しているケースは特殊かもしれませんが、知的活動をする上で多くの人にとって、実は案外普遍的なニーズではないかと感じています。
[インタビュアー]
他のデジタルツールと比較したとき、MEsのユニークポイントはどのあたりでしょうか。
[宮田さん]
オープンワールドの世界、つまり3D上でアバターを自分で動かす体験は、実はあまり経験がありませんでした。最近のゲームではよくありますが、実際に触れたことがなかったんです。やってみてまず驚いたのは、操作が非常に直感的で、まるで自分が身体性を以てその世界を実際に歩いているかのように感じられることです。他のツールとは全く違う感覚でした。
自分が歩き回りながら、散りばめた情報や素材を直接操作できるという身体性が非常に強く、これを一度体験すると、今まで使っていたツールが非常に使いづらく感じるようになりました。従来のツールは操作が人工的で、自由度が足りないと感じるようになったんです。
MEsを初めて使ったとき、その空間の中に本当に自分が存在しているかのような没入感が得られました。今後の開発でさらに没入感や動きの滑らかさが進化すると考えると、ますます使い続けたいと感じました。
[インタビュアー]
どんな人にMEsを使ってほしい、勧めたいですか?
[宮田さん]
MEsを薦めたい対象でいうと、極論全員なんですけど(笑)、中でも真っ先に使うべき人っていうのは多分、今まだ存在しない新しいもの・ことを生み出そうとしてる人なのかなと。例えば研究で新しい技術を誰もやってないようなことを生み出そうとしている人だったり、もしくはそのクリエイターで新しい作品を作っていかなきゃいけない人だったりとか。何かこう、特定された課題があってそれを着々と解決していく解決型の仕事をしている方じゃなくて、そもそも問いかけ自体を自分が作っていかないといけなくて、まだ定量化されてないようなものを新しく世の中に生み出していく課題発見型でデザイン思考みたいなのを持っている人に一番使ってもらいたいと感じます。おそらく、決められたタスクを粛々とこなす役回りは、AIによってどんどん淘汰されていくと思うので、むしろ人間だからこそできるような新しいクリエイションをしていくっていう人たちがこれからどんどん使っていくものなのかなと思います。一番身近な存在だと、同じ研究室の同僚や、もしくは一緒にプロジェクトやっている人たちとかにもぜひ使ってもらいたい。必ずしもデザイナーとかじゃなくても、僕みたいにアカデミアで使う場面もあるし、もしくはその企業のそういうアイディア出しのブレストの段階で使う方法もあるし、使用の幅が広いので、今後も広がっていくと考えています。
[インタビュアー]
今後、どのようなコラボレーション/ PJに取り組んでいきたいですか?
[宮田さん]
今後、建築設備というテーマを、もっとワクワクするような、楽しいものにできないかと思っています。建築設備って聞いても、多くの人はあまりイメージ湧かないですよね。天井に何かついてるな、くらいで、それに対してワクワクすることはほぼない。現状、僕は省エネや快適性の向上を研究しているけど、最後ソリューションに落とし込むときは、ユーザーが楽しく感じないと意味がないと感じています。
これからは、省エネだけでなく、人間と設備の関わりやユーザー体験を豊かにすることにフォーカスしたいです。例えば、エアコンのリモコンをゲーム感覚で操作できるようにしたり、環境負荷が直感的に理解できるUIにしたりすることで、人々の環境意識も高まるかもしれません。
設備と人間の価値観がどう関わるかを探求するのは面白いと思います。まだ誰もやっていないことなので、これができたら業界のあり方も変わるかもしれないと考えています。現状の設備が受動的すぎるので、もっと能動的な関わりになる設計をしたいです。その具体的な形として、どう楽しくするかはまだ解決されていない問題ですが、それができれば設備を楽しむ人が増え、ビジネスのあり方も変わるかもしれません。
[インタビュアー]
本日はお時間いただきまして、ありがとうございました!