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MEs User Interview #2 - 頭の中を可視化し、境界の間に存在する価値を育てる

MEsユーザの方に、多角的な観点で色々お話を伺う本企画。
Vol.2となる今回は、建築・イラストレーション・福祉といった様々な分野でご活躍される北林さんにお話を伺いました🎤

[インタビュアー]
簡単に自己紹介をお願いいたします。

[北林さん]
北林栞と申します。普段は大学院で建築の研究をしていて、並行してイラストレーターの仕事もしています。自分の興味対象として、「何かと何かの境界の部分のデザイン」に興味があります。例えば、絵の具の境界のにじみ方。加えて、福祉施設の利用者とその周りに住んでいる人たちの間にある障壁をどうやったら解消できるかを考えながら、ツールを新しく開発したりしています。

[インタビュアー]
イラストレーション・福祉という、一見異なる2分野との出会いについて教えていただけますか。

[北林さん]
イラストとの出会いは、小さな頃から物心つく前から既に何かを描いているという感じで、その頃からずっと描いてきました。大学2年生のときにコロナ禍になり、まとまった時間ができたので、その期間に一度真剣に描いてみようと思い、時間を大きく取ってSNSに上げ始めました。すると、少しずつ仕事にもなっていきました。イラストレーションに関しては、女の子を題材に扱うことが多いのですが、言語化しにくい感情を表現することを考えながら、構図や表情、シチュエーションに反映させています。
福祉に関しては、家族に障がいを持つ方がいて、かねてより身近なテーマでした。大学に入ってから福祉の分野を見直してみたときに、意外と課題が多く存在することに気づき、自分ができそうなことがあるかもしれないと興味を持ち始めました。

[インタビュアー]
ありがとうございます。建築、イラストレーション、福祉という一見珍しい組み合わせが、北林さんにとっては自然な出会いだったことがよくわかりました。

[インタビュアー]
北林さんとMEsの出会いは、ASIBAさんで開催させていただいたワークショップですよね。そこから深く使ってくださっている理由などあれば、教えてください。

[北林さん]
まずは初見で、MEsの世界観やゲームのような雰囲気、中にいるアバターがかわいいとか、そういった1つ1つの特徴が自分のツボに刺さりました。そこで興味を持ち、実際にa春さんがASIBAでワークショップをしに来てくれたときに、実際に触ってみて、一見ゲームなのかなと思いつつも、a春さんが「MEsは思考をするためのツールです」と仰られていて。他のコラボレーションツールであるMiro等と違って、”ゲームみたいな操作感で自分の思考を深める”ということが新しい感覚でした。

実際に触ってみると、3Dデジタルなので、実質、境界がない世界という印象でした。iPadや紙とかだと、できることの範囲の境界が存在するじゃないですか。文字だったら書ける範囲が決まっているだとか、画像を貼り付ける範囲なんかここまで大きくできないとか、何かと制約がいろいろあると思うんですけど。
MEsのワールドの中で、自由自在に自分の考えたことを画像、テキスト、映像の形式で空間に集約して、そのチャンク自体を移動させてまとめられたり、編集できたりすることが、自分の考え方、思考をするこのプロセスと何か大きくマッチして、そこからどんどんMEsにハマっていきました。

[インタビュアー]
元々持っていたアイディエーション/ コラボレーションにおいて感じていたlimitationやモヤモヤはあリましたか?

[北林さん]
私は結構平面上にペンで思いついたことを書き殴ることがすごく多いんですよ。その考えているときって、普通にもう書きたい場所にとりあえず書いて書いて書いて、という感じで、紙やペンで書くことが多いんです。何枚もの紙の裏に書いたり表に書いたりして、とにかくいろんなところに書き留めることが多いんです。それゆえ、あのアイデアはどこに行ったっけ、とか、この考え方とこの考え方は近いんだけど、メモが裏表に書いてあって見つからないとか、1回考えたアイデアをまとめたり、繋げて考えたいときに紙とペンだとそれがやりにくいなって思っていたんですけど、MEsだとそれが3Dだから、紙のレイアウトというよりは、その場所にあったな、みたいな感じで、情報の所在を、”空間内の場所”として認識できるのがすごくやりやすいんです。

紙にアイディアを出しているときの写真


Enoniwa制作時のワールド in MEs

例えば、あのアイデアはあの辺の、あの場所にあったなと思えば、アバターを動かして見に行けるのがすごく良くて、それを移動させて、この考えは多分こっちの考えに近いから近くにまとめて、また次の考えを組み立てていきたい、というときに、そのエリアごと移動させて新しい島を作って、これと近い考え方から次のステップに進むにはこういうアイデアがあるな、という感じで別の島を作り出して、アイデアの断片的なものを編集しながら”場所”として作っていけるんです。
自分が建築を勉強しているからかもしれないんですけど、すごく身体感覚として、紙とペンだけではできなかったことができるようになったと感じます。

とてもふんわりしたことで言うと、自分が考えていることが画像とかビジュアルで構成されて、世界が構成されていくじゃないですか。私は自分がやりたいことを自覚するのが遅いタイプなので、「つまり何がやりたいんだっけ」ということを言葉にして人に伝えるのが難しいタイプなのですが、MEsの中で画像やテキストなどの断片を空間内に散りばめていくと、なんとなく自分が興味ある方向ややりたい方向性が見えてくるんです。その方向性がMEsを使うことで自覚しやすくなり、人に見せて「こういうことを考えてるんだよね」とか、「こういうものがいいと思ってるんだ」と伝えやすくなりました。アイデアの共有や方向性の共有がすごくしやすくなったと感じます。

1人で使うときだけじゃなくて、ASIBAのメンバー数人と使った時は、スクリーンにMEsを映してみんなで見合ったりして、「こういうのがいいんだよね」とか、自分で考えたアイデアを「こういうこと考えてるんだけど、みんなどう思う?」と共有しながらやっていました。みんなが「こういうのがいいんじゃない?」という新しいアイデアをもらって、それをすぐインポートして新しい世界をみんなで作っていく、そんな新しいグループワークができたなと思います。それがMEsを使い始めて変わったところだと思います。

[インタビュアー]
ありがとうございます。可視化したアイデアのプロセスとか、その作品がかっちりと固まる前の段階のものをビジュアルベースでシェアするのはすごく良いなと思っています。

 [北林さん]
ビジョンや考えって、その思考プロセスを見ると、コンテクストが見えてくるじゃないですか。だから、私としてはイメージの共有っていう意味ではすごく楽でした。何かについて1から全部言葉で説明するんじゃなくて、「こういうことを考えてるんだよね」と見せるだけで、「なるほど」と理解してもらえると、MEsを使っていてとてもスムーズだなと思いました。

[インタビュアー]
ありがとうございます。そういう考えをビジュアル化して共有するっていうのは、これまでの別のツールでやられてましたか?MEsと全く一緒じゃなくても、近いことをやっていましたか?

 [北林さん]
アプリだと、Pinterestを結構活用していましたね。例えば、建築コンペティショングループでやるときとか、「こういう空間がいいよね」とか、例えばそのプレゼンボードを作るときに、「こういうタッチのイラストがいい」とか「こういうアングルがいい」といったイメージを共有するときには、新しくボードを作って、そこにイメージに近い画像をみんなで入れていって、共有することをやっていました。
3Dのデータでリファレンスしたいときは、スクリーンショットを2DにしてPinterestに入れたり、イメージするものを画像で探してPinterestに入れたりしていました。実際に3Dデータを3Dで確認した際は、Googleドライブとかで3Dモデルを共有して、それぞれみんなダウンロードして、自分のソフトの中で開いてというやり方をしていました。

[インタビュアー]
どんな人にMEsを使ってほしい、勧めたいですか?

[北林さん]
個人的には建築教育に導入してほしいですね。先程も話に挙がった通り、建築のコンペをやるときにモデルをいちいちデータで共有して、それぞれダウンロードするのがすごく手間なんです。
プレゼンボードも、途中まで誰かが作ったものを一度ドライブに上げて「ここから私が作るね」と言ってまたダウンロードしたら、ちょっと画像が埋め込まれていないとか、すごく面倒く臭いです。そういうものがニーズみたいに、一気に全部3Dモデルもプレゼンボードも同じワールド内に共有されて、その画像がそこにあるとか、プレゼンテーションもMEsの中で大まかに編集したりして、この場所にこういうパース(注:未完成な建物等の完成予想図)を持ってくるのはどうかな、といったやり取りを1箇所でリアルタイムに行いたいですね。例えばプレゼンテーションのときにパースを何枚か書くんですが、そのときにどういう角度がいいか決めるのもかなり手間で・・・。

1人が「こういう角度はどうかな」とか、「こういうアングルかな」といちいちスクリーンショットを取って、LINEとかで投げて、「もうちょっとそこの角度から右に寄せてくれないかな」とか、細かい指示をもらってもう1回スクショし直して共有することが面倒くさいと思っていました。

でも、そういう部分は結構MEsで全部解消できるんじゃないかなと思っています。だから、インポートした3Dモデルをみんなで画面共有しながら、リアルタイムで視点を動かして、「そこ、もうちょっと右を見て」などと言いながら進めることができると思います。MEsだと、3人称視点で見れるので、人込みでの視点で見れるところが見える。アバター複数人で距離感の把握できるかもしれない。ここの空間3Mだと近いなぁみたいことができるかも。空間の使われ方が想像しやすい。

MEsだと、3人称視点でオブジェクトを見れるので、多角的な視覚情報をもとに議論できるのがいいですね。
アバターというデジタル内での身体性を以て、距離感の把握できるのも、実際に建築や空間が使用されるイメージが湧きやすくていいなと。
例えば、「ここの空間、3mの空きしかないと少し窮屈かな」みたいなイメージすり合わせがしやすそうですね。

[インタビュアー]
今後、どのようなコラボレーション/ PJに取り組んでいきたいですか?

[北林さん]
ASIBA内で生まれたプロジェクトがあるんですけど、私は対話型お絵かきツールenoniwaを開発しています。


お絵かきを通じた対話によって、私たちと知的障がい者が友達のようになれるツールです。私たちには何か表現をすることに対して少し障壁があると思うんですけど、そこから解放されるといいますか、知的障がい者と筆を通した間接的な対話によって、私たちが少しでも表現の楽しさを知れるとか、見えない相手に思いを馳せるような非言語のコミュニケーションの感覚を得ることができるツールを開発しています。詳細はホームページなどを見ていただければと思います。
これからもこのツールの開発を頑張っていきたいと思っています。ぜひ覗いてみてください。

[インタビュアー]
本日はお時間いただきまして、ありがとうございました!