【90年代あれこれ⑪】我が世の春を謳歌するファミコンのフィーバーが誌面を牛耳らんとする中、長期連載も軒並み終了そして... 我が幼少期のバイブル「コミックボンボン」のいろいろとスゴイ...な掲載漫画5選(1986年分)
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(*゚ー゚*)
一昨日に四回目接種を受けましたが微熱が一日続いたぐらいで無事平成に戻った、O次郎です。
今回は、月一ぐらいで国会図書館に行って閲覧申請して懐かしみつつ読んでる、僕が幼少期に購読していた児童誌「コミックボンボン」についてのお話の続きです。
※前回分および前々回分はこちら。よろしければ併せてお読みください。
講談社発行の児童誌で1981年に創刊。人気低迷で2007年に廃刊になってしまいましたが、かつては(その後塵を拝しつつも)小学館の「コロコロコミック」のライバル誌でした。
私が小学校低学年の90年代前半に購読し始めたのですが、調べたところによるとちょうどそのあたりが雑誌売り上げの最盛期(1990年で63万部)だったようです。
90年ごろというとコロコロの専売特許的な玩具で大ヒットしたミニ四駆が若干落ち着きを見せ、同じく小学館専属の『ドラえもん』の人気も安定期に入ったかに見える頃で、それまでのコロコロ発のキラーコンテンツの勢いがひと段落着いた中で購読者の浮動票枠がボンボンに流れた、というのがリアルなところだったのかもしれません。
ちなみに90年代初頭というと当時の少年の体感としては若貴ブームに沸く大相撲と、Jリーグ開幕を受けてのサッカー人気が断トツだったと思います。
重ねての話なうえに贔屓目も有りますが、オモチャを売るための販促の意味合いが強いがゆえに本来のターゲットである児童層にとっても些か荒唐無稽が過ぎるコロコロの連載漫画に対し、ボンボンの連載漫画は同様に児童向けの外連味は有りつつもそうしたスポンサードの要求が希薄で、ゲーム原作作品などでもコミカライズの漫画家先生の独走による独自展開が一漫画作品としての面白さを押し上げたものも多く、特にターゲット層に合わせて描写の虚実の絶妙なバランス調整が要求されるスポーツ漫画はボンボン作品に優秀なものが多かったように思います。
思い出すに幼少期にプロレスには全くと言っていいほど触れる機会が無かったので今の今までプロレスにはめっぽう疎いのですが、こうした他のスポーツの興隆の影響で本物の試合はおろか雑誌や作品という形で触れる機会に乏しかったのがその由縁かもしれません。
そんなこんなで今回は1986年1号~12号(増刊号含む)をまたぞろ閲覧してきまして、今回も今回とてその中でなかなかトンデモな内容だった掲載漫画をご紹介してみたいと思います。
過去刊行中の36年間の一時期に読んでおられた方々はもちろん、ジャリ漫好きの方々、ヘンな漫画に興味のある方々、読んでいっていただければ之幸いです。
それでは・・・・・・・・・・・"ハンコ注射"!!
Ⅰ. 1986年刊行のコミックボンボン概況
ひとことで言うと兎にも角にもファミコンです。連載漫画にしろ、特集記事にしろ。
81年の刊行開始当初からボンボンのホビー関連のキラーコンテンツはガンプラであり、毎号の掲載順番も『プラモ狂四郎』がほぼ不動の一位でした。
それが86年ともなるとハード発売から丸3年も経って円熟期を迎えたファミコンが我が世の春を迎え、掲載誌の縛りが無かったこともあって、
の二作品がツートップとなり、その他に攻略漫画(『がんばれゴエモン!からくり道中』や『ドルアーガの塔』のストーリー紹介と攻略法を兼ねたコミカライズ)等が断続的に掲載されていて、一冊内の全掲載漫画11~12作品中の1/3ぐらいがファミコン関連、という状況です。
ちなみにこの86年には上記の『プラモ狂四郎』に加え、山口博史先生のポケバイ漫画『おれのサーキット』やのなかみのる先生のラジコン漫画『ラジコンキッド』といったそれまでのボンボンを支えた長期連載漫画が相次いで終了しており、一種のターニングポイントが覗えます。
※ちなみにその中では『ラジコンキッド』のみkindle本化されているようで、全巻がKindle Unlimitedの読み放題対象のようです。作品としての安定感のある面白さは勿論ですが、オモチャとしての対抗馬であるコロコロのミニ四駆との鬩ぎ合いの意味合いも強かったためか、漫画連載についてもラジコンの特集記事についても紙面上大切に扱われている感が有りました。
そんな誌面全体がファミコンにジャックされているかのような情勢下で今読んでも強烈な印象を残すトンデモ作もファミコン関連ばかりかというとそうでもなく、"流行りの玩具に頼り切らない、純粋に面白くそしてボンボンのカラーにあった漫画を生み出そう"という気概も確かに感じられる作品ばかりです。
それでは以下、自選5作品どうぞ!!
Ⅱ. いろいろとスゴイ...な掲載漫画5選(1986年掲載分)
その一、『闘魂野球軍』(作:しもさか保先生)
[掲載期間:86年2号・3号(短編作品)]
作品のキャッチコピーは"野球は格闘技じゃい!野球とプロレスが合体した激烈野球バトル!""キッタネエ野球をやる奴はオレの闘魂でぶっつぶす!"
プロレス好きなんだけど年齢やなんかの事情で野球やってる少年野球チームが、実力はプロ並みながら極めて素行の悪いライバルチームを相手にチームの存続と女性マネージャーを賭けて勝負するスポコンもの。
まずもって目につくのが相手側の常軌を逸した非道ぶりで、相手のエースで四番の"必殺ツバメ返し打法"というのがその実、殺人玉付きバッティングという球を打ちながらバットも放り投げて相手ピッチャーや保守にぶち当てて負傷させるというめちゃくちゃぶり・・・すぐに反則退場どころか反則負けでもおかしくないような外道技ですが第三者の審判が居ないのでそのまま試合続行。他にもタッチアウトに見せかけての殴りつけ、果てはヒロインの女性マネージャーをバックスクリーンに縛り付けての人質作戦など、児童誌かくあるべしという勧善懲悪の振り切りぶり!!
しかしながら対する主人公サイドも同等かそれ以上にどうかしており、バックドロップの体勢で投げる超スローボールや被打球の勢いをラリアットで止める命懸けの捕球、さらにはエルボー動作を応用してのバントなど、ゲーム進行上明らかに不利にしかなっていなのにまるで無理やりプロレス技を使わざるを得ない、喩えるなら『水曜日のダウンタウン』の「みんなの説」状態です。
当時といえば前年の阪神優勝によるフィーバーを受けてのいしわた周一 先生の『おまたせトラジャ一家』も連載されており、上述の柴山みのる先生の『やっぱ!アホーガンよ』も人気で長期連載の中、単発作品ゆえに安直な異種競技ミックス作品の企画が通ったゆえに誕生した異端作なのかもしれません。
その二、『オニマル先生』(作:暴竜 力〈ぼおりゅう♡りき〉先生)
[掲載期間:86年2号(読み切り作品)]
キャッチコピーは"超ド迫力バイオレント=ティーチャー"。
作者のデビュー作にして、同誌の第三回新人まんが大賞受賞作品。
プロレス大好き、というかプロレスラーが先生になったような小学校教諭オニマル先生が校内の暴力生徒(当時の学校暴力が背景にあるようで)を力づくで制圧する破天荒ギャグマンガ。
口答えする生徒を軒並み運動場にバックドロップで突き刺す"人間墓石パノラマ"、さらにはブッチャーがモチーフと思われるとても小学生とは思われない巨漢を苦戦の末にその四肢を分厚い体内にめり込ませてからの校内屋上からの急転直下パイルドライバー"肉だるま地獄落とし"等、画力の乏しさを補って余りある作者の初期衝動が炸裂したトンデモ投げっ放しジャーマン活劇。
物語のオチが、メチャクチャ剛毛な女性生徒会長が「オニマル先生はみんなを強くするために暴力をふるってたんだわ。だって男はタフでなけりゃ生きられないんだもの。先生は自分からにくまれ役になってたんだわ。」と彼にほれ込んで追いかけまわして彼が逃げ回る・・・・・・という今なら完全に倫理的にアウトな落とし方なのもなんともかんとも。
ちなみにぼおりゅう先生はその数号後の春増刊号で『とつぜんヒーロー』という登場人物から話の流れからほぼ同内容の作品を描かれていますが、そちらでは"巨大ニクブタスケバン"ことダンプまるごとを相手に決め技"超ドぶすニクブタローラー"でオニマルが勝利しています。
・・・・・・当時としてもモラル的に大丈夫だったの、コレ?(゜Д゜)
ちなみにぼおりゅう先生はその後、僕がボンボンを読んでいた90年代には既に連載陣にお名前が有りませんでしたが、週刊漫画ゴラク等で描かれていたようですね。
その三、『メンドウ小手丸』(作:堂上まさ志先生)
[掲載期間:86年春増刊号(読み切り作品)]
タイトルからは想像できませんが、一応はファミコン漫画です。
というのも、「ファミコン大好きな少年がある日、クラスメイトの剣道少年からファミコンを馬鹿にされたことで火が付き、ファミコン的知識を駆使して剣道で彼に勝利しようと対決する」という支離滅裂ここに極まれりな内容なのです。
どうやって勝負するかというと、レフェリーの少年があらかじめ特定の集団に対して因縁をつけておき、その襲ってきた連中をどちらが多く剣道で倒すことができるかのポイントで競おうというゲームであり、ステージが上がるごとに相手が手強く(というかヤバく)なっていきます。
具体的には、
ステージ1 近所のおやじ連中
ステージ2 暴走族のあんちゃんたち
ステージ3 強烈会から手猛者キャラ達
ステージ4 警官一味
ステージ5 ヤーさんキャラ達
ステージ6 大魔王
という具合です。近所の大人や動物に悪戯したい児童心理はよく分かるのですが、社会の表と裏の権力にゲーム感覚で盾突くあたり最高にトチ狂ってますね…。
ちなみにラスボスの"大魔王"とは知る人ぞ知る剣豪のことだったのですが、主人公がそれまでの(文字通りの)命懸けの激戦を経て彼に土を付けたことでライバルが彼の実力を認めて和解して一件落着、となっています。
もちろん、ファミコンの腕は一ミクロンも関係無いのです。(0゜・∀・)
その四、 『サイコ特捜隊』(作:上田久治先生)
[掲載期間:86年春増刊号(読み切り作品)]
僕の読んでいた90年代の増刊号では季節を問わずホラー短編が定番だったように記憶しておりますが、この頃から既に増刊号に恐怖テイストのものを織り込むのがお決まりになってきたようで、86年春増刊号のホラー枠作品がこちらです。
話の流れとしては、学校で陰湿ないじめを受けている少年が堪りかねて呪いの儀式を行い、悪霊に身体を貸して恨みを晴らす契約をすることで仇敵を一人また一人と血祭りに上げていくのだがそこに立ちはだかるのが我らがサイコ特捜隊!!・・・というものです。
本作で特に印象的だったのが序盤のいじめのシーンの悲痛さで、対象の少年が上級生にボコられてカツアゲされるというテンプレといえばテンプレなのですが、得も言われぬ悲壮感で恐怖漫画家お抱えの雑誌でもないにもかかわらずなかなかの胸クソな心抉り具合です。
調べてみるとそれもそのはずというか、作者の上田先生はかの恐怖漫画の大家つのだじろう先生のアシスタント出身だったようで。
上田先生は他では同じボンボンにて中国拳法を題材とした熱い筆致と濃い仇敵たちの存在がついつい胸を熱くさせてくれる正統派のバトル漫画『熱風の拳』を書かれており、本作を書かれた時点でも連載中ですが、この『サイコ特捜隊』のラストでもアッサリ少年を見限ったうえで最終的にネズミに憑りついた悪霊と肉弾戦の死闘を見せつけてくれます。
物語の頭と終わりにノストラダムスの大予言を絡めて来てる強引さは後の『MMR』っぽさも感じさせました。
その五、 『魔ジャリ』(作:日野日出志先生)
[掲載期間:86年冬増刊号(読み切り作品)]
※検索してみたらこの短編集の中に件の『魔ジャリ』も収録されてるようです。
そしてこの年の冬に出た増刊号ではこれまたホラー漫画の巨匠の日野日出志先生直々のご当番!!
ごくごく平凡な家庭のちょっと恰幅の良い少年がある日の晩ごはんでいつも以上の健啖ぶりを示し、炊飯器の残ったご飯も完食。訝る両親の心配も他所に深夜に起き出してきて憑りつかれたように冷蔵庫から生肉を直接食らうまたものテンプレ展開。
そこのシーンのヌメッとした描感も然ることながら、最高に厭な展開がその数日後に彼の弟が日中に彼が居間の水槽内の金魚を貪り食っているのを目撃するシーン!これも定番といえば定番ですが、日野先生のタッチでどこか倒錯的な雰囲気すら醸し出す執拗さです。もし幼少期に読んでいたらページどころか作品掲載ページまるごとハサミで切断していたかもしれません…。
少年に憑りついていたのは餓鬼であり、そうした妖怪が世に蔓延る、封印から解き放つ原因を作ってしまったのが人外の魔ジャリ。魔ジャリは瞬く間に餓鬼を封じるものの、過去に自らが犯した悪戯の所為で何千年も全国を妖怪封印の旅で放浪しているのでした。
少年のままの姿で、会うことの叶わない母と父への思慕の情を募らせつつまた彼の地へ去っていく姿の哀愁も伴い、怖さと寂しさが同居する読後の混然一体の感情はなんともかんとも、という感じです。
Ⅲ. おしまいに
というわけで今回は我が少年期のバイブル『コミックボンボン』の1986年1号~12号(増刊号含む)を閲覧してきてのその中でなかなかトンデモな内容だった掲載漫画のご紹介でした。
ちなみにファミコン関係のトンデモ作品では該当の86年にこんな作品が掲載されてます。
※なんとまぁボンボン作品では珍しくkindle化されてる!!
作者は90年代読者にはゲーム『餓狼伝説』シリーズのコミカライズでお馴染みの細井雄二先生。『餓狼伝説』シリーズも電子書籍化して欲しいがそっちは未だ無し。(´・ω・`)
最初の読みきりの時こそ"殺人事件のダイイングメッセージがファミコンカセットに組み込まれてる"みたいな無理やり感満載で楽しいのですが、すぐに限界が来たのかその後の連載版では『連続爆弾魔事件』『連続飼い犬殺人事件』といった具合で普通のミステリーものに移行するのですがそちらはそちらでちゃんとしたミステリー作品として楽しめました。
『連続飼い犬~』はそのラストがどうしようもなく切なく、その後の『雪山山荘連続殺人事件(正式タイトル忘れた…)』なんかは後のサウンドノベルの金字塔『かまいたちの夜』が参考にしたんじゃないかと思うほど凝った展開とトリックが見られます。
さらに漫画連載以外の特集記事では「戸隠流初見良昭先生の少年忍者道場」なるコラムが連載されていました。内容としてはいわゆる往年のジュニアチャンピオンコースのような入門書テイストでそれほど奇抜ではなかったんですが、
てっきり当時のちびっ子にはジライヤで知名度を得た方かと思っておりましたが、ジライヤ放映以前の雑誌記事ということで、当時の初見先生の世評が気になるところでした。
ともあれかなり長くなっちゃったので今回はこのへんにて。
また87年以降のボンボン読んだら続編記事書きマス。同時期でもそれ以外の時期でも思い出のおススメの掲載作品ございましたらコメントいただければ恐悦至極にございます。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。